- 本 ・本 (614ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104218
感想・レビュー・書評
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<旅>
上/中/下 三巻構成最後の下巻は,2024年8月上旬JRの青春18きっぷ を使って京丹後の夕日ケ浦木津温泉駅までの往復列車旅(同温泉浜詰海の家での音楽ライブへの出演目的)の途中で完読してやろうと計画。まだ一ページもめくっていないこの本を,保冷バックに入れた缶ビール及び海水パンツと一緒に大きなリュックに入れて出発したのであった。
本書は約600ページ。普通は1ページを1分で僕は読むのでまあこの旅でなんとか読み終えるだろうと考えた。各駅停車での旅は片道7時間強掛かる。加えて,万一途中で読み終えてしまうと活字中毒の僕は大変なパニックになるので更に『網走発遥かなり』島田荘司 もリュックに詰め込んだ。もちろんどちらも文庫本。
本作品 物語の中に昭和天皇その人が出て来ていて話をしている。小説でこのように本モノ設定の天皇が出て来るのは僕初めて読んだ。 件の真珠湾奇襲攻撃に関する日本の正式宣戦布告遅れは,外務省のオペレーションの問題だったとばかり僕は思っていたが,この本を読んでいるとどうもそうでも無い可能性も否定できないなぁという心境になってくる。
ところで話は変わるが,バーコードがナンバープレートになっている車をみた。ネットで観た映画だったか。忘れたw。僕はなるほどなぁと思った。バーコードは機械には認識できる(機械には覚えられる)けど,人間にでは出来ない(人間には覚えられない)のだ。ああいいかも、と思った。あれ,何がいいんだろう。そうそう覚える必要が無いところが良い。覚えない=忘れないのだ(笑) 電話番号だって数字だから覚える事が可能なので覚えていない事に負の意識を感じる。元より覚えられる訳がない記号ならそういう「負意識」は無いのだ!
さて列車旅での読書の結果は…乗り換えが頻繁に発生する列車旅というのは存外に本など読みふける事は出来ない。,と云うことが分かった。『二つの祖国』のページは半部にも至らず,であった。旅から帰着後もなかなか読みは進まず,ついに読み終えたのは2024.……なのであった。やれやれ。
本書後半に,(件の裁判における)判決文の朗読は,土,日の休日を除いて,六日目に入り… という下りがある。はて戦後こんな早い時期に土日が休みであったのだろうか。もちろん欧米が主導権を握る裁判だから欧米では…と云うかもしれないが,流石の欧米も戦後すぐから全面的に土日休みだったのだろろうか。
ちょっとこれはネットを使っても調べつくすことが出来なくて困ってしまってモヤモヤしている。AIに訊くと「戦後すぐに裁判所関係が土日休みだなんてことは有り得ない!」と断言されてしまった。市民の為のお役所なんだから土曜は絶対に仕事です!と云い張ってました。まあもちろん山崎豊子がこの小説を書いた時にAIなんぞはまだ影も形も無かったでしょうけどw。さて,どなたか真実を教えて頂けると僕はかなり嬉しいのです。
また 535ページにはこの東京裁判でA級戦犯不起訴となった人々が何人か記されている。岸信介,児玉誉士夫,笹川良一,大川周明こいつらもちろん生き残った。そして1959年生まれの僕だってテレビや雑誌で見た事あるし聞いたことある連中だ。実物を見知っているという事で言うと みんな或る意味いわく付きの悪人達じゃないか。そうかこいつらは先の戦争の途中から もう権力を持って悪事を働いていたんだな。
終盤になって気になる言葉使いが有った。それは575ページの「祖父上」だ。前後文は「天羽家の墓に詣り,祖父上に頂いた刀が戦後も無事で・・・」だ。父上や母上 あるいは叔父上アドと云う具合に「上」を尊敬語的呼び方で沢山使う。でもしかし祖父上 はてこれはいったいに なんと読むのだ。そふうえ か?確信はどこにも無いので調べた。なんといくつかの異なった応えがを見つけてしまった。以下1.- 3.原文ママ。
1.「祖父上」は「そうそふ」と読み、「曽祖父」を意味します。
2. “祖父上”の読み方と例文 読み方:そふうえ 割合:100%
3. 祖父上は"そふじょう"と読みます。 普通の読み方でないため、わからない人もいるでしょう。
実はこの「祖父上」が記されている前のページに「祖父からもらった刀」との記述もあるので意味として祖父上は祖父のことで間違いないのであるから。まず1.は全くの出鱈目。これはここニ三年のネット,特にグーグルの勝手な解釈/記述であるが,ましてAI Geminiなどが登場してからそれがエスカレートしていると僕は思う。奴らはどう云っても所詮は英語圏の連中なので日本語がどうなっていてもチェック能力は無いし,またどうなっていてもまったく気にしてなどいないということ。やはり敗戦国はやなもんだねへ!?(笑)
ここで本書に関して現代の作家や出版や読書の事情と比べて少し思う所を書いて置きたい。
その頃はネットなどと言うイタヅラに時間を消費するモノはなかったので、この様な濃い内容の長い小説を皆が読むことができたのだろう。
