ぼんち (新潮文庫 や-5-2 新潮文庫)

  • 新潮社 (1961年2月2日発売)
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本 ・本 (656ページ) / ISBN・EAN: 9784101104027

感想・レビュー・書評

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  • 「ぼんち」(山崎豊子)を読んだ。
    
これは凄いな。
船場ってのはもう独自の世界だったんだろうな。
非大阪人には理解し得ない大阪人だけの独特の響きを持った場所なのか。
『封建的な一種の特権階級』(本文より)というわけだ。
    
もし私が同じ立場に生を受けたとして、いやぁとってもこんな甲斐性は無いだろうと思う。
気が小さいんで絶対に「ぼんち」には成れんわ。
    
《大阪船場、かつてそこには独自の生態を頑なに守り続けた驚愕の種族が存在していた》
    
なーんてね。
    
終わり方も見事でした。
    
あー面白かった!

  • 読めば面白いんだろうけど、分厚いため、なかなか読み始められなかったが、読み始めたら一気によんでしまった。
    大阪船場商家の風習を細かく描写した作品。読みやすく、素晴らしい文章のためどんどん読み進めてしまったが、物語としては船場の制度、花街風俗が主であり、あまり入り込めるほどのものではなく、良質の歴史解説書を読む感じだった。

  • 結局人は時代の波の中で生きていくんだな~と改めて思いました。大阪の船場や芸者文化などに重ねて、明治大正昭和と激動の時代。喜久治と5人の女のつきあい方、祖母、母とのかかわり方、今の時代では考えにくいけれど、きっとそれぞれ強い信念のもと、相当な覚悟を決めていたに違いない。男の強さ、女の強さを感じました。もしかしたら、この強さは作者の強さかもしれません。自分がそこにいるかのように感じさせる表現など、山崎豊子の本をもっと読みたくなりました。

  • 女系家族の老舗に生まれたぼんぼんの話。
    女遊びに明け暮れ放蕩の限りを尽くしても遊びを仕事に生かす憎めない男。
    ぼんちとして生まれぼんちとして生きた一生と主人公を囲む個性的な女性がきちんと描かれていて面白かった。

  • 古い時代の道徳に乗っ取った小説。今の時代にこの小説を発表したら、各方面から叩かれるだろうなと感じた。
    主人公は、若いのに金があって、しかも離婚して、独身と言う設定から、外に5人も女を作って、また、その女のほうも、彼を拒むことをしない。しかも最後には、生き残った4人の女同士が疎開先で仲良く過ごすと言う、非現実的なオチが付いている。
    この小説では、その場面で終わっているが、主人公には離婚した本妻の息子1人の他に外の女に作らせた息子2人がいて、しかも外の女の息子の方が出来が良さそうなことがほのめかされている。もしこの小説の続編があるとすれば、その3人の息子たちの葛藤の話と言うことになるのだろうが、さすがの山崎豊子も、そこまで話を膨らませる事はせずに、この小説は終わっている。

  • 毎日の着る物から冠婚葬祭まであらゆるシーンに独特のしきたりが存在する大阪・船場。前作の「暖簾」「花のれん」では船場の良い面にフォーカスされていたが、本作では時代錯誤的な負の側面も取り上げつつ、懸命に家業を盛り上げようとする主人公の姿が印象的だった。

  • 面白かった~!
    大正から昭和初期の大阪の老舗足袋屋の跡取り息子、喜久治が主人公である。フィクションではあるが、著者の山崎豊子氏は膨大なリサーチをしており、当時の大阪の商人の暮らしぶり、遊び方や価値観、しきたりなどが良く分かった。想像以上にスケールが大きかった。
    喜久治が生まれた家は、女系3代の立派な商家で、世代ごとに娘が婿をもらいながらビジネスを育ててきた。女たちは実際には商売をしないが、裏で家を仕切っており、祖母と母が実質支配者である。大金持ちの家に生まれた息子は、10代の頃から派手に女遊びを始める。20代になると一度結婚をして息子を設けるが、嫁は出産後すぐに祖母と母に追い出される。息子は商売に精を出しつつ4人の妾を抱え、それぞれの華やかな生活をサポートし続ける。一方、昔ながらのしきたりに窮屈さも感じ始める。やがて戦争が始まり、家族は派手な暮らしを見直さざるを得なくなる。
    当時の艶福家の遊び方はスゴイ。芸者遊びはどれほどお金がかかることか。妾達も、本妻になれないことは最初から承知の上で養ってもらっている。感心したのは、喜久治がちゃんと妾達の面倒を最後まで見続けるということと、彼がビジネスマンとして商品の企画から営業まで有能であるということだ。
    大阪弁で繰り広げられる商い。女性の地位。なかなか面白い船場の世界をのぞかせてもらった。

  • 1ページ目から映像が浮かびます。
    映画を丁寧に読んでいる感じ。
    しかし、どの国のいつの時代や!と言いたいくらい異次元。

  • 放蕩を重ねてもどこかで人生の帳尻をぴしりと合わせる。豪商の家に生まれ、女系家族に育ったという特異な環境が、主人公を女道楽と散財に浸らせつつ、それ故に遂に新境地に辿り着く。金に糸目をつけない気儘な遊び人の物語は、女たちとの手切れの描写も含め、さっぱりしたラストシーンだった。全編を彩るのは船場商家と花街の独特な風習と文化。商人階級社会のしきたり、御座敷の様子、芸妓の生態など、江戸期から戦前まで受け継がれてきた世界が細々と文章に織り込まれる。言葉遣い一つ一つに大阪の匂いが籠もり、商人の心意気や制度、芸妓の所作や衣装、御座敷の料理や音楽等々、今日どれもが珍しく魅力的で、船場文化を目で味わう事もできる作品。山崎豊子が有名な社会派小説を書くのはまだ先だが、すでに完成度が高く、文体は同じでも、まるで別人が書いたかのよう。やるせなく感じたのは、主人公の特権階級ぶりで、当時まだ身分制に凝り固まった封建社会の名残の強さを窺わせる。ために、あまりに浮世離れした印象はあった。

  • 久しぶりに読んだ豊子作品、素晴らしすぎる

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまさき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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