春の鐘 (上) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1983年1月1日発売)
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本 ・本 (306ページ) / ISBN・EAN: 9784101095158

感想・レビュー・書評

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  • やはり、立原正秋の文章は美しい。
    そこで紹介される陶器、奈良の街並みは
    静かで、ゆったりとして艶があり
    なんとも言えぬ美しさが胸に広がる。

    素朴にして美しい多恵が、少しずつ
    女性らしい艶を帯びて変わっていく。
    大切に眺め、磨かれる陶器のように。

    けれど、恋路は二人だけのものではない。
    大人なら、尚更のこと。
    たくさんの問題を抱えながら、ハラハラと
    下巻へ。

  • お借りした本。初めて読む作家。
    予告を読むとドロドロした話だが(実際ドロドロしているけれど)、案外面白い。
    鳴海さんと多恵ちゃんの感じがよくて、素敵だった。

  • なんというか、贅沢な本だった。描写されるもの一つひとつが美しさを宿すものばかりで生活していると見える醜いものは出てこないし、登場人物たちの抱える苦悩も恋愛にまつわるもので、他に悩みや不安がない人たちだからこそここまで囚われるのかなと思う。この本が流行った頃は景気が良かったんだろうと感じた一冊。

  • 1983年(単行本1978年)刊行。

     私が大学生の時、一時、立原作品に嵌り、色々読破した。
     本書もこの一つだが、どちらかといえば身近な奈良を舞台にしていたこともあり、親近感を持って読むことができた。情景描写は美しいし、なによりヒロインは楚々とした着物の似合う元人妻女性。
     古風な男好みの造形であるが、やっぱりきれいだな、と感じる。

  • 大学教授の職をなげうって、奈良にある佐保美術館の館長に就任した鳴海六平太が主人公。

    彼は、東京に残してきた妻の範子が、「セックスカウンセラー」の看板を掲げる医者と不倫していることを知ります。しかし彼は、子どもたちのことを考えて、仮面夫婦のまま、一人奈良での生活を続けます。そんなある日、彼は昔から付き合いのある陶工の娘の石本多恵と再会します。彼女は、酒屋の天野久一のもとに嫁いだものの、子どもに恵まれず離婚して、実家へ帰っていたのでした。鳴海はそんな多恵を、自分が館長を務める美術館で働かせることにします。

    鳴海と同じマンションに引っ越してきた多恵は、鳴海に奈良の名所旧跡を案内してもらううち、彼に言いがたい寂しさを感じてしだいに惹かれていき、やがて二人は男女の仲となります。しかし、一度は多恵を追い出した天野久一は、彼女と別れたことに未練があったのか、多恵の両親に復縁を願い出、さらには多恵のいる奈良まで押しかけてくることになります。

    一方、鳴海の妻の範子は、医者の勝森直樹や、妻と死に別れたという村田富雄という男と逢瀬を重ねますが、そんな関係が鳴海のみならず両親にも知られるところとなります。そうしたわずらわしさのためか、しだいに彼女の心に寒風が吹き込んでくるようになります。

    よくある不倫の物語と言えそうですが、奈良の名刹巡りなどの比較的詳しいエピソードが織り込まれていて、楽しんで読むことができました。

  • (上下巻を通じての感想です)
    古い日本のものが現代に息づいている、立原正秋ワールドを楽しめました。除夜の鐘を聴くシーンと、それに関連する和歌が良かったです。

  • さて今の若い人が立原 正秋さんをご存知かどうか。

    恋愛小説の名手、いまの渡辺淳一さんに似ています。

    立原正秋さんの著作のなかでわたしの一番のお気に入りです。主人公を奈良の美術館長、ヒロインを陶芸家の娘という設定で、陶芸美術の薀蓄が語られるという展開。とくに旧安宅コレクション(現東洋陶磁美術館)の名品への傾倒ぶりがよくわかります。国宝飛青磁 花生にふれるクダリに著者の趣味の良さがよく出ています。

  • 奈良などを舞台とした作品です。

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