白い巨塔〈第3巻〉 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 138
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104355

作品紹介・あらすじ

財前が手術をした噴門癌の患者は、財前が外遊中に死亡。死因に疑問を抱き、手術後に一度も患者を診察しなかった財前の不誠実な態度に怒った遺族は、裁判に訴える。そして、術前・術後に親身になって症状や死因の究明にあたってくれた第一内科助教授の里見に原告側証人になってくれるよう依頼する。里見は、それを受けることで学内の立場が危うくなることも省みず、証人台に立つ。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    何とか教授選を勝ち切り、無事教授になった財前でしたが、その慢心ゆえに、同期である里見の助言を全て無視し、挙句の果てには患者を死に至らしめて訴訟されるという大きなミスを犯してしまう。
    ただ、この本の胸糞悪いところは、裁判に関わる医者たちの殆どが、その専門的な知識を駆使して患者やその遺族ではなく、財前や自分たちの立場を守るといった愚行に走った事でしょう。
    そして、正しいことをしているはずの里見が大学病院を追われ、罰を受けなければならない財前が何食わぬ顔で病院内でのさばり続ける・・・
    本当に読んでいて胸糞悪くなりました。

    この本を読んで分かる腐敗した世界観は、正直なところ現代ではかなり改善されているのではないかと思います。
    僕自身、仕事で大学病院などに訪問したり院内の色んな医師とお話をしますが、コンプライアンスにうるさい今日、国立病院では接待は基本NG、会社からの寄付でさえ上限金額が決められるなど、むしろ医師にとってかなりウマミがなくなってきているのが現状かなと思います。

    また、これは病院や診療科などその医局によって異なるかもしれませんが、上下関係はあるとはいってもフランクな医師も多く、総じてみると封建的な印象なんてあまりないようにも感じます。
    少なくとも、この小説のように、患者にとってここまで傲慢な医師なんていないと思います(笑)
    なんなら、「ブラックジャックによろしく」のような院内の雰囲気すら、現代の病院にはないと思います。
    (しかし、医師や医療従事者の人材不足はコロナ前からずっと課題としてありますが・・・)

    ただ、現代でも医療事故は減ったとはいえ起きており、被害者によっては泣き寝入りを強いられる事はあるようです。
    その構図は段々と良くはなっているとはいえ、根深い問題として残っているのかもしれませんね。

    こういった改革は、何も医師たちを虐げる為にやるわけではありません。医師や医療従事者の方達は、本当に尊敬に値する存在です。
    また医師や医療従事者のワークライフバランスもしっかりと確保した上で、医療事故を極力防止し、より良い医療がこれからも受けられる世の中であってほしいと願います。

    さて、「白い巨塔」も5分の3を読み終えました。
    ただ、正直今のところは胸糞展開ばかりで、読んでいてあまり面白いと感じておりません(笑)
    残り2巻、"名作"である所以をしっかりと僕に魅せて頂きたいですね!!(何様)


    【あらすじ】
    財前が手術をした噴門癌の患者は、財前が外遊中に死亡。
    死因に疑問を抱き、手術後に一度も患者を診察しなかった財前の不誠実な態度に怒った遺族は、裁判に訴える。
    そして、術前・術後に親身になって症状や死因の究明にあたってくれた第一内科助教授の里見に原告側証人になってくれるよう依頼する。
    里見は、それを受けることで学内の立場が危うくなることも省みず、証人台に立つ。


    【メモ】
    p329
    「何を根拠にしてとか、ぶこく罪とか、そんなことは知りません。けれど、財前という先生の無責任な診察で夫が思いもかけぬ死に方をしたことは事実だす。この間から大学のえらい先生たちが鑑定に出て、素人にはわからんような難しい医学のやりとりばかりをしてはりますが、なんでそんな難しいことばかりを言わんならんのです?財前という先生が、患者をちゃんと親切に間違いなく診察したからどうか、それだけを裁けばええのだす。なんでそれを裁かんのです!証拠や根拠ばかりを言うて、こんな裁き方は間違うてます!」

