- 本 ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101102016
感想・レビュー・書評
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1952年の作品。貧村の生徒と新任教師、時代は大戦前後。生活者目線での戦争批判。
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戦争に苦しめられる庶民、少女の身売り、女中奉公、ヤングケアラーと悲惨な内容の割に、主人公の心象風景、ユーモア、自然描写の美しさから読み進めることができた。書き出し、一本松のシーンとそれに絡むラストが素晴らしい。50年ぶりの再読。読むべき傑作
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とても有名なタイトル。
不朽の名作と謳われていながら、未読でした。
時代は昭和初期。自立した芯のある女性と無垢な子どもたちの交流を描いた物語、だと思っていました。
物語が進むにつれ、忍び寄る戦争の影に、この時代の空気を感じました。貧しくとも明るい、いたずらや意地悪さえも振り返れば懐かしく思えるような毎日が、「戦争」というものによって失われていく。時代の理不尽さを前に、怒るでもなければ、叫ぶでもなく、大事な教え子を慈しむ眼差しに、なんだか泣きたくなりました。
教え子たちを戦争に取られてしまうのも切ないけれど、平和な時代を知らない自分の息子が、戦地に行きたい、名誉の戦死を誇らしいと思うのを目にするのは、どれだけ辛いことでしょうか。
自らの命を大事にするという当たり前の価値観さえ揺らがせる、戦争というものが怖くなります。むしろ、自分を、相手を大事にするという価値観を持ち続けていては、戦争はできないのでしょうね。
戦争は悲愴。それでいて、本書は暗くない。
あとがきには、「壺井さんの文学にはえくぼがあった」と書かれているけれど、本当にそのとおりで、こんな辛い時代においても、明るさを失わない、人の温かみのようなものがある。これが、戦争を糾弾するような物語であったなら、こんなにも長く人々の間で読み継がれることはなかったと思います。
戦争はよくない。
それはもちろんのことですが、そんな時代を逞しくも生き抜いてきた私たちの祖先に想いを馳せることができる、そんな1冊でした。 -
有名な作品だが、初めて手に取った。
平仮名や方言が多く、始めはなかなか文章が頭に入ってこなかった。
先生と生徒の学校生活の物語だと思いこんで読み進めていたので、何故この先生が人気者になるのか?と疑問だった。
しかし私の視点が違った。
この本はそのような本ではないと気づいてから、読書のスピードが上がった。
後半は一気に読み進めてしまった。 -
祖母が小豆島出身と知り、手に取りました
戦地へ向かう生徒、経済的事情で“男として生まれたかった”と呟く生徒…
私の祖母やその家族も似たような経験をしたのかな…そう思うと、戦争体験は血筋を伝い、受け継がれている様にも思いました -
小学生の時に何度も読んだ本。
自分が母親になるとまた昔とは違った感想ももつ。
生きる大切さ、そして生命の大切さ、戦争の悲惨さを教えられる本。
・一年生の子が弟や妹の子守りをするとは
今の大人でさえ育児は大変なのに、本当に本当に大変だと思う。
・環境の力を感じさせられる。
生まれた時代、場所、家によってこんなに運命が変わってしまうとは。 -
昭和初期、師範学校を卒業して小豆島の分教場に赴任してきた大石先生と12人の教え子との愛情あふれる物語。(文庫裏表紙説明より)
読む前は先生と生徒の物語なのかな、と思っていたけどどちらかというと戦争のことを描きたかった作品なのかなと思いました。
大石先生にすごく感情移入してしまいました。赴任したての大石先生の苦労や戸惑いには私も思わず「あるある」と苦笑(笑)
子どもは生まれる家や時代を選べないんだなぁ、生まれた環境で、時代で、順応して生きていかなければならないというのは今も昔も変わらないことなのだなぁということを改めて感じました。それを、学校の先生や親含め周りの大人がしっかり理解して子どもたちを伸ばしていってあげないといけないんだなぁと思います。
あたたかくて、さびしい物語でした。 -
小豆島に数日宿泊する機会があり旅路に読んだ本。どんな事があっても戦争は良くない。
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今更ながら、改めてこの有名な作品を読みました。
貧しさゆえに苦しみ、小さいなりに必死でその状況を受け入れて生きていた子ども達。時代は変わっても子ども達は精一杯、様々なことと戦っていることは変わらないな、と思います。幼いゆえに比較も非難もせず、必死に生きている。令和を生きる子どもたちも、そうなんですよね。
ひたひたと押し寄せる言論統制に苦しむ、心ある先生。軍国少年として育った息子の心‥などなど、名作だけに、歳を重ねてから読むと、本当に読み応えがありました。 -
何十年ぶりかに読んでみた。落とし穴に落ちた大石先生のくだりが記憶に残っていたが、全体を流れるのは反戦の悲しい話だった。もうこんな話が理解されない時代になっているのか・・・
著者プロフィール
壺井栄の作品





