- 本 ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101102221
感想・レビュー・書評
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たいへん味わい深い短編集。いちじらにじら〜
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「景山民夫」の短篇集『クジラの来る海』を読みました。
「景山民夫」作品は昨年の10月に読んだエッセイ集『ONE FINE MESS―世間はスラップスティック』以来なので久しぶりですね。
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毒島町の財政は破綻寸前だ。
予算を根こそぎ使ったあげく、町長はポックリあの世行き。残された者たちが苦しまぎれに思いついた、観光客誘致の妙手とは…?
表題作をはじめ、人の心を読んで犯罪捜査を行う刑事が活躍する『チャネリング刑事』、謎の団体「裏プロレス」の死闘を描く『闇のリング』、ジュラシックならぬ『クラシック・パーク』など、バカバカしい笑いに溢れた11編。
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なんだか気持ちが疲れ気味、、、
軽く読めて、笑える楽しい作品がいいなぁ… と思い、本書を選択。
気楽に読めるけど、深い余韻のある作品も含まれた以下の11篇が収録されています。
■地球防衛軍、ふたたび
■犬と神様
■クジラの来る海
■真説・クジラの来る海
■闇のリング
■チャネリング刑事
■サトル、町を行く
■骨折記
■悲しきサイキック
■霊能者たち
■クラシック・パーク
『地球防衛軍、ふたたび』は、近未来に地球防衛軍が設立(復活?)されており、その役割のひとつとしてミステリーサークルの謎を解こうと調査する物語、、、
ミステリーサークルを造っていた宇宙人はUFOを操縦した暴走族だったとは… あり得そうことですね。
時代設定が2013年… 執筆された当時は近未来だったんでしょうけど、既に2014年なので不思議な感じがします。
『犬と神様』は、交通事故で死んだ柴犬の雑種「ショウゴ」のあの世での物語、、、
「ショウゴ」は、人間に生まれ変わりたいと願うが… イエティって人間だったっけ?
コメディのカタチを借りつつ、生きることの意味を問い掛ける深い作品でしたね。
『クジラの来る海』は、離島で観光資源のない町・毒島町(ぶすじままち)の役人が、財政破綻から町を救うために観光振興策として、マッコウクジラの来る島をPRする物語、、、
実際にマッコウクジラが出現したことはないが、マッコウクジラを目当てにした観光客が増加し、マッコウクジラ作戦は成功したかに思えた。
しかし、水産庁と環境庁が調査に訪れることになり… 「鳥兜(とりかぶと)」町長らは、最後の手段として島の西の端の鹿追い谷に住む「毛萩のお婆」に祈祷を頼む、、、
「毛萩のお婆」は、「イーチージラッ! ニージラッ! サンジーラッ!…」と祈祷を始めるが、「ゴージーラッ!」で酔い潰れて祈祷が中断… 現れたのはクジラではなく!?
『真説・クジラの来る海』は、『クジラの来る海』とは全く関係のない話で、フリーランスのカメラマンたちがメキシコでクジラの撮影に挑む物語、、、
この作品、えっ… と思うくらい、まともな物語で、ちょっと拍子抜けでしたね。
『闇のリング』は(裏)プロレスの物語、、、
プロレスには興味がないので、あまり感情移入できませんでした。
強敵に勝ってスッキリと思ったら銃弾が… ちょっと後味の悪さが残りましたね。
『チャネリング刑事』は、超常現象モノで特殊能力を持った刑事の物語、、、
こんな能力… 欲しいような、欲しくないような。
『サトル、町を行く』は、人間の心を食べるもののけ「サトル」の物語、、、
何百年も山に潜み、山中に迷い込んだ人間の心を食べていた「サトル」(八甲田山、死の彷徨も、雪山を彷徨う陸軍兵士が「サトル」によって心を食べられた… という設定)だが、徐々に山を訪れる人間がいなくなったことから、「サトル」は町へ行く決心をする。
都会の人間の心は腐っていたんでしょうねぇ… 「サトル」に待っていたのは無残な運命でした。
現代人の生き方に、疑問や批判を投げかける作品でしたね。
『骨折記』は、骨折して入院した病院での恐怖を扱った物語、、、
医者のことが気に入らなくても、なかなか言えないもんですよねぇ… 担当医師を選べないってのは怖いですねぇ。
『悲しきサイキック』は、超常現象モノで、三流地方銀行の取立て係で四十代で平社員の主人公が、突如、特殊能力を使えるようになるという物語、、、
特殊能力を徐々に自由に扱えるようになり… 予言者「モーゼ」のように海が二つに分かれる技を身に付けようとするが、待っていたのは、草津温泉での悲しい結末でした。
『霊能者たち』も超常現象モノで、日本の霊能者特集を組もうとした雑誌編集者の物語、、、
三人の霊能者を一か所に集めてぶつけ合い、それをルポルタージュしようとするが… 想像以上の激しい戦いに発展。
狐と狸と青大将の代理戦争だったんですね。
『クラシック・パーク』は、十億円近い赤字を抱え破綻寸前の町・蔵敷町(くらしくまち)の町長が町興しを目的にクラシックパークを建設しようとする物語、、、
町に伝わる、鬼の角、河童のミイラ、人魚の鱗、カラス天狗の嘴から、DNAを採取し、クローン培養してクラシックパークの目玉にしようとするが… 実は、これらは太古に生存していた恐ろしい他の生物のパーツだった。
こいつらが蘇ったら、まさにジュラシックパークですね。
面白いけど、それだけじゃなくて、考えさせられる作品群でした。
著者プロフィール
景山民夫の作品





