- 本 ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104287
感想・レビュー・書評
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1.著者;山崎豊子さんは、小説家。大阪の老舗昆布店に生まれ、毎日新聞に勤務後、小説を書き始めました。上司は作家の井上靖氏で、薫陶を受けています。19歳の時、学徒動員で友人らの死に直面。「個人を押しつぶす巨大な権力や不条理は許せない」と言っています。社会派小説の巨匠と言われ、権力や組織の裏側に迫るテーマに加え、人間ドラマを織り交ぜた小説は、今でも幅広い世代から支持されています。綿密な取材と膨大な資料に基づく執筆姿勢はあまりにも有名です。「花のれん」で直木賞を受賞。その後、作家業に専念し、菊池寛賞や毎日文化賞を受賞。
2.本書;御巣鷹山篇は、日本航空が起こした飛行機事故をモデルに執筆。1985年8月、東京発大阪行ジャンボジェット機が群馬県の御巣鷹山に墜落した事故。520人もの尊い命が犠牲になりました。遺族はもちろん、それに関わったすべての人達のドキュメントです。壮絶な墜落現場、肉親の遺体を狂気の如く探し求める遺族、補償交渉の非情な現実・・・を緻密に書いています。
3.私の個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
(1)『第3章 無情』より、「(52歳の男性が墜落直前の機中で書いた遺書)・・・きのうみんなと食事したのは最後とは、何か機内で爆発したような形で煙が出て降下しだした、どこへどうなるのか・・・本当に今迄は幸せな人生だった、と感謝している」「(主人公の恩地)遺書の文言を思い返すと、涙をこらえる事が出来なかった・・・その文字から滲み出ているものは、強靭な意志と、家族に対する限りない愛情、人間の尊厳に満ちた惜別であった」
●感想⇒落ちていく機内で書かれた遺書の筆跡は、上下左右に大きくブレながら、記されていました。私は、これまで大きな事故に遭わずに生きてきました。もしこうした事故に直面した場合を想定すると冷静に遺書が書けるかどうか自信がありません。故人の恐怖の中での“家族への想いと感謝”に感銘あるのみです。心中より冥福をお祈ります。ちなみに、遺書の全文が、新聞で大きく報道され、多くの国民に深い感動を与えたそうです。
(2)『第4章 真相』より、「(記者)事故機が、・・・羽田へUターンすることに固執した背景には、慣れた空港へ戻ろうというより、他へ降りた場合、乗客を運ぶ代替機を飛ばさねばならず、経済的にマイナスになると、機長が考えたからではないですか」「(大蔵省)『(梱包や残骸回収)そんな費用は出せない、タダで済む自衛隊に頼め』と大柄に命じた」
●感想⇒会社には3M(人・もの・金)が必要です。中でも、社員給与・株主配当・納税等の責任を果たす為に、金銭が重要な事は理解できます。資本主義の宿命です。しかし、私は“企業は人なり”と言われるように、人が最も重要と考えます。故に、人命尊重の観点で、安全保証は経営責任です。本書の航空会社では、人命よりも金銭を重んじる体質が社内に蔓延していたと思います。一方、官庁の体質にも問題ありです。日本の高度成長は、官民の護送船団方式のお陰だと言われるように官庁の役割は絶大でした。しかし、報道によれば、❝2020年度の税金無駄遣い2108億円❞とあります。官庁の行動はどこかおかしいと思うのは私だけでしょうか。御巣鷹山の大惨事は、航空会社はもとより業界を監視する官庁にも責任の一端ありです。猛省とこうした悲惨な事故を二度と起こさない信念と対策を講ずる事が官民両トップの責務です。 (3)『第6章 償い』より、「(遺族)『死んだ娘の命の代償を、よくも退職金なみに云うなど、あんたいう人は・・・』怒りに声が震えた。これが二言目には誠心誠意と、繰り返している国民航空の偽らざる本音かと思うと、そんな会社の飛行機に乗って死んだ娘が憐れで、涙が込み上げた」「黒塗りの車の中で、三人の娘の名前すら、覚えて来んかったのか、何が誠心誠意や、人の娘を三人も殺しておいて、この人でなしめ」「会社大事で、遺族を馬鹿にするのか、そんなことは絶対許さんぞ」
●感想⇒遺族が言うに言われぬ屈辱を受けた心中を察すると、かける言葉がありません。会社の対応に厭きれるどころかこんな所で、日夜頑張っている社員が気の毒に思います。社員のやりがいとは何だろうか?と同情のみです。会社の立直しは容易ではないでしょう。
