- 本 ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101098173
感想・レビュー・書評
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「粗食でもいいから十分に食え,十二分に食うな。栄養をとったら,くたびれるまで十分に働け,十二分に働くな。くたびれたら十分に眠れ,十二分に眠るな。」ショートショート作家の「星新一」の父「星一」の生涯を綴った一冊である。無計画な野心は身を滅ぼすだけだが,向学心を失わず計画と行動力と才能があれば人生なんとでもなるらしい。意味もなく「国際国際!」という意識の高さは早々に打ち砕き,自分が本当に学びたいことは何か,そこに人生を賭すことができるのか今のうちに真剣に考えたほうが良さそうである。そこに生まれる「意識の高さ」は人を惹きつけ,自分を高める助けになるのかもしれない。
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背景は明治時代、そして伝記ものとなると必ず躊躇してきた私が、ぐいぐいと引き込まれ、あっという間に読了した。何ともいえない余韻に浸りつつ、この本の魅力はなんぞや?と一考してみた。
まず、著者である星新一の文体が秀逸であることだ。言葉が丁寧で適切であり、読み手への親切心が感じられる。さらにリズム感があって読みやすい。次に、主役である星一(ほしはじめ)の性格がとても魅力的であること。他者に流されず(少々頑固なきらいがあるが)芯がありまっすぐである。金や名声に欲がない。計算高さ、ずるがしこさなど皆無で、読み手の背筋を伸ばしてくれる。
明治時代の歴史的背景について、ほとんど無知である私でも、野口英世、伊藤博文、新渡戸稲造、津田梅子の各氏(みな日本紙幣に採用されているので、当然といえばそうなのだが)は知っている。このような識者との交流を経て、大きく成長していく星から目が離せないのだ。
終始、映画を見ているような気分で、昔懐かしさが込み上げてくる作品だった。
というわけで続編の「人民は弱し 官吏は強し」が楽しみでならない。
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良書。
というより、星新一しか書けない、紡げない不思議な本だ。
歴史を扱った本は、えてして劇的で煽情的で男らしい内容になりやすい。
ところが彼の文体はとてもシンプルでひんやりしている。
それがショートショートの場合は、現実と虚構のあわいにあるような、不思議な世界の構築につながっていた。
その筆致で歴史を綴ると、極めて知的でクールな、しかし父への愛が込められた、不思議なムードが生まれてくる。
普通の歴史ものとはまるで真逆だ。
それで思い出した、
星新一は森鴎外の血筋であることを。
傑作・渋江抽斎にあるように、森鴎外は非常に冷淡に、ある種あるがままに歴史を書いた。
そこから歴史の恐ろしさや現実との連なりを学んだものだが、
その血が、たしかに星新一に流れているんである。
中身は、まさに立志伝。
やはりあの時代に海外に飛び出していく人間は格段にすごい。
新渡戸稲造や野口英世らとの交友も、イノベーターたちのコミュニティという感じだろう。
我々は、かつての「アメリカ」に相当するものを見つけ、躊躇なく飛び込めるかどうか。 -
「人民は弱し・官吏は強し」を読んで、さらに星一に対して興味がわいたので、読んでみました。
星一の行動力や困難にも立ち向かって乗り越えていく姿は、ある種の漫画の主人公的な感じで、読んでいてワクワクしました。
また、歴史上の有名な人物も出てくるので、そのような偉人たちとも交流があったんだと感心しました。 -
ふと自分を振り返りたい時、じわっとヤル気がでる本。高校生の時は感じなかったいわきの気質、著者の年齢に近くなり父への想いを馳せる。
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SFの巨匠 星新一による実父の伝記。
文章は読みやすく、明治を代表する実業家である父 星一の偉大さが良く描かれ、
星新一の父への深い愛情が感じられる。
絶版という噂を聞いたが、まだ買えるようなので、
購入できるうちに是非買うべき一冊。 -
ゼロからの挑戦を続けた星一の人生は、まさに西国立志篇。
題名にあるような、明治時代の日本人と、発展し続けるアメリカのちょうど間。いいとこどりもといえる。
常に足下をしっかり見つめながら、上を見据えて進む姿は、小学生のころ読んだ伝記上の「偉人たち」のそれとだぶる。
でも、最大の見せ場はラストの一文。
「その点、私はいささか多く書きすぎた」
懐かしさと、寂しさと。カッと胸が熱くなったまま、解説は読まずに本を閉じた。 -
今読んでる
日本に帰ってきて、アメリカに行った人の話を知りたくなるのは人情。それと、星新一のノンフィクション(というか随筆)は今まで挫折しているので、長編のノンフィクションなら読めるかなと。
2010/12/16
読み終わった
いわずと知れたショートショートの王様、星新一の、自らの父親の波乱と人情に満ちた半生を綴った他伝記。
海外という舞台で立身出世を目指した日本人の話というのは、誰の話でも心を奮い立たせてくれるもの。例えば「翔ぶが如く」、川路利長のエピソード、或いは「舞姫」、豊太郎がエリスと出会うまでの話、枚挙に暇がない。
この作品も、一生をひとつの事に捧げた主人公を軸に、元気を与えてくれる、がんばろうという気にさせてくれる、一旗あげてやるという気にさせてくれる、男好みな作品で。最近お疲れのお父さんや人生に迷ったモラトリアム学生たちに読んでほしい一冊。
かくいう自分も、アメリカでなにを学んできたのやら… ?痛いところを突かれながらも星新一の文のタッチだったら耐えられる。主人公星一(はじめ)を応援したくなってしまう。
そんな風についつい応援したくなるような作品の主人公星一。実の父に向ける星新一の視線は客観的で、身内だからといって謙遜したり、逆にことさらに強調したりするところがない。それでいて父親を語る息子の、どこか恥ずかしそうで突っ張った新一にも微笑がこぼれます。父子っていいもんですよ。
久々いい本を読みました。 -
昔のアメリカに夢を持ってわたり実現するところが素晴らしいですね。
その真面目さもいいです。
友達が星新一の親戚で生まれたのがすぐ近くで親近感もよけい湧きますね。 -
星新一氏が父について書いた本を再読。
”人民は弱し 官吏は強し”、”明治の人物誌”とあわせて読みたい。自身の父親が米国に留学中の苦労ぶりが描かれている。若い時代の話の所為か、人民は・・と比べて、苦労の中にも希望がある。(人民は・・もひたすらエネルギッシュな星一氏の話が載ってはいるが、様々な足を引っ張る人々のおかげで苦労も並大抵ではない感じで、時にHopelessにすら感じられる)
若い時からすごかったんだがと思わせる一冊。-
”人民は弱し 官吏は強し”、”明治の人物誌”はまだ読んだことないので、今度読んでみようと思います。”人民は弱し 官吏は強し”、”明治の人物誌”はまだ読んだことないので、今度読んでみようと思います。2013/06/09
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著者プロフィール
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