人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101098166

作品紹介・あらすじ

明治末、12年間の米国留学から帰った星一は製薬会社を興した。日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展したが、星の自由な物の考え方は、保身第一の官僚たちの反感を買った。陰湿な政争に巻きこまれ、官憲の執拗きわまる妨害をうけ、会社はしだいに窮地に追いこまれる…。最後まで屈服することなく腐敗した官僚組織と闘い続けた父の姿を愛情をこめて描く。

感想・レビュー・書評

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  • 明治時代の1人の実業家の栄枯盛衰。
    この本の著者である息子、星新一が誕生し、星一が父としてどんな人だったのかまで綴ってくれたら、こんな後味の悪い終わり方にはならなかったのではないか。
    新一の心持ちが推察できず、もやもやとした余韻が漂う。

  • 既読本

  • ショートショートで有名な星新一のお父さんの話。

  •  史実なのかフィクションなのか読み進めるうちに気になってひょいと解説をのぞいてみると、どうもこの作品は星新一さんの父の伝記であるらしいことを知りました。図書館に並ぶ星さんの文庫から偶然手に取った一冊です。神のイタズラですか。今でもきっとある公の強さとその強さの理由がうかがえる良い作品でした。
     ただ星新一さんはやっぱりショートショートがいけてます。

  • 人民は弱し 官吏は強し。

    まず、小説の舞台はあくまで戦前、ということは認識しておきたい。その上で。
    行政、官憲を敵に回してしまうとどれだけ理不尽な目に遭うか。
    そして、敵に回す気はなくとも、新しいことに挑戦しようとすることがどれだけ行政、官憲を警戒させることになるか。

    もちろん、官庁で真面目に働いている人にとって、この本はこの本でかなり一方的な主張をしているように思う点もあるだろう。私も思っている。

    しかし、一人のサラリーマンとして、この本にはいいしれぬある種のリアリティを感じざるを得ないことも事実だ。そして、罪とも言えない罪で報道され、全てを失い、しかし大衆はそれをすぐに忘れてしまう、そんな事件はこれまでも無数に繰り返されてきたはずだ。

    後味の良い本ではない。
    私のように、星新一氏のショートショートを中高時代に貪るように読んだかつての若者、今のおっさんにとっては、ああこういう物語も書いていたのか、という驚きがあるだろう。
    そしてページをめくる手が止まらない圧倒的な読みやすさは長編でも変わらないこと、現代でもまったく色褪せないビジネス論、起業論、人間論が語られていることにも驚くだろう。

    繰り返すが、ここまでの善玉悪玉ぶりをどこまで真実と取るか、バイアスと取るか、これは読者それぞれだ。

    なお、左翼言論人の大物、鶴見俊輔氏の解説がいっこうに要領を得ないことが読後感を下げてしまっている。私は図書館の古い文庫で読んだが、(本編とは異なり)すっかり時代遅れになっているこの解説は、版を重ねる中であるいは別のものに置き換えられているかもしれない。

  • これか事実だとすれば官憲は酷すぎます。この本で描かれている欲しかった一氏は序盤ではとても真っ直ぐで行動力と発想力に長け、優れた実業家として日本の製薬界の発展に寄与できたはずで、医療分野において他国から遅れていると言われている勢力図が変わっていた可能性すら感じます。野口英世やエジソンなどとも交友があったのはすごいですね。始めは私怨であった保健局による星の会社への嫌がらせが、国の保身から星の会社を国をあげて貶めることとなり、物語の序盤から始まった営業妨害が最後まで続き、とても鬱になります。序盤て感じた偉人伝記的な本ではなく子孫による仕返し告白小説となっています。
    今もこのようなことが行われかねないと想像するとゾッとします。
    本書の中では独身のままであった星一氏にはこのあと結婚して子供となる作者が生まれる授かるはずですがその気配がまったくないです。
    作者の父親がこんな才能があり、苦労人だったこと、作者がショートショート以外にこんな作品を書いていたことに驚きました。
    救いがない内容の本書、あまり人におすすめ出来る本ではありませんが、怒りを溜め込みたい方は読んでください。

  • ショートショート作家として有名な星新一が父の姿を描いたのが本作だ。
    明治末、12年間の米国留学から帰った星一(はじめ)は製薬会社を興した。陰湿な政争に巻きこまれ、官憲の執拗きわまる妨害を受ける。最後まで屈服することなく腐敗した官僚組織と闘い続けた父の姿を愛情をこめて描く。
    当時の時代の雰囲気、現在と変わらない官僚の姿を楽しめる本作である。

    中央館2F : 文庫・新書コーナー 913.6//H92
    OPAC:http://opac.lib.niigata-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA7689875X

  • つくづく日本の官吏システムには嫌気がさす。

  • 読後、決していい気分にはなりません。
    今は当時より政治腐敗は少ないであろうかとは思いますが、官吏というものは数年ごとに役職が変わるものであり、“多忙のため“引き継ぎもずさんに行われている現状があるかと思います。

    その上、本作では、当時の日本の発展に尽力し、新しい薬剤等の自給自足等苦慮した主人公。
    それを、政府方とズブズブの関係にある日本の製薬会社にあの手この手で、行政の権力を持って剥奪されていくものです。

    主人公の無念さが心に染みてなりません。
    国家権力による、1個人への虐待のお話です。

    残念ながら下っ端の公務員は上層部の意図を知らされず動きます。

    正論をかます主人公に、政府高官はいい顔をしません。
    そして主人公に対する悪意が芽生えていきます。

    なんともやるせない気持ち。
    誠に“日本の発展“を望むのであれば、合理的には主人公の事業を積極的に応援すればいいはず。

    やるせないです。

  • 2021.04.23
    星新一の父・星一の伝記。アメリカから帰国して日本に帰ってくると、日本は官僚が強くて、いじめられた。

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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