4.まとめ;会社に係る事故で遺族に対応するのは、人事総務部門です。いくら謝っても遺族は許しません。罵倒され、土下座させられ、対応者の苦労は押して知るべしです。役員達は、悲惨極まりない事故を起こしても、担当任せで、時間が解決するとばかりに、だんまりで時の流れを待つばかりです。何かやりきれなく、怒りをどこにぶつけたらよいか分かりません。フィクションとは言え、入念な調査を重ねて執筆した本書に、山崎氏の執念を感じます。“歴史は繰り返す”と言いますが、決して繰り返してはなりません。世の経営者には、役割を再認識する為にも本書を読んでほしいと思います。悲惨な飛行機事故の実態を風化させない為に、この作品は後世に語り続けてほしい一冊です。(以上) -
2001年(発出1999年) 512ページ
1985年の日本航空123便の墜落事故。当時中学生だった自分にも、忘れられない出来事として記憶に留められています。
凄惨な墜落事故現場の描写、損傷した遺体の描写など、ルポルタージュを読んでいるようでした。現場の過酷な状況下で、遺体の検案や整復を行った医師や看護師には頭が下がる思いです。
そして、愛する家族を失った遺族の、深い悲しみや激しい怒りが伝わってきます。
ダッチロールしながら急降下する飛行機の中で、愛する家族へ向け書いた遺書。当時、多くの人の涙を誘いました。
実名で登場する美谷島さんと健ちゃん。涙が出ます。
中東に単身赴任中に、妻と子ども3人を一度に失った男性。
夫を失い、さらに家業も倒産に追い込まれた妻。
身元不明の部分遺体の中から体の一片なりとも探そうとする家族の執念と愛情。
家族を失い、自分の人生は終わったと、お遍路の旅に出る男性。
日航機墜落事故には陰謀論の噂があります。作中ではわずか数行の部分でした。陰謀論を初めて知ったのは、フライトレコーダーの開示を求めた訴訟がきっかけでした。請求は棄却されています。そして、相模湾に沈んだ機体の一部を引き上げないことなど、確かに素人目にも腑に落ちないことがあります。森永卓郎さんの著書でも触れられています。複雑な思いにとらわれていました。
しかし、陰謀論はともかく、物語は人間ドラマでした。事故は人災によるものと結論づけています。国民航空の安全を蔑ろにする社内体制が招いたことに他ならないでしょう。飛行機は安全な乗り物で、私が昔聞いた話では、毎日搭乗しても事故に遭う確率は二千何年だかに一回(今調べると438年に一回とか666年に一回とか)と言われていました。そして、安全な空の旅で楽しいはずだったフライトが恐怖に変わった瞬間。乗客の恐怖がどれほどだったかと思うけれど想像もつきません。残された遺族の悲嘆。それでも、2度とこのような悲劇を起こさせてはならないと、遺族会を立ち上げ、前に歩き出した家族の心の強さは尊敬に値します。
来年で事故後40年。改めて、亡くなった方々のご冥福をお祈りします。
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5巻にて感想。
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以下、背表紙の文言。
ついに「その日」はおとずれた。航空史上最大のジャンボ機墜落事故 犠牲者520名
遺族係となった恩地が直面する想像を絶する悲劇
今回の内容は読んでいて、すこしキツかった。損壊遺体の描写が多く、ホラー映画を見ている感じがした。
墜落直後に捜索にあたる人達が目にする御巣鷹山に広がる、おびただしい数の損壊遺体の数々。はげしく死臭漂う現場。
バラバラに成った遺体の一部を少しでも多く集めようと、たくさんの棺を開ける遺族。一度では気がすまず、何度も遺体収容所を訪れる遺族。
堂本社長は遺族の家を訪ねるが、罵倒され、水をかけられたり、墓前で土下座をさせられたりする。
1・2巻に出てくる堂本を見ていると「身から出た錆」だと思ったが、WiKiによると、堂本のモデルとなった高木養根さんは、個人の資格で遺族への慰問行脚をしたほか、毎夏群馬県上野村の御巣鷹の尾根に慰問登山を続けてる等、作中の人物とは大きく異なるようだ。
また、恩地元のモデルとなった小倉寛太郎さんは、実際には遺族係はやっていない。
相変わらず、身の保全しか考えない行天が出て来て、恩地に突っかかり、憎たらしい限りだが、行天のモデルはいないようだ。作者が考えた架空の人物のようだ。
本巻はドキュメント形式のような構成をとっているが、あくまでフィクションの物語なので、事実とは大きく異なることもあるようだ。
とはいえ、山崎豊子が綿密な取材をもとに、亡き遺族の無念の想いに、報いたい一心で綴った本書は忘れてはいけない警鈴の書だとおもう。 -
ノンフィクションの巣鴨山墜落事件。
モチーフでも何でもなく、一部実名でこの物語を描いたところに、山崎豊子の鬼気迫る何かを感じた。
正直読んでいられない。
被害者や遺族はもちろん、航空会社のスタッフ達も可哀想だなと思った。
会社の人間が責められっぱなしだが、誰のせいにしても不幸な結末しか生まないこの事態に、一体誰がどのように責任を取れというのか。