    「うちの人を返して、生き返らせて。子供の父親を返して!」
    振り絞るような声で叫び、財前の胸に掴み掛かった。


    p374
    「里見君、君の友情のない証言で対質にまで持ち込まれ、一時は苦境にたたされたが、これでやっと僕に誤診の事実がなかったことが明らかになったよ」
    勝ち誇るように言うと、
    「財前君、こういう勝ち方をして、法律的責任は逃れられても、医者としての良心、倫理に問うてみて、君は恥ずかしいとは思わないのか」
    里見は財前を憐れむように言った。
    「じゃあ、どういう勝ち方をしろというのかね」、ぎらりと精悍な眼を光らせ、開き直るように言った。
    「君は医者である自分に対して、もっと厳しくあるべきだ。医療は人間の祈りだとさえ言われている。神を畏れ、神に祈るような敬虔な心で、患者の命を尊重する心がなくては、医療に携わることは許されないはずだ」
    里見は静かな揺るがぬ声で言った。


    p376
    一体、何をしたというのだろうか?
    初診した患者の死の経緯について正しい証言をした者が大学を追われ、事実患者の診療に誤りを犯した者が、大学の名誉と権威を守るという美名のもと、大学のあらゆる力を結集してその誤審を否定し、法律的責任を逃れて大学に留まる。
    何という不条理であろうか。

    しかし、これが現代の白い巨塔なんだ。
    外見は学究的で進歩的に見えながら、その厚い強固な壁の内側は、封建的な人間関係と特殊な組織によって築かれ、里見一人がどう真実を訴えようとも、微動だにしない非情な世界が生きている。

  • 患者遺族が財前教授を訴えた裁判の場面が多かった。概して、小説内の裁判の場面は面白くないが、この本の場面は、わりと面白かった。

  • 山崎豊子はいつも「しがらみ」をテーマにしていますね。現実にも似たような話がどれくらいあるんだろう。
    もう40年以上も前の小説なのに全然「古さ」を感じさせません。

    自分が里見教授の立場だったら同じように法廷で真実を語れるだろうか。
    そのポストを手に入れるのに苦労をすればするほど保身に走ってしまうのはよくわかります。

    それから敬語の勉強、若造の権威者に対する立ち居振る舞いの勉強になります。

  • 主人公の財前がどんだん醜く堕ちていく…
    第4巻はどこが舞台となるのか楽しみ。
    今後も大学病院はこの封建制のままなのだろうか。

  • 前半のドイツ訪問時のアウシュビッツ見学の際に、主人公が感じた凄惨さと、後半での受け持ち患者の死に至る経過の中での自身の感情が、同一人物かと思われるほどの差を見せます。利害関係が発生した時の自己防衛、自己を正当化し保身に走る心理は分からなくもありません。原告側の人々の心理と、真実を追究する姿勢の対比が素晴らしいと思いました。裁判での唐木教授の証言にも心打たれました。

  • ハイボールがよく出てくる。

  • 3巻目は裁判ですね。裁判ものは、現実を読ませて置いた後にそれをトレースする展開なのでそれぞれの立場による思いや、嘘や真実がないまぜになる展開に興味がでるが、それよりも知った内容の再現が筋なので判決に興味が集中してしまい中だるみを感じる。そして判決は自分としては少し意外な結果に。要は患者の家族が精神的なケアをされなかった点が原告の訴えのポイントであり、そうであれば判決は妥当ともいえる。
    それにしても里見助教授は浮かばれないですね、この時点では散々です。もちろん、自分が患者やその家族だった場合は里見先生にお願いしたいですね。
    話の筋とは違うので無理やり感はあるが、ドイツのアウシュビッツ収容所での描写は作者が特に書きたかったのでしょうね。それとも、その後のストーリーに少しは絡むのでしょうか。

  • 【23/150】長い下積みを経て得た地位や権力を手放すのは、何よりも代え難い・・・のだろう。そんな心理を絶妙に描いている。しかしその欲望は絶えることがない。1つ登るとまた次の欲がでる。結局いつも飢えている・・・。

    今の地位から転げ落ちると、「もう立ち直れない、人生が終わる」と考えている人にとっては、なにがなんでもしがみつきたいと思うのだろうな。

    小説だけど、この人間の心理はリアルだ。

  • この巻を最後まで読んでこのタイトル『白い巨塔』の意味の深さが分かったような気がする。医者とはどうあるべきなのか。里見がいう高貴な精神ももっともだと思う。ただその反面医療が高度化したとしてもそこにはやはり治せないものもあると思う。そういう意味においてあの裁判の判決自体は実に的を得ていたと思ってしまった。それはいけないことなのだろうか。里見の立場、財前の立場それぞれがよく分かった。これから財前があの判決を胸にどう生きるのか、4巻が楽しみ。

  • 非常に面白い読み物でした。
    医者ではないのに、医療界のゴタゴタをこんなにリアルに
    描ききるなんて、山崎豊子さんすごいです。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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