ようこそ地球さん (新潮文庫)

  • 新潮社 (1972年6月19日発売)
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感想 : 226
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  • 本 ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101098029

感想・レビュー・書評

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  • 本書に掲載されているのは全て昭和36年6月以前の作品だそうです。
    60年以上も昔といっても、原子爆弾は80年も前に作られているし、科学技術力は相当進んでいる。
    昭和36年4月にガガーリンを乗せたソ連の宇宙船が初めて大気圏外に行った。
    それから宇宙進出の競争が始まり、宇宙ものの作品依頼が増えたそうだ。

    そうした時代背景もあり、宇宙船が頻繁に出てくる物語をたくさん集めたのが本書だ。
    地球に来た宇宙船。
    地球からよその星に行った宇宙船。
    地球とは関係ない星と星の宇宙船。

    宇宙を舞台にすれば何でもありの物語が作れるので、作家の腕の見せ所だ。2つだけ簡単に紹介。

    【復讐】
     ある日ユル星人が地球にやってきて、お前らが気に食わないと攻撃し、地球上をめちゃくちゃにしてしまう。
     生き残った地球人は、ユル星人に仕返しをするために団結し地球全体で復興に励む。
     長い年月をかけて、攻撃前より遥かに良い世界を築きあげ、ユル星に向けて宇宙船を飛ばした。
     ユル星に着くと、長年の恨みを晴らすべく、いきなりガス弾を発射しまくった。
     が、逃げまどうユル星人は、かつて地球を襲った連中とは全く違う平和な住民だった。
     だまされて、全く罪のないユル星人を攻撃しめちゃくちゃにしてしまった。
     しかたなく「われわれはゲーラ星のものだ」とどなってユル星を去ることになる。 

    【信用ある製品】
     ある日宇宙人が地球にやってきて、宇宙最高の防御装置と宇宙最高の攻撃用武器を売り込んだ。
     効能がでたらめだったら代金は返すという約束の元、両方買うことにした。
     嘘がないか確かめるために、防御装置に攻撃用武器を発射した。
     どんな結末が待っているか、興味津々で読み進める。
     誰一人文句を言う者はいなかった。
     どうしてなのかは伏せておく。

    こんな話が42編つまった寓話集で、人間の至らなさを考えさせられる面白い本でした。

  • 古本屋さんにて、セール棚の中で目を引く本が。
    それがようこそ地球さん2013年特別カバー版だった。星新一さん、聞いたことあるなァと頭の中で無知っぷりを晒しながらジャケ買い。

    ショートショート、面白い!
    いわば現代版おとぎ話みたいな。ちょっと皮肉のきいた笑。挿絵もよい。
    星新一さんの本、父の本棚にいっぱいいたような気がするので次の機会に漁ってみよう。

    1番心に残ってるのは、処刑かなぁ。
    たくさん登場した生と死の本質を、1番直接的についているんじゃないかと感じた。


  • いつも思うが、閃きがすごい。
    お気に入りの章は

    空への門
    霧の星で
    早春の土
    ずれ
    愛の鍵
    小さな十字架
    見失った表情
    悪をのろおう
    復讐

  • あとがきによると名作「ボッコちゃん」から選考漏れした作品を収録したとのこと。だからと言って面白くないかというと、そこは星新一、圧倒的なクオリティのSSが揃っています(ただあちらに比べるとブラックな要素強め?)
    シチュエーションは近未来を舞台にしたSFと、共通してますが、そこから、ホラー系、コメディ系、ほっこり系と多種多様なお話が入っており、流石の一言。
    個人的に好きだったのは「セキストラ」「天使考」「ずれ」「復讐」「処刑」「殉教」。
    特に「処刑」と「殉教」は人間の死生観に強く問いかける内容となっており、考えさせられる内容でした。 
    短編集の最後を締めくくるのが「殉教」なのもある意味著者なりの風刺というかそういう意図もあるんですかね、考えすぎかな?

