- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104010
感想・レビュー・書評
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明治29年、淡路島から単身飛び出した15歳の吾平は、大阪船場の大店浪花屋で丁稚奉公を始める。旦那はんである利兵衛に見込まれ、しごかれながら異例の速さで出世し、ついに別家を構えるまでになる。
作者の、大阪の商家独特の文化に対する誇りや愛着に溢れた作品。
圧巻だったのは暖簾を担保に銀行が融資をするという一幕。まさか!と思っても、読者にそれを納得させるだけの力強さがある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「たった35銭だけを握りしめて淡路島から大阪にやって来た」主人公の描写、その出だしから引き込まれる。
老舗昆布屋の暖簾を守る、親子2代の物語。初代は丁稚から叩き上げの時代で、明治後半といえどもまだ江戸時代の空気が残っている。代替わりする第2部は、文字通りの戦後復興期が舞台で、経済の中心が東京に移り、大阪が天下の台所の地位を失った時代。タイプの異なる大阪商人2人を通して、大阪の歴史が透けて見えてくるよう。 -
山崎豊子のデビュー作であり、出世作。
日清戦争後、淡路から裸一貫で大阪の昆布商に丁稚奉公し、苦節10数年、暖簾分けして自らの店を持ち、繁盛させていく主人公の姿が第一部で描かれ、第二部では、主人公の次男が戦災ですべて失った老舗の暖簾を再興していく物語。
どんなに困難なことがあっても、決して暖簾に傷をつけるような真似だけはしないという船場商人の心意気が十二分に読者を惹きつける。また経済史的背景もしっかりと描かれていて面白い。
主人公の店(浪花屋)の塩昆布にねこいらずが混入していたとの嫌疑をかけられ、警察に拘留された主人公に家族・使用人が「適当なこと言って出してもらいましょ」と勧められたのに対し、主人公がこう啖呵を切る。
「阿呆、わいが詐欺や横領したん違うぜ、……わいが按配云うて出ても、暖簾が傷ついたらそんでしまいやないか、……」(74ページ)
結局、主人公の推察が当たって無事に放免となるのだが、このあたり、ユーモアもあって良い。中身はネタバレになるので書きませんが。 -
本書は山崎豊子の処女作であり出世作でもある。先代が守った「暖簾」を二代目が引き継ぎ商売を大きくしていくというお話し。そして三代目が放蕩の限りを尽くし店が没落していくのであった(笑 何気に、先代が世話になったお店の若旦那の姿をイメージできる。商売は個人から組織へ移行しなければ継続的な成長は難しい。
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商家は4つの名前を持つ。経営体としてのイエ(屋号)。経営者一族としてのイエ(本姓)。経営者としての当主(店名前)。生身の個人としての当主(実名)。例えば、鴻池屋、山中、鴻池屋善右衛門、山中宗益などのように。このうち、山崎豊子が描きたかった「暖簾」は、経営体としてのイエが持つブランドなのだと解釈している。個人よりも経営体としての「名」こそ「暖簾」。だからこそ、「暖簾」は担保(正確には引当か)になり得る。実に考えさせる本だった。最後の東京への眼差しは、大坂を研究する人間としては、頭に置いておかねばならないものだ。
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暖簾の重さの良い部分と悪い部分が、上手く描かれています。
伝統を守ることと進化することのバランス。
お客様に良い商品を渡すためにする努力の大切さと、店を大きくしたいという私欲。
見た目は同じでも、志という土台が重要だとわかります。
何かを始めようとする人に薦めたいです。 -
いまよむと、いわゆる大阪弁でも聞かないことば、
だせぇ、やぜぇ等が連発。
大阪弁なのか、船場言葉なのかわからないが。
正直大阪について見直す。
暖簾の重みと。 -
老舗の意地