- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101095158
感想・レビュー・書評
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やはり、立原正秋の文章は美しい。
そこで紹介される陶器、奈良の街並みは
静かで、ゆったりとして艶があり
なんとも言えぬ美しさが胸に広がる。
素朴にして美しい多恵が、少しずつ
女性らしい艶を帯びて変わっていく。
大切に眺め、磨かれる陶器のように。
けれど、恋路は二人だけのものではない。
大人なら、尚更のこと。
たくさんの問題を抱えながら、ハラハラと
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お借りした本。初めて読む作家。
予告を読むとドロドロした話だが(実際ドロドロしているけれど)、案外面白い。
鳴海さんと多恵ちゃんの感じがよくて、素敵だった。 -
大学教授の職をなげうって、奈良にある佐保美術館の館長に就任した鳴海六平太が主人公。
彼は、東京に残してきた妻の範子が、「セックスカウンセラー」の看板を掲げる医者と不倫していることを知ります。しかし彼は、子どもたちのことを考えて、仮面夫婦のまま、一人奈良での生活を続けます。そんなある日、彼は昔から付き合いのある陶工の娘の石本多恵と再会します。彼女は、酒屋の天野久一のもとに嫁いだものの、子どもに恵まれず離婚して、実家へ帰っていたのでした。鳴海はそんな多恵を、自分が館長を務める美術館で働かせることにします。
鳴海と同じマンションに引っ越してきた多恵は、鳴海に奈良の名所旧跡を案内してもらううち、彼に言いがたい寂しさを感じてしだいに惹かれていき、やがて二人は男女の仲となります。しかし、一度は多恵を追い出した天野久一は、彼女と別れたことに未練があったのか、多恵の両親に復縁を願い出、さらには多恵のいる奈良まで押しかけてくることになります。
一方、鳴海の妻の範子は、医者の勝森直樹や、妻と死に別れたという村田富雄という男と逢瀬を重ねますが、そんな関係が鳴海のみならず両親にも知られるところとなります。そうしたわずらわしさのためか、しだいに彼女の心に寒風が吹き込んでくるようになります。
よくある不倫の物語と言えそうですが、奈良の名刹巡りなどの比較的詳しいエピソードが織り込まれていて、楽しんで読むことができました。 -
(上下巻を通じての感想です)
古い日本のものが現代に息づいている、立原正秋ワールドを楽しめました。除夜の鐘を聴くシーンと、それに関連する和歌が良かったです。 -
さて今の若い人が立原 正秋さんをご存知かどうか。
恋愛小説の名手、いまの渡辺淳一さんに似ています。
立原正秋さんの著作のなかでわたしの一番のお気に入りです。主人公を奈良の美術館長、ヒロインを陶芸家の娘という設定で、陶芸美術の薀蓄が語られるという展開。とくに旧安宅コレクション(現東洋陶磁美術館)の名品への傾倒ぶりがよくわかります。国宝飛青磁 花生にふれるクダリに著者の趣味の良さがよく出ています。 -
奈良などを舞台とした作品です。