華麗なる一族 (中) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1980年5月27日発売)
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感想 : 160
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  • 本 ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104133

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    中巻を読み終えて・・・・
    徐々に鉄平と大介の対立が深まっていき、また鉄平に不運の事態が次々と訪れる。
    父子の対立には、鉄平の出生に関する疑惑があるようで、読んでいくうちに大介の鉄平に対する態度が本当に冷たくなっていくのが分かる。
    また、本物語で特にイイ味を出しているのが美馬ですね。
    大介の懐刀でありながらも、どこか悪だくみをしている様子がありありと見て取れた。
    鉄平の高炉建設の説明を聞く箇所がありましたが、「大介は不気味なほど無表情に、美馬はプラモデルでも見るような無感動な顔付で、鉄平の説明を聞いていた」といった風に、大介と美馬の態度は読んでいて本当に戦慄が走りました・・・・

    下巻でどのようにこの物語が終結するのか、ワクワクしますね。


    【あらすじ】
    阪神特殊鋼の専務万俵鉄平は、米国企業からの増注契約をキャンセルされて危機に陥る。
    旧友である大同銀行の三雲頭取が多額の融資を了承してくれるが、その矢先、熱風炉が爆発するという事故が出来──。
    一方、万俵家の次女二子は、総理の縁戚と見合いをしながらも、鉄平の部下である一之瀬に惹かれていく。
    万俵家に同居する大介の愛人・高須相子が企む華麗な閨閥づくりの行方は……。


    【メモ】
    p323
    「窮地に立っている子会社に、親会社の阪神銀行としてあまりに冷た過ぎる…」
    「そうでしょうか?銀行家たる者は、それでいいのじゃないでしょうか。僕だって、その程度にしか、お貸ししないかも知れませんよ」

    はっとするような冷たさで云った。それは今日の夕方、父が自分に向かって投げつけた冷たさと酷似していた。
    鉄平の脳裡に、太平スーパーを冷酷極まりないやり方で潰し、流通部門を持っていない万俵商事に吸収してしまった銀平のやり方が思い浮かび、銀平が老獪冷徹な銀行家の父と重なった。

    「お前は、いつも銀行は嫌だと云っているが、どうしてどうして、見事なものだよ」
    鉄平は、自分と弟の間にある大きな距離を感じ、グラスをテーブルに置いて立ち上がった。


    p523
    「あなたって人は、流産で子どもを亡くしても、全然平気でいられるのね」
    詰るように言うと、
    「最初から子供はいらない、堕した方がいいと言っていた僕だからねえ」
    銀平は無感動に答えた。
    「まあ、なんて酷いことを言うの。私が流産したのもあなたのせいよ」
    「君が流産したのが、どうして僕のせいになるんだい?勝手に養生しなかっただけのことだろう。迷惑だよ、そんな言い方は」


    p592
    鉄平はこの一年あまり、全力を傾け、今一息もいうところに迫った高炉建設現場を一つ一つ愛おしむような熱っぽさで説明した。
    しかし石橋からの高炉建設現場は豆粒ほどにしか見えず、大介は不気味なほど無表情に、美馬はプラモデルでも見るような無感動な顔付で、鉄平の説明を聞いていた。

  • 上、中、下巻の感想です。
    作品名のとおり、華麗なる一族の話。
    途中で想像した結末とは大分違う終わり方でした。
    豪華な世界も良いけど、ドロドロとした部分も多くあり、自分は庶民がたまに贅沢するくらいがあってるなと。

  • 主人公に容赦なく試練の雨を降らせるのが、山崎豊子の小説なのを思い出した。
    人の二生か三生分の試練が鉄平の身に一時に降りかかる感じ。
    (というか実際、二人の人間が鉄平のモデルになっているようなので、単純に二人分以上の苦労を背負わされているのか)
    でも彼はなんら天地に恥じるようなことはしていない清廉潔白な人間なので、あまり心配はしていない。
    彼は逆境であればあるほど、底力を発揮する気がする。

    それにしても、大介や美馬、相子らの、権力者に対するマメさ加減にはほとほと感心する。
    相手が何をしてほしいのかを瞬時に読み取り、朝から晩まで情報収集し、機を逃さずに駆け引きし、なおかつ女とも精力的に密会するとか…
    これぞたくましい戦後の政治家。
    弱い奴は喰われる。シンプルな弱肉強食の世界。
    嫌いじゃない。

  • 以下、上中下巻で同じ感想です。

    最近、「近過去」のドキュメンタリーや小説が面白い。
    人間の織りなすドラマの本質は古今東西いつも変わらないのかもしれないが、舞台設定として、いわゆる「ザ・昭和」は実は1950-60年代、すなわち昭和30年代前後であり、もちろん、働き方や家庭生活など今ではありえないようなことも多いが、同時にやっぱりいまだに、ということも多い。そしてテーマとなる政治や経済のトピックが、これまた日本はこの数十年間何をしていたのか、というくらい共通なのである。

    「華麗なる一族」の物語は、行政の手厚い保護と支配の元にあった銀行の経営統合という壮絶な戦いを縦糸に、昭和な家長制と血縁の闇を横軸に進む。

    一番の迫力は、ここで取り交わされるさまざまな会話。一歩間違えれば追い込まれる神経戦の連続。経済に関する記述も非常に正確で、企業乗っ取りといえば流行りものを含めそうとう雑なものも多い中、リアリティは今なお色褪せない。

    スカッとしないことこの上ない読後感ではあるが、だからこその読み応え。

  • 2007年のドラマでは長男の鉄平が主人公で描かれていたので、原作でも父である大介よりも鉄平寄りで読んでいます。中巻は阪神特殊鋼への次から次へと襲いかかる危機に何もここまで...とすら思ってしまいます。家族の歪みがあちこちで軋んできている印象を受けます。大介の野望はどうなるのか...下巻に続きます。

  • オーディブルにて。
    この作品で山崎豊子さんの著書を初めて読んだ。私の知っている池井戸潤の「半沢直樹」は元を辿ればこの作品だったのか?と思うほど、銀行を舞台とした融資・合併のビジネス展開が面白い。
    それにしても鉄平が気の毒で気の毒で…!何も後ろ暗いことのない良いやつなのに、なぜこんなにも不幸が降りかかったり嫌がらせされたりしなくてはいけないのか。下巻で巻き返してくれることを願う。

  • ドロドロとした動きが激しくなってきたなーと思いました。
    崩れていく予感がしています。
    どう崩れていくのか、立て直せるのか…
    どれもタイミングがすごく悪い長男だなぁ…と思っています。

  • 200505.上巻に引き続き。
    案の定苦境に立たされる鉄平。苦境への道筋がうまい。
    多方面に気を配っているつもりでも、さらに大きなコングロマリットや、事故といった災害など、力及ばない角度から突いてくる。
    大介側も、いろいろと苦慮しつつも状況を踏まえた上での一手を打ってきた感じが、ちゃんと物語をして積んできているなーという感じ。
    次が最終。どんなどんでん返しの結末になるのか楽しみ。

  • この作家は万俵大介のように冷徹な人だな。話は面白いのだけど、好きになれそうな人物が出て来ない。鉄平や三雲は比較的好人物に描かれているけど、山崎節に感化されると何だか青臭いように見えてしまうから不思議だ。

  • 自分の銀行のためなら、長男の会社でさえ見放す冷徹な銀行家、万俵大介の態度は、そら恐ろしい。
    仕事に対する暑い想いを通そうとする長男の鉄平を心のなかで応援しつつ、ハラハラしながら読み終えた。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまさき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

山崎豊子の作品

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