- Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104157
感想・レビュー・書評
-
フジテレビ開局50周年記念ドラマとして放映していたドラマの原作本である。私が山崎豊子作品を読むのは昨年の「華麗なる一族」に引き続き2作目。
元大本営参謀の壱岐正が第二次世界大戦後に軍事捕虜として旧ソ連に11年抑留された後、商社に途中入社して活躍していくというストーリー。
抑留の悲惨な描写はドラマでは冒頭に軽く触れただけだったが、原作本では第一巻の前半を占め、非常に生々しく、読んでいて苦しくなるほどである。
旧ソ連側は、壱岐達敗軍の将に対して戦後の国際裁判で有利な言質を得ようと迫るものの、国のためを思い妥協しない。その態度が悲惨な抑留生活を生むのである。戦争を知らない世代の私からすると「何故国のためにそこまで突っ張る必要があるのか」と考えてしまう。旧ソ連の意向通り適当に話を合わせれば、すぐにでも釈放されて家族のもとに帰れるのである。何度もそのチャンスがあり、時には同じ建物に妻子が訪問してきたこともあったのだが、ことごとく棒に振ってしまう。私ならそんな真似は出来ない。国のためより家族のためを思いたいものだ。私が戦中に存在していれば、軍人にはなれなかっただろうし、非国民と呼ばれていた類いかも知れない。
後半は商社編。壱岐は40代半ばにして商社のイロハを一から学んでいくのだが、活躍は次巻以降に期待である。
それよりも、登場人物の中で私が最も好きなのが近畿商事社長の大門一三。仕事に対する精力的な姿勢と豪快で気持ちの良い性格は字面で見ただけで惚れ惚れしてしまう。大本営参謀時代に培った組織力を見込んで、商社実務素人の壱岐を採用したのは大門である。
その大門の豪快な言葉を引用してみたい。
大門の娘
「お父さんって、どうしてそんなに働くの?オーナー経営者じゃないから、儲けたって自分のものになる訳じゃないし…」
大門
「わしは損することが嫌いや、商売で損することは罪悪やと思うてるから、一体、人間一人の能力でどれだけ儲けられるか、地球を駆け巡って試してみたいのや」
→まさにゲームを楽しむ少年である。
大門の妻
「あなたって人は化け物やわ、人並み以上に精力的に仕事をし、女遊びも人一倍し、家のことなど放ったらかしやのに、ちゃんと子供の気持ちを掴んで、なんて人かしら…」
大門
「なんてこともない、要は本気で仕事をし、好きな女遊びでリラックスし、家へ帰って時間があったら子供を可愛がる。至極単純で原始的なやり方をやって来ただけのことや。」
→男性ビジネスパーソンの多くがこの生き方を理想とするなのではないだろうか。と思ったが、最近はそうでもないか。そこそこに仕事をし、そこそこに人生を楽しみ、家庭を大切に考えるビジネスパーソンが増えており、現在は少数派かもしれない。実際に私もそうである。
綿糸市場の仕手戦で大惨敗し5億の穴を空けた金子綿糸部長の処遇について、壱岐に語った言葉
「人が財産という点では、軍隊も商社も本質的に似ているが、人材の値段が違うんやから、賞はともかく罰では違うてくる。軍隊は一人一銭五厘で集めて来られるから、失敗した奴は腹を切らせるか、階級剥奪してどんどん新しい兵を補充すればこと済むが、企業は限られた資金と扶養家族の手当まで上乗せした人材をフル回転して儲けんことには成り立っていかんのやから、一回や二回失敗した言うてクビにしたら、効率悪いこと夥しいし、他の社員も萎縮してしまう。一枚の辞表でことが済むと考えるのは安易過ぎる。損をしただけ、どうしたら取り返せるか、それこそ、まだまだ血の小便や、蟻地獄の苦しみやろ。けどそれをやりおおせ、次に儲けさせたら、金子の取締役は請け合いや。企業には潔い玉砕は許されんのや。」
→従業員を大切にする、まさに日本的経営の好例である。株主などのステークホルダーのため短期的に結果を求めるアメリカ型経営が、日本でも持て囃されて久しいが、失敗した者に挽回のチャンスを与えるような器の大きい大門社長の爪の垢でも煎じてみてはいかがだろうか。