読んでて鬱になりそうな内容だった。
今こうして自分が生きている事、自分の周りの人たちが生きている事に感謝しよう。
そして、二度とこのような凄惨きわまりない事故が起こらないようにしてほしい。。。
はぁ、読んでてとても疲れた。 -
85年夏の御巣鷹山の日航機墜落事故は自分にとっておそらく物心ついて初の大事件だった。その大事件をこうして改めて活字で読むと悲痛のひとことに尽きる。事故現場と処理の悲惨さ、遺族の無念さ、加害者である日航の遺族対応における心労。当時小学4年生だった自分には想像し得なかった情景が延々と綴られ、時に涙をこらえて身体が震えた。痛々しい箇所は多々あるが、本作は小説として佳作であることはもちろん、大事故のリアリティを極限まで追求した極めて優れたルポルタージュとして非常に読み応えがある。
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2019年11月24日、読み始め。
2019年12月15日、151頁まで読んで、中断。
内容が重すぎて、娯楽としては読めず。-
seiyan36さん
こんばんは。
いいね!コメント!有難うございます。
「沈まぬ太陽」いいですね。
数十年前の怒りと感動が今も湧き...seiyan36さん
こんばんは。
いいね!コメント!有難うございます。
「沈まぬ太陽」いいですね。
数十年前の怒りと感動が今も湧き上がってきます。
やま2019/11/25
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世界最悪・最大とまで言われ、520名の死者を出した御巣鷹山航空機事故を取り上げる本巻。航空機の安全神話は崩れ、企業の緩慢体質も明らかになった。
責任の所在を明らかにせず、自らも責任を取ろうとしない経営陣(表面上は辞職したが、ほとぼりが冷めた後は別のポストにつこうと画策している)の姿勢は今でもいろいろなところで罷り通っているように思うが、やはり情けない。権力は人を狂わせてしまうものなのかと改めて思ってしまう。
そんな企業の中にあっても遺族の世話係となった社員たちの懸命な姿(中にはそういった熱意がない者もいるが)には胸打たれるものがある。遺体回収・収容の現場、その後の補償交渉と休まる暇がない。ただ、そこに割と窓際と呼ばれる社員たちが充てられているのも企業の誠意が全く感じられない。
企業の闇とはかくも深いものなのかと痛感してしまう。大会社となればなるほど、闇は深く、しがらみは根強いものなのかもしれない。
同じ御巣鷹山航空機事故をメディアの観点から取り扱った「クライマーズ・ハイ(横山秀夫)」も併せて読むのもオススメ。 -
自分が子供の頃に起きたジャンボ機墜落事故そのものの話しだった、、、当時私はお盆で父方の実家を訪れており、大好きな従姉妹のお姉ちゃんがもうすぐ出産で大きなお腹に手を当てて、ニュースがこればかりなんよ。とジャンボ機墜落のニュースを流すテレビを指さしたのを鮮明に覚えている。お姉ちゃんと楽しむ時間に夢中でその時はニュースに関心を抱かなかった。小学生の頃だったと思っていたが中学生の頃だったと思い直した。それでも当時は遠い遠い知らない所での出来事に思えた。
そんな記憶しかなかったがこの本を読み続けると事故直後からその後当時見たニュースの内容が途切れ途切れに思い出された。
奇跡的に助かった女の子のうつろな表情を思い出した。
坂本九さんが亡くなったこと。
しかしそんな情報はほんのひと握りにも満たない微量な情報だと思い知らされた。
読めば読むほど気付かされる被害者の苦しみや、現場で献身的に働いた人達の数々、、無責任な加害者側。
人として。の在り方がこれ程までに差が開く物なのかと。
心打たれ、また逆に憤りを覚えさせられた。
実際にあった話しを題材に作者の取材力の凄さに参った。
⑴⑵と読んで来て変わらず恩地の人柄にも共感し、きっとこんな思いやりのある人達が実際当時どれだけ遺族の力になったであろうか、、
遠い所での遠い昔の事故として記憶の片隅にあったが、少しでも弔う気持ちを持て読むことが出来て良かったと思えた。
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「クライマーズ・ハイ」をきっかけに、御巣鷹山での出来事をより知りたいと思い、一気に3巻まで読了。随分前に読んだのだが、男の嫉妬の根深さ、幾多もの逆境に耐える主人公に胸が苦しくなった。
著者プロフィール
山崎豊子の作品






再度Netflixで視聴しました。何...
再度Netflixで視聴しました。何度見ても重苦しいですが、知らなければならないな,と思います。
この小説を書いた後、某航空会社の関係者と思われる方面から脅迫状が届いたとか。それにも負けずに発刊をやめなかった作者の信念には頭が下がります。