花のれん (新潮文庫)

著者 : 山崎豊子
  • 新潮社 (1961年8月17日発売)
3.68
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  • 99レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104034

花のれん (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 商いに生きた女興行師の生涯を描いた、直木賞受賞作。

    楽な方についつい流されてしまう弱い夫を持った多加の、誇り高く、魂を削って商いにすべてを捧げた生き様が圧巻です。
    正直、そこまでする?という程の努力と気遣い。

    多加の才覚ももちろんありますが、事業を大きくしていった根底にあったのが、人との縁でした。
    たしかに運もあったんでしょうが、人との縁を作るために、待たずに行動していったところに運を呼び込む鍵があったように感じます。
    人との縁を作るための多加の努力がいじらしい。
    最近こんな風に脇目を振らないで何かをひたむきに頑張るってことがないな・・・とふっと自分を省みたり。

    多加は自身の生き方を、独楽に喩えているんですよね。
    “わてみたいな商売人は、独楽みたいなもので、回っている間だけがたっているので、動きが止まった途端に倒れますねん、商人て何時まで経っても、しんどいものだす“ (p257)

    多加の人生は辛いことも多くて、決して楽な人生ではないし、本当に走り続けることしかできなかったんでしょうが、そうすることでしか手に入らないものは確かにあるだろうし、ある場面は涙なしでは読めません。

    この小説の魅力の1つは、なんと言っても大阪弁。
    商業言葉である大阪弁の、なんとも複雑豊富なニュアンスを持つ巧みな言葉であることか。
    本当に言葉が美しくて、特に商いの交渉場面は必見です。

    商いに生きたとはいえ、損得勘定のみを考えるではなく、常に「人」を大切にしていた多加の生き様は、いつの時代も人の心に響きます。

  • 大正から昭和にいたる大阪の寄席を舞台に、一からはじめた世界で、席主としてどん底からのし上がっていく「御寮人」多加の半生を描く痛快小説。
    最初は細やかな文体と大阪弁と寄席独特の用語が馴染みにくく少し読みづらかったのだが、慣れるてしまうと、上げ潮な展開もあってとても面白かった。
    山崎豊子さんらしく詳しい下調べに基づいていると思われ、寄席の世界についての描写もとても興味深かった。
    大阪商人の才覚とど根性があますことなく描写されるのだが、独特の大阪弁の言い回しが大変面白く、商魂の中にも和やかな雰囲気を醸し出している。
    多加の周囲でそれぞれ活写される登場人物もなかなか楽しい。儚い心を抱く市会議員の伊藤や息子久男との微妙な関係など、商売の合い間にみせる女性多加の人間味あふれる心の葛藤や、多加を助ける番頭のガマ口をはじめ芸人や客との会話など商売を彩るエピソードが盛り上がり、全体として豊かな人生を描き出せたといえよう。
    笑いを商売しているだけあって、物語全体としても大らかな楽しさに満ちており、ずっと続いていてほしいと思った小説であった。

  • 「暖簾」を読んだ方は是非セットでこちらもどうぞ。

    先代から継いだ呉服屋を寄席道楽に耽って潰してしまう、あまりにも頼りない夫を支えて大奮闘する女興行師の物語です。いっこうに商売に身が入らない夫に呆れ、いっそ道楽を本業にしたら働くかもしれないと一縷の望みを託した多加の勧めで寄席を買った夫は、冒頭で借財を残したまま妾宅で死亡します。控えめで大人しかった多加は他人の好奇の目をふりきるかのように、前作の「暖簾」父子もびっくりの気迫で金儲けに邁進します。

    金持ちになって見返してやりたいわけではなく、ましてや芸事が好きなわけでもない主人公は、ただただ反射神経だけで毎日を切り抜けていきます。そこには未来も正義も救いもあったものではないのですが、絶望している暇もないほどの爽快なスピード感です。そして何かに取り憑かれたかのように商売をする間も、人情の機微を忘れず、お客さんと芸人さんと使用人たちを大切にする多加には自然とお金が集まってきます。

    目まぐるしく飛び交う大阪弁は、えげつなくずけずけと言い合っているようでも見苦しくなく、テンポよく商談がまとまっていきます。大阪弁の威力に圧倒されること間違いなしです。「暖簾」に引き続き、生粋の大阪人を自負する著者の思い入れの強さを感じた作品でした。

    女主人公ということで、淡い恋心、息子とのすれ違い、息子が頼りにしている女中に対する嫉妬なんかもちょこちょこ挿んであるものの、やはりメインは女商人のど根性。細腕で采配をふるう多加を見るにつけ、頭下げて這いつくばって恥も外聞も捨てて、商売で身を立てていくとはどういうことかを、ひしと感ることでしょう。戦前の上方の寄席小屋や大阪商人の世界が生き生きと描かれていて、春団治、松鶴、エンタツ・アチャコなど、芸人さんが実名で登場しています。漫才・落語に詳しい方にもおすすめです。