おまけに、繊維担当役員の一丸常務が壱岐と初対面時に語った言葉も印象的であった。
「しかし人間、順応の動物や、商社マンいうのは仕事を覚えたら最後、止められん面白い仕事ですわ」
→自身の仕事について、こう語れるのはビジネスパーソンにとってこれ以上ない喜びではないだろうか。私もいつか、今の仕事でこう語れると良いのだが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
極寒のシベリア収容所で11年生き抜いた元、日本軍大本営参謀、壹岐正が無事に日本へ帰還し2年を経て、近畿商事に嘱託として勤務することを決心するまでが1巻の内容である。著者の取材が正しければ、シベリア収容所とはこの世の地獄のようなところである。
-
沈まぬ太陽や白い巨塔にならぶ、全4巻の大作でここでも山崎豊子の取材力には感嘆するばかり。前半は、シベリア抑留の話で、後半は元軍人が商社に勤める話となっており、シベリアでの強制労働、砂漠での石油開発などの話が中心となっている。個人的に、沈まぬ太陽ほど主人公に感情移入はできなかったが、前半も後半も主人公が生きる世界を深いところまで描いているので、話の内容には引き込まれる。山崎豊子の中でははずせない作品。
-
半分以上を戦後のシベリア抑留中の話が占めている。重く暗いシベリアでの話の中に、急遽現実の商社の話が差し込まれると、同じ日本且つ戦後十数年ということが信じられなくなる。
商社マンとして歩み始める壹岐の動揺と葛藤が描かれている。 -
予約していた一巻が入ったと図書館から連絡があり借りて読んだ。
先日のテレビ放映よりもシベリア抑留の悲惨な局面の描写が多く読み応えあり。一巻の半分以上がシベリア時代の回想シーンであった。主人公の壱岐正が46歳で大本営参謀から商社に就職して、戸惑いつつも、情報収集して戦略を立て実行してゆく本質的なプロセスには違いがないことに気づいてゆく流れがとても面白く読めた。二巻以降は防衛庁向けの次期戦闘機の納入の話が佳境にはいる。図書館の連絡を首を長くして待っているところである。 -
シベリアでの拘留生活の厳しさ、歴史を知ることが出来た。商社で働くものとして、世界の動向を把握し、日本の国益になり、そして世界の発展に繋がる仕事、一つ作り上げたい。
一言よく人を生かし、一言よく人を殺す
自分と会社の10年後を考える
仏教の根本は、共生の精神。自分のためだけの生き方ではなく、自分の生き方が人に感銘を与え、人に幸せをもたらせる自他共に生きる共生の心が存在しなければならない
生きて歴史の証人たれ -
戦後直後から11年間シベリアで捕虜になりその後、帰国してからは商社に勤めだす。
主人公が回想するシベリア抑留の悲惨さと、商社マンとして社会の中で闘っていく姿に、時代の流れや人々の気持ちの揺れに考えさせられるものがある。
過去(シベリア回想)と現在(商社勤務)の緩急をつけた表現がみごとである。 -
レビューは最終巻にて。
-
さすが、山崎豊子。やっぱおもろいわ。
若くして大本営参謀となり、終戦後長期間にわたりシベリア抑留された主人公の壱岐が、商社から誘いを受け商社マンとなった話。
本人は二度と軍にかかわらないという強い思いから、防衛庁への就職の斡旋も固辞をするも、次世代戦闘機の受注戦争に巻き込まれていくあたりの葛藤がなんともいえん。
このまま一気に読み進めるでぇ~。 -
伊藤忠の実在の人物がモデル。
今とは時代も違いますが、商社に対するイメージが変わりました。
一巻は、主人公のシベリアでの過酷な生活の描写も多いのですが、怖いので飛ばしてしまいました…
長編だからとなかなか読み始めていなかったけれど、読み出したら止まりません。
Dec, 2011 -
話でしか知らないシベリア抑留の一面を見られた。良くも悪くも、当時と比較してみると、今の日本は国民一人ひとりの方向性がばらばらになってしまったのかなと感じる。
-
ドラマより面白い。
-
男たちのたたかいですね
-
