- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104379
作品紹介・あらすじ
開始された医事裁判の控訴審は、原告側弁護人や里見たちの献身的努力によって、予断を許さない展開に。そして、財前自身の体に不吉な病魔の影が…。厳正であるべき"白い巨塔"大学病院の赤裸々な実態と、今日ますますその重要性を増している医事裁判に題材をとり、徹底した取材によって、人間の生命の尊厳と、二人の男の対照的生き方とを劇的に描ききった、社会派小説の金字塔。
感想・レビュー・書評
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【感想】
さて、ついに長編「白い巨塔」を読み終えました!!
かなりの話題作でありながら、これまで1回も本作品に触れてこなかった自分にとって、とても新鮮味のある作品でした。
前半は、単なる財前のサクセスストーリー。
教授になるための競争や根回しに明け暮れ、かなり消耗しながらも無事教授の椅子をGETしました。
この時代ならではだったかもしれませんが、、、
医局の封建性や各々の権力者たちの利害関係のドロドロさ、総じて大学病院という組織の教授選挙の生々しさを描く作品で終始するのかな~と思っていましたが、話は中盤から誤診裁判へと変わっていきます。
(ちなみにこの誤診裁判は、一審こそ病院側の勝利で終え、連載当初はそれで一旦完結したらしいのですが、読者からの「これじゃやりきれない」等の厳しいクレームにより、続編を書かざるを得なかったと筆者は語っています。)
裁判やさらなる権力争いなどに消耗し、徐々に財前の歯車狂っていきます。
終盤は財前の凋落の様子が如実に書かれており、証言者である部下の報復によってついに誤診裁判で敗北、そして最後には自身が末期の癌患者になってしまっていたという皮肉たっぷりの結末に・・・
そして終末が近づくにつれ、財前の意識は混濁してゆき、医者という腕も確かでありながら、権力を追い求めた財前という人間の人生は一体何だったのか?と読んでいて考えさせられてしまいました。
ただ、最期は医者としての素晴らしさ、後世の医学に役立つよう自身の体を解剖してほしいと手紙に残したあたり、財前は強烈な個性こそありましたが、医者として医道に反した人間ではなかったのだなという事を感じさせられました。
名作という名に違わぬ、あとがきや解説まで非常に読み応えがある作品でした。
ちなみに・・・
本書で「白い巨塔」に激ハマリしましたので、現在は唐沢寿明・江口洋介主演のドラマ版「白い巨塔」を視ています(笑)
既に6話まで視ましたが、こちらもとても面白そうですね!!
【あらすじ】
開始された医事裁判の控訴審は、原告側弁護人や里見たちの献身的努力によって、予断を許さない展開に。
そして、財前自身の体に不吉な病魔の影が…。
厳正であるべき“白い巨塔”大学病院の赤裸々な実態と、今日ますますその重要性を増している医事裁判に題材をとり、徹底した取材によって、人間の生命の尊厳と、二人の男の対照的生き方とを劇的に描ききった、社会派小説の金字塔。
【メモ】
p206
「でも、向こうには里見さんがついてるわ。一度口を聞いただけだけど、あの人は凄い人やわ。私みたいにどんな一流会社の社長にも有名人にも体を張って、操縦しようと思えば出来ないことのない人間でも、あの人だけはどうにも歯が立たへんわ。」
「あんたも誰に勝っても、最後は里見さんにだけは勝てないのと違うかしら」
ケイ子はさり気ない口調で言ったが、財前の胸に鋭く突き刺さった。
それは、財前自身が無意識のうちに心の底に持っている里見という人間への畏れのようなものだった。
p282
「江川、君は!君までが!」
法廷であることを忘れ、財前は大声で叫んだ。
絶対服従で将棋の駒の如く自在に動かすことの出来た医局員が、こともあろうに、柳原一人のみならず、また一人、自分に向かって反逆の弓を引き、法廷にまで出てくるとは…
p311
「今回の判決は、今後の医事裁判に一つの方向を示す社会的に極めて有意義な判決です。しかも封建的、ギルド社会ともいうべき白い巨塔に鋭いメスを入れ、診療・研究・教育の指導にあたる国立大学の教授なるが故に、厳しく責任を追求された点、まさに会心の判決だと思います」
p333
「君からではお願いしにくいのなら、僕から東先生にお願いしてみようか」
「うん、頼む…」
財前は感謝するように頭を下げ、あとは人目を憚るようにそそくさと廊下を歩き、足早に立ち去っていった。
その後ろ姿を見送りながら、里見は、人間的には多くの欠陥を持ちながらも、癌専門の外科医として優れた才能を持っている財前が、皮肉にも早期に癌を発見する時期を逸してしまった怒りが激しく込み上げてきた。
なぜもっと早く検査を受けなかったのだ、検査さえ受けておればもっと早期に見つかっていたのに!