  • 読了。

    朝ドラを見ていて、別の視点で吉本せいさんの生涯を描いている小説に触れてみたくて、読んでみました。

    モデルになっているとはいえ、フィクションだから、あることないこと盛り込まれてるはずだけれど、ものすごい苦労人かつ腹の座ったビジネスウーマンだったことは、きっと間違いないのでしょう。

    ボン育ちの旦那さんをなんとかしようと始めた寄席の席主の仕事。支えるつもりが、引っ張っていく人になり、未亡人になってからはますます商いに精を出して、落語から漫才へとお笑い業界に新しい風を吹き込んでいく。吉本興業が生まれ、大阪を席巻し、果ては東京にも出張っていく。そんな当時の彼女の勢いが、リズミカルな船場言葉のやりとりで生々しく伝わってくるし、そのBGMのように、大阪都心部の商都としての戦前の賑わいが描かれているのも興味深く、一気に読み進めました。
    男勝りに仕事をしていた彼女に、おそらく親しい人たちは、あまり女性を感じなかっただろうけれど、彼女自身は、時折心の奥底にある女性もしての心持ちの部分に気づき、その扱いに戸惑っていたと、山崎豊子らしいストーリー。

    朝ドラは、朝ドラらしくと、爽やかなストーリー仕立てにしているんだけれど、芸人さんをまとめる席主さんが、あんな爽やか路線一本で成功するはずない。いっそ、どろんとした部分も描きつつ、その中で奮闘した大阪の稀代のビジネスウーマンとして描くほうが、共感して観れるのになぁ。朝の時計がわりに見るテレビドラマにはそんなドラマティックなのは望めないのかしら。

  • 主人公多加の商売人魂、細やか且つ熱心な仕事ぶりに魅せられる。たまに見せる女としての一面、人間らしさ、それを振り払うようにまたも仕事に邁進する…人間の強さと弱さを見た気がした。
    描写が細かすぎるのか、どうにも文と相性が悪く、入り込めなかったところがある。題材、登場人物は魅力的だが、人を選ぶ本かもしれない。

  • 10

  • 途中までは楽しめました。ただ続きが気になるというような気持ちにならなかったので読むことを辞めました。

  • 山崎豊子さんの作品は日本語がとてもきれいだといつも思っていた。この作品は大阪弁が本当に丁寧に書かれていて、大阪の町中にいるような気分にさせられた。
    日本語の表現の美しさが好きで、過去には「二つの祖国」「白い巨塔」「沈まぬ太陽」「大地の子」「華麗なる一族」「女の勲章」などたくさんの作品を読んだ。これらのほとんどがドラマになったのでどれも観てきたが、山崎さんの作品は本で読むのが好き。

    この作品に関していえば、多加の強烈な強さで突き進む商いへの貪欲さが尋常でなく、読みながら絶えず引っ張られているような気にさせられる作品だった。
    通天閣を買い取ったり、エンタツ・アチャコを組み合わせたりと実際のできごとと、山崎さんの創作の部分とがうまく交わって、興味をそそられ熟読できた。

    私が小説を読むのが好きになったきっかけの作家さん。
    久しぶりに手に取って、幸せな時間が過ごせた。

  • 現在放映中の「わろてんか」の原作と聞いたような気がして読んでみたが、全然違う内容なことにまず驚いた。(原作じゃないのかな?)
    もしこれから同じ内容と思って読まれる方がいれば要注意。ところどころ似たエピソードも登場しますけどね。冷やし飴とか安来節とか。
    こちらの女席主・多加のほうが何倍も逞しい。そして死んだ夫のダメ亭主っぷりの凄まじいこと(笑)この時代の女性は忍耐強く我慢強かったのかもしれないが、いくらなんでもこれでは「ほなもうわてがやりますわ」となるのも頷ける。
    大正と昭和をど根性で力強く生き抜き、大阪の寄席興行を大きく育てた女席主。船場商人のコッテコテの大阪弁が痛快。
    恋心や息子への愛も封印し、商いだけに生きた彼女が戦後間もなくに始めたのは、芸人たちの借金を棒引きにして回ること。関東大震災のエピソードにしても、彼女の芸人に対する感謝と愛情が伝わってくる。
    戦後どうやって復興し、現在の吉本興行へと繋がっていくのか、この続編もあったらいいのにな。
    2018/01

  • 最近の小説と違って全般に淡々と書かれており、また、無理に深刻にもされていないので気楽に読めた。

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