- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101096018
感想・レビュー・書評
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はじめて梶井基次郎さん
檸檬はよかった
他はあまり共感できないところが多かった詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
梶井基次郎の短編集。
著者の肺病や実生活によるものだろうか、陰鬱で退廃的な話が多かった。夜や闇に対する恐れ、肉体と影の分離、などいくつかのモチーフは複数の話で登場しており、著者の抱える悩みが伝わってくる。
表題作の檸檬は、主人公の行動だけ改めて振り返ると意味がわからないが、心情描写を踏まえると何故か納得してしまった。古い時代の作品のため文章表現は難解な部分は多いがそれを超える説得力がある。 -
短編集のはずなのに読み終わるのに時間がかかった。ほとんど理解できてない
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ミステリアスな雰囲気、鮮やかさ、繊細な美しさを持つ魅力的な一冊。読みながら日本の原風景が連想され穏やかな気持ちになった。
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二回読む。梶井の作品は二回以上読むべきなのだろう。
初回の感想は「難しい」。
決して、日本語としては難しくない。
何が難しいのか、考えてみた。
日本人は英語で聞き取れない音域が多くあるという。これは言葉を耳から学ばないから。(子供、例えば帰国子女は耳から言葉を覚えるので、この音域を聞き取ることができる)
そして聞き取れないと発音ができない、ということらしい。これが日本人が英語を話すことが苦手な理由の一つ。
このことを思い出した。
つまり、我々が身近に感じることを、梶井は、その想像を超える言葉で表現しているのだ。
だから難しい。
初めて読んだ時に梶井の表現する風景が頭に浮かべることができない。
詰まり、これが「難しい」理由なのだが、2回目には、梶井らしさに慣れ、そしてその文体、表現力に惹きこまれていく。
言い換えれば、梶井は、できごと、風景を極めてユニークな形で言葉に落とす能力に傑出している、ということだと思う。
それは、自ら体調を崩し、常に死と向き合ってる状況の中で、内面を鋭く見つめているということ、そして、それを表現し、伝えようとする強烈な意思、意欲がそうさせるのだと思う。
どの作品でも、自分を蔑むことなく、悲しみに暮れることでもなく、宗教のように何かにすがることでもない。
私小説なのだろうが、どこか自分を客観的に、冷静に見つめているところがある。
そのような姿勢が文章を研ぎ澄ませることにつながるのだろうか。 -
最初は詩的な表現に「苦手かも…?」と思いましたが、読むうちに印象は変わってきました。ここまで心情をありありと、こんなふうに表現できるとは。暗い、辛い、やるせないを美化するのではなく、直視しながら生への渇望を見出せるところは、他の退廃的小説と一線を画す作品として読めました。
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情景の表現が巧妙であり、作者の生い立ちと相まって唯一無二の感じがした。
個人的には「冬の蠅」がオススメです。 -
なんとも誌的で美しい。情景が目の前に浮かぶにもかかわらず、幻想的なようで、病的なようで。奇を衒わない姿勢がすがすがしい。
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表題作はもちろん、「桜の樹の下には」のグロテスクだけど美しい描写が好き。
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純文学は、それほど得意ではないですが、この作品の魅力はよくわかりました。とにかく、自然の描写が素晴らしいです。それと相反するような、人物の内面の暗さも、妙に共感してしまいます。
何度も読み返したくなる名作です。