  • 子ども(小学校中学年)への読み聞かせ用としての星新一さんの本の5冊目です。
    地球に宇宙人が来たり、地球から他の星へ行ったりするようなお話が多めです。
    そういうSF的な話なら子どもでも分かるかなと思いましたが子どもには、少し難しいようでした。

    性的な話もあり、その話を飛ばして読もうかと思いましたが、そのまま読みました。子どもにはさっぱり分からないようでした。子どもからどういうこと?と聞かれても、自分も分からないふりをしましたが。

    ところで、あとがきによれば、本書に収められている作品は全て、昭和36年6月以前に書かれたものだそうです。
    読んでいて古さを感じなかったので、そのことには、正直驚きました。

    • artist tomo さん
      確かに。。私が昭和42年生まれだけど、小さい時に読んでたからそんな感じですね。今読み返しても新鮮かも。
      確かに。。私が昭和42年生まれだけど、小さい時に読んでたからそんな感じですね。今読み返しても新鮮かも。
      2024/07/02
  • ◆雨 : バカバカしさNo. 1
    ◆不満 : 人間の勝手さを考えさせられる。
    ◆西部に生きる男 : ギャグっぽくて面白い。
    ◆ずれ : 少しのずれが繋がらない様でいて、全て繋がっている面白さ。

  • ショートショートてす。
    この作品は素晴らしいなぁ。

  •  最も印象に残ったのは、「処刑」である。
     罪を犯し、処刑用の星に飛ばされた男は、生活に必要不可欠な水をもたらし、またいつ爆発するか分からない「玉」を持ち、星を巡る旅に出る。死の恐怖と戦いながら玉のボタンを押すが、ある瞬間から、ボタンを押すことに躊躇がなくなる。そのときの男の気づきが、この短編の本質である気がした。
     死は、日常にありながら非日常のように扱われ、人は死について考えず、また考えようとしない。しかしながら、死の可能性は生きる私たちの周囲に無数に存在し、今生きる私たちはその死へ繋がるルートを幸運にも逃れてきたに過ぎない。そして、この先も、死の可能性は私たちにつきまとい続ける。
     これは、死の恐怖と戦いながらボタンを押す男と、何ら変わらないのかもしれない。

  • この作品は「ボッコちゃん」と対になる、星新一の初期短編集であるらしい(あとがきより)
    確かに、「星新一らしさ」が少なめのショートショートがあったり、ショートショートでまとめるには少し長い短編作品があったりと、まるでおもちゃ箱のような1冊。→

    その中でも特に印象に残ったのは、「処刑」。
    地球で罪を犯したものは「赤い惑星」に「銀の玉」を持たされて流刑される話。水がない惑星なのだが、銀の玉に付いているボタンを押せば飲み水が手に入る。ただし、何回かに一度、激しい爆発が起こる確率があり、爆発が起これば確実に助からない……これはすごかった。星新一氏の本はわりと読んできたが、この読み心地は初体験だった。ラストも含めて素晴らしい。

    他に好きな話は「ずれ」「セキストラ」「空への門」「見失った表情」「開拓者たち」「復讐」「最後の事業」。
    昭和36年以前の話なのに、今読んでも楽しめるのはさすがとしかいいようがない。

  • 星新一さん、科学者のような視点から作り出すショートショート。吹き出してしまいそうなオチがあったり、心あたたまるエンディングであったり、とにかく楽しく読める。
    特に気に入ったのは『処刑』。いつ死ぬかわからないのは玉が爆発する時をハラハラ待つのと同じ。いや、元気に生きていても手元にいつ爆発するか分からない玉があるかもしれない。いつも人間は死刑執行を待っているのかも知れない。死を感じながら、死を恐れて、生に執着して生きてるのが人間なんだな。
    『愛の鍵』ドアを開けるための言葉。「楽しかったわ」が「ごめんなさい」に代わり、2人の心が繋がる。他のストーリーにはない微笑ましい話。

    地球が星新一の描くような星にならないことを祈ります。

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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