今は 財布は忘れてもスマホは忘れない程 みんながスマホによる情報収集や音楽鑑賞や映画やドラマやマンガなどに夢中になってしまっている。こういう今となっては本書の様な濃い長編はもう読まれることも書かれる事も無いだろう。
余談だが先日朝の出勤時にスマホは持ったが通勤定期カードを入れた財布を部屋に忘れてしまい、家迄取りに戻る羽目になった。そこで思いついた根本的対策は他でも無く,スマホに定期の機能を入れる事。だがしかし名鉄の場合多分それは不可能なのだろうなー。お客様の便宜は二の次な会社だものなー名鉄は -
ものすごく難しいテーマ。
昔は外国人が珍しかったはずだし、日本人って(自分も含むが)知らないものを怖がるというか、率先して受け入れるのが苦手なんですね。
当時のことは伝聞でしか知らない世代ですが、今はどんどん外国人の方が日本を訪問され、また居住され、同じ職場、同じ学校でともに過ごすことが増えています。
なのでもっともっと受け入れる度量は大きくなってるだろうなと思います。
今回のテーマは日系二世が太平洋戦争に突入した時に、アメリカではどんなことが行われ、 また日本においてはどうだったか、どちらの国にいても敵国の人だという風に見られ、自国の人とは差別を受けたのだそうです。
それでも父なる国、母なる国と双方の国を思い、自身ができる最善解を見つけ出そうと努力する、素敵な日本像が描かれています。
東京裁判ということも言葉は知っていますが、こんなに長い歳月を掛けて、いろんな言葉に翻訳されて、戦勝国の都合の良い形になっている部分もあるとは思いますが、何とかけじめをつけて戦後復興に踏み出したのだとわかりました。
日本人としてもっと知っておくべきだと思いますが、なかなか興味を持つのが難しい。私自身も年齢を経てからようやくこの分野に興味を持ちましたし。若い子達にもどうすれば知ってもらえるのだろうか?という部分もありますが、この本なんかは最適ではないかなと思います。
中学生には早いかもしれませんが、息子にも読ませてみようかな。ー -
文句なしの5スター。著者のこの作品に対しての思い入れと狂人な意志には感服する。これを書ききるまでにどれほどの取材に行きと資料を読んだのか計り知れない。
戦争についての日本側からの太平洋戦争ではなく、日系2世のアメリカ側からの視点の作品。これまでと違った隠された日本人目線。このWW2は日系二世なくては語れないくらいの戦争だったのではないか。
日本側からの歴史では焦点を当てなかった、俘虜への虐待と戦地住民へのサディスティックなまでの虐殺。
アメリカは日本の敗戦意志をくみ取ってのハーグ条約違反の2機の原子爆弾後の現実をどうみているのか。日本がオフィシャルに白旗を上げないことを理由として人体実験をしたいがためのあとづけの理由だったのではないか。
戦勝国が敗戦国を裁く一方的な裁判は的確だったのか。
そしてその場所での戦勝国からのあからさまなトイレでのracial classification 。
父なる日本と母なるアメリカの二つの視点だからこそ見える矛盾とやるせなさ。
日本のトップが導いた戦争という決断がこれほどまでに、関係のないものをフィジカルにそしてメンタルに引きちぎっていく。天皇万歳と最後まで謳った日本のトップたちの天皇神説のような宗教的なにおいが怖くなる。信仰は人を救いもし、人をコントロールもし滅亡もさせる。
信仰にコントロールされずに自分の意志と考えで行動をあらたまなければ同じことが繰り返されるかもしれない。
今の平和な日本人に対しての警告と受け止めなければいけない。 -
東京裁判のいちばんの山場。でも、ちょっと読むのが辛かった。
ケーンの真っ直ぐ過ぎる人柄も重かった。もっと、要領良く生きられたなら、良かったのに。
被爆したナギコの最後までも辛かった。
戦争とはこういうものなのですね。
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二つの祖国を持つ日系二世が見た東京裁判とA級戦犯。
アメリカはその後、強制収容の過ちを認め賠償し、オバマ大統領が原爆ドームを訪問したが、ヒロシマ、ナガサキの公的な謝罪はあったか。
そして日本の戦後賠償、さらには戦後教育は正しかったか。
「大地の子」「不毛地帯」を経た上での「二つの祖国」のラストに過去と今を考える。 -
日系二世の題材は初めて読んだ。
米国への移住自体が苦労だらけであったはずなのに、太平洋戦争開戦と同時に敵国人、ジャップと罵られて強制収容所へ。収容所内では米国への忠誠を誓うかなどのテスト、それによる待遇の変化、更に戦地での兄弟との遭遇、そして戦後の翻訳員としての苦難。かなりのボリュームの三冊構成であったが、天羽賢治1人の人生を語るにおいて無駄がない作品だった。極東国際軍事裁判の描写も、かなり難解で読み進めるのにかなり時間を要したが、史実に基づき事細かに再現されており当時の裁判がいかに不平等であったかの現実を突きつけられた。
最後まで息つく暇のないとても濃い1作。 -
なんと救いのない。
そういう歴史があるのだと知らなければならなかった
著者プロフィール
山崎豊子の作品