取材力に脱帽。今まで読んだ山崎豊子作品で一番かも。
-
シベリア抑留時代の描写が壮絶。過酷な状況を描くのは作者の真骨頂か。
参謀の生き方にも惹かれる。 -
テレビドラマ版ではあまり詳しくなかったシベリア抑留編。
まぁ描写的にはなかり悲惨で、想像するに耐え難いぐらいの描写の連続だった。
しかし、シベリア抑留こそが、後に商社の世界で行き続ける主人公壱岐正の
大きな糧となったのではないかと思う。 -
ドラマから半年。
やっと読み始める。
ボリュームと重厚さのわりに、読みやすい。
ソ連での抑留生活が、ずっしり。
まだ1巻だけど、ドラマはよく話を表現していたようです。 -
初・山崎豊子作品。
噂に聞く「現実」のずっしり感と全4巻のボリューム感に、手に取るのを躊躇してましたが、読んで正解。
すごかった。迫力。
モデルと思しき企業の実際と照らし合わせて、もっと悲劇的な結末を想像していましたが、思ったより不幸じゃなくて、ほっとしました。
シベリア抑留のくだりは、想像の及びもつかない過酷さで、辛い。
だからこそ、商社マンになって出世の階段を駆け上がってからの生活とのギャップに、人の一生のドラマを見た気がします。
商社入社後の話については下手なビジネス書より「仕事を成功させる」とはどういうことかが分かると思います。
具体的な手法は、時代が違うにしても。
本質は時代を超えて褪せないけれど、やっぱりところどころ時代を感じる。
テレックスって、なんだ…? -
壮絶なシベリア抑留生活・・・ほんまにすごい時代やってんなぁっと感じさせられる。 これからの展開がすごく楽しみ!
-
03.3.5
-
昭和色を感じたくて読み始めた。生活描写が少なくて、意外と昭和色薄い。
-
元陸軍参謀の壱岐正の生き様を通し、シベリア抑留の苦悩、
そして再就職先での近畿商事にて熾烈な商戦の暗部を描く。
前半のの1巻・2巻で、シベリアでの強制労働、
後半の3巻・4巻で砂漠での石油開発といった、
二つの「不毛地帯」を描いている。
二つの祖国、大地の子と合わせて、山崎豊子の戦争三部作と
言われる中の一つ。沈まぬ太陽を読んでから、二つの祖国を
読んだので、次はこれでしょうということで、読み始めたもの。
かつては商社マンの必読書とも呼ばれたというこの本。
一応、俺も商社マンの端くれとしては、感じるものもありました。
繊維商社から始まった近畿商事が重工業化を図っていますが、
俺の会社も分野が違うところもあるけれど、同じような
構造を抱えています。
社内各部門での風通しがよくないところも含めて。
もちろん、壱岐の視線とまだまだペーペーの俺の視線は
違うんだけどね。
とは言え、まだまだモノを買って売ってに毛の生えた程度の
ことしか出来ていない商社マンの俺としては、
耳の痛いところもありました。
前半のシベリア抑留のところでは、ただのキーワードとして
しか知らなかったシベリア抑留のことを具体的イメージとして
知ることが出来ました。
それは中国残留日本人孤児だってそう。
旧満州に終戦時にどれだけの日本人がいて、
どのようにしてその地を追われていったのか。
その歴史の一端をしっかりと心に刻む必要があると思います。
http://teddy.blog.so-net.ne.jp/2009-01-23 -
僕が読んだのは昔の版なので、全4巻。
この1巻の厳しいシベリア抑留の話を読破できるかどうかで、最後までいけるかどうかの8割が決まるのではないだろうか?
今年の連休に西新宿の戦没者を慰霊する平和祈念館を訪問してシベリアで実際に使われていた物を見たり、没した人たちの名簿を観ていただけに、心に重く迫ってきた。。
戦争は本当に嫌だね。。 -
沈まぬ太陽でとても感動したので、もう一冊と思って山崎豊子の作品で手にしたのがこれ。
ただ、沈まぬ太陽が自分の中で大きすぎたのか、いまいち入り込めず、第一巻の途中で挫折してしまいました。今度また機会があったら読んでみたい。 -
実家にあった紙が茶色くなってるようなので読んでいます。
読みきれるかな・・・