明治の人物誌 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101098500

感想・レビュー・書評

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  • 再読
    自身の父親に関する人物たちの評伝
    解説にあるようにその父親が評価した側を取り上げることで
    その行動の正しさを肯定したい信条が全体を支持している
    自分のことだからそうでない側は書けなかったのだろうか
    一面でなく様々な面からの視点を一人の著者に求めるものではないだろうけれど

  • 星新一の明治ものは、父一への愛情が感じられて好き。

  • 個人的感情に基づいているからなのか、複数人についての偉人伝はどれも濃厚で、なおかつ作者の父にまつわる内容だけに各章で重なる部分が見受けられたこともあり、正直読むのに時間はかかった。
    ただ、当然というべきか、作者の父にまつわるという点において一冊を通じた物語として成立しており、前後で繋がりを感じられる部分もあったのはよかった。

  • ぅん、意外にも面白かった!
    意外っていうのも失礼ですけど。天下の星さん捕まえて。
    たまたま、歴史小説的なものに興味を持ち、かつ、星新一を久しぶりに読もうかなと思ったときに見つけた本。
    星さんがこういう本も書いていたなんて知らなかったなぁ。

    対象人物の抽出基準は、星さんのお父さんとのつながり。
    なんか、野口英世とか、完全に昔の偉人、というイメージなんですが、そんな人材が、今生きる人の(いや、まぁ今や亡くなっていますが)お父さん時代というレベルの人??と思うと、なんだか不思議でした。
    そして、一般的にはレアな人であっても、星さんのお父さんとのつながりを基に光が当てられているので、へぇこんな人がいたのか!と(著名でない割にやっていることはなかなかすごかったりする)、なんだか面白かった。
    対象者は、
    中村正直
     西国立志編←これは要は翻訳なんですが、当時の、なんていうか向学の啓発本に近い。かなり面白く、ベストセラーな感じになったらしいよ。なるほど。そんなのってあんまり歴史の授業じゃ習わないからね。そういうのを一緒に習えたら(そこまでは時間が足りないことも重々承知しつつ)面白く定着するだろうに。
    野口英世
     彼がお金にだらしなさすぎた(!!)のは、結構びっくりだったなぁ。
    岩下清周
     やり手の銀行マン。中小企業等も義侠精神で育て続け、受付に女性事務員を置いたさきがけ、森永製菓の見込み育ての親(融資ってことよ)だったり、湯川秀樹の父親の病院を見込んで大きくしたのも彼だったり、関西の鉄道を育てまくったり。なんと生駒のトンネルを掘ったのも彼らしい。原首相と親密と見られて政治に巻き込まれひどい道をたどったとか。
    伊藤博文
     言わずと知れた人ですが。以外にも、権力に執着はなかったみたい(だから、うん辞めるわー、みたいな感じで首相を止めて、でもまた担ぎ出されて、結局4内閣作ってたり。)。親露派。結構中庸を好む感じの穏健派だったみたい。満州で頑張ったりとかしてた。鉄道を初めてひくことを推進したのも彼。天皇からも頼りにされていたとか。でも女好き(笑)。
    新渡戸稲造
     少年時代は正義感でもって暴れん坊だったらしい。でも、今後は学問が重要、という時代で、農業をおさめ。札幌農学校に進学→キリスト教徒になる→渡米・フレンド派→米国人奥さん、札幌農学校校長、中学や高校の校長も務め、非常なる穏健派で周りから尊敬・信頼を集める。インフルエンザが流行った時、学生に朝礼で、無事ですの一言でもいいから親にはがきを出しなさい、と言ったりしたとか。連盟の時も、周りからも信頼され、数々の議長等したって。武士道。
    エジソン
     この人は、大量に発明したらしい!電気のイメージが強かったけど、電気も、蓄音機も、映写機も!なんかものすごい勢いで発明王だったらしいことに驚き。だけど、どれも執着することはなく、また、事業化の才能はあまりなかったみたいで、とにかくずっと発明してたみたい。
    後藤猛太郎(たけたろう)
     伯爵。お資産のお父さんの会社を資金的に助け書く出した人。スーパーダメ男だったらしいけど(ほんと、なんでこの時代はこういう人が多いのだ???遊びすぎ。)、そのときやっと設けて安定したらしい。
    花井卓蔵
     当時の超社会派弁護士。徹底的に調べ上げて、正義を貫いたとか。当時の官憲の時代の中で。また、恐らく刑法の基礎も築いたひとっぽぃ。
    後藤新平
     医者。国家衛生原理。朝鮮半島からの引き上げ兵の検疫など完璧にやり遂げた。国家も人体と同じで、病と原因がある、として、めちゃめちゃ国家の基礎を作りまくった人。台湾と東京。すごい。
    杉山茂丸
     表に出る役回りの人では全くなかったが、政界の裏側でいろんな人を陰で動かし、何気にもしかしたら思うように世界を動かしていたかもしれない人。。