p342
かつてこの同じ手術室の手術台で、何百人もの癌患者の手術をし、成功した財前が、どう救いようもない状態で横たわっている。
手術台を取り巻いている教授たちは、万策が尽きたことを知った。
「縫合・・・」
最後の断を下すように東が言うと、金井助教授をはじめ三人の弟子たちは眼に涙を滲ませ、手を震わせながら、切開した財前の腹部を閉じ合わせた。
p391
「里見くん、胃癌なら胃癌だったと言ってくれ。そしてそれが手術可能だったものか、それとも不能のものか、真実を教えてくれ。僕は医者だ、しかも癌専門医だ。その僕が、自分の症状の真実を知らずにいるのは、あまりに残酷だ!」
財前はベッドの中から哀訴し、取り縋るように言った。
里見はこれ以上嘘をつくことの白々しさと無駄を悟った。
p405
・あとがき
昭和39年の連載当時は、現実的視点のもとの専門的な指導の結果、誤診事件にもかかわらず、医師側勝訴、患者側敗訴のどうしようもない非情な裁判を描いた。
が、判決について、多くの読者から「社会的反響を考えて、作者はもっと社会的責任を持った結末にすべき」という声が多数寄せられた。
そこで、既に完結した小説の続きを書くに至ったのだ。 -
今も何度もテレビで再放送されており、以前買ってあった原作を読みたくなり手にとった。
やっと5巻まで全て読み終えた。
財前が主人公だが、里見のどんな困難があっても
自分の信念を曲げない生き方が好きです。
特に4巻からは夢中になって読みました。
なお4巻5巻は読者の声によりできた続編だそうです。
題名の白い巨塔とは患者の死の経緯について正しい証言をしたものが大学病院を追われ、患者の診察に誤りを犯したものが、大学病院の名誉と権威を守るという美名のもとに、大学のあらゆる力を結集して誤診を否定し、大学にとどまる不条理とのこと。3巻より。 -
控訴審となった財前の誤診をめぐる裁判。
原告側弁護人・関口や、里見の努力によって、財前は窮地に…
控訴審に、学術会議選挙に、追われる財前に病魔の影が…
結局、財前がちゃんと診察していれば…ということなんだろうが。
本当にそうなんだろうか。
財前だからこそ、初期噴門癌を見つけて、手術することができたはずでないか。
佐々木庸平に死をもたらしたものは、財前だけによるものではないはずだ。
医者としてあるべき姿は、里見なのかもしれない。
が、財前のように教授がひとりひとりの患者にまで細かい目配りができるだろうか…
里見のようにすべての患者に同じように寄り添うことができるだろうか…
控訴審で原告側勝訴となるが、財前の言う様に、医師が訴えらることを恐れ、医学の進歩を阻むことになるかもしれない。
財前には最後まで戦って欲しかった気がする。
もう一度這い上がる財前を見たかった…
癌が不治の病と言われ、情報が少なかった昭和40年代に、50年以上たった今、読んでも違和感を感じない作品を書いた山崎豊子の取材力の凄まじさを感じる。
4巻、5巻は『続 白い巨塔』だったのか…
3巻までの社会的反響が大きすぎたことを受けての、続編だったのか。
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因果応報と言えばそれはそうなんだけど、全体を読み終わった時、新教授も運命という大きな力に翻弄された人だったのかもしれないなぁ。とざまーみろというスカッとした気持ちだけではいられない後味を感じた。
あとがきを見て驚いたのだけどもともとは3巻で完結するところを付け足して4巻、5巻を書いたのだとか...。よくもうまく綺麗につなげたよなぁと感心した。あたかも元々5巻で完結するつもりかのような進め方だったので、あとがきの威力は大きかった。
5巻の終盤、生命というものに厳粛に向き合う描写、絶対的で厳かで止まったかのような時間、張り詰めてかつ静謐に流れる空気...このシーンがめちゃめちゃ良かった。その情景にのまれて僕も涙が意図せずぽろぽろと出た。
舞台が昭和なので現代の医療の常識やレベルは当時のものと比べて更に違った物、進歩した物になってるんだろうなーという印象は受けるものの、それらを差し引いてもずっしりと楽しめる内容でした。山崎さんの別の作品も絶対読みたいな。と思える文章でした。 -
まさかの終わりかたでした。
それまでの内容もすごく面白かったです。これが当時の日本で反響を呼んだのもよく理解できます。
小説を書くまでの下調べにかけた時間は計り知れないなと思いました。
ものすごい人間ドラマでした。
とにかく、一度は読んで欲しい作品です。 -
医事裁判では、新しい証言が語られ、徐々に真実に迫っていく。患者の家族が苦労を乗り越えて戦う姿を通して、命を蔑んだ医者に対する家族の怒りが伝わってくるようだった。
庶民こそ、命の重さを知っているのかもしれない。白い巨塔の後半は「生命の尊厳」が大きなテーマだと感じた。
しかし、患者の命が失われた後の争いだということが切ない。家族が裁判に勝ったとしても、真実が認められたとしても、患者の命は戻ってこない。
命の重さを、存在の大切さを、本当の意味で知ることができるのは失った後なのかもしれない。 -
判決を言い渡されるあたりはドキドキしながら読みました。
最後100頁ほどはあんなに憎かった財前が可哀想になりました。
そして何よりケイ子さんのいい女っぷりが素敵でした。
泣けました。
読み終わりもよく、久しぶりに面