  • ショートショートで有名な星新一のお父さん星一(ほし はじめ)は、星製薬を創業しモルヒネの精製に成功、そして星薬科大学の前身となる商業学校を設立します。
    本書は、時折息子の視点を交えた星一の伝記だが、先の過程で星一が出会った人物や影響を受けた人物を、明治の偉人伝風に紹介するという変わった手法をとっています。

    伊藤博文や新渡戸稲造、エジソン、後藤新平、野口英世といった有名な人物から花井卓三、後藤猛太郎といった普段聞きなれない人物が出てきます。
    文章の読みやすさはショートショートで実証済みで、各人のエピソードの選別も秀逸です。

    本書で紹介されている人物で杉山茂丸がいる。当時、僕には「夢野久作の父親」という印象しかなかった杉山だが、星新一はこう評している。
    「玄洋社という国家主義の団体の連中とつきあいながら、一人独自の道を進み、英語もでき、国際情勢にあかるく、陽性な性格。官職についたことはないが、各方面の実力者と親しい。ちょっと不思議な人物である。」
    そんな杉山が、伊藤博文や後藤新平の章などで星一とともに暗躍するのだ。そして満を持しての最終章が「杉山茂丸」だ。
    そんな杉山が故郷福岡から飛び出すきっかけが伊藤博文暗殺を企ててのことだなのだから、もうハラハラします!

    杉山茂丸にして息子が夢野久作…、最後には孫の龍丸も登場しますが、興味がある方は杉山家を調べてみると面白いと思います。
    キーワードは「グリーンファーザー」です。
    本書にもそのキーワードに近しい記述があります。

  • 中学生の頃大好きだった星新一に最近またはまってます。
    星新一と言えばショートショートの名手のイメージでしたが、この作品は少々毛色が違い、筆者の父、星一氏と直接間接関わりがあっ明治時代の偉人たちの物語。あまり知られてない人物も居ますが、筆者の軽妙で解りやすい文章のお陰で楽しく読めます。

  • 著者の父を巡る人々を描いた好著。著者の父の青年期を描いた「明治・父・アメリカ」本著に出てくる後藤新平絡みで攻撃される「人民は弱し官吏は強し」を合わせて読むとなおいいでしょう。

  • 星新一による明治人物史。
    実父、星一の遠い思い出も散りばめられ、味わい深い評伝の数々。
    伊藤博文、野口英世、中村正直等の評伝を辿りつつ、明治という時代の知られざる側面を垣間見れる良品。

    星、四つで御座います。

  • 全体的に、一人一人の伝記がもう少し短ければ、もっと気軽に読めるのかな?と思いましたが、文章が分かりやすかったので、読みにくい、というほどではありませんでした。著者のお父さん、星一さんがお世話になった人を中心に書かれているので、個人個人のエピソードを知りたい人にはおすすめかも。

    一番印象に残った人物は『岩下清周』。中でも谷口房蔵と岩下清周の銀行内での一幕のエピソードは明治とういう激動の時代を生きた男達の息吹を垣間見た気がしました。

    そのほか、山口県民としては『伊藤博文』の伝記も興味深かったが、伊藤博文の場合、あまりに伝記が多すぎるため、著者はまとめるのにかなり苦労されたようです。

    そんな伊藤博文さんは、実はとても気さくな人物だったと書いてあり、驚きました。本書の中にも書いてありますが、紙幣の中の『厳格な』イメージがこびりついているからなんですね。伊藤博文さんの笑った写真が見たくなりました。

  • 著者が父の思い出と共に、関わりのあった人々の経歴を紹介していく本。私が主に参照したのは、花井卓蔵・後藤新平・杉山茂丸ですが、伊藤博文やエジソン(!)など有名どころも。伊藤の章を見ると、著者の指摘通り紙数の都合等でやや詳細さに欠けるものの、花井の章は関係史料が入手しにくい私にとってお役立ち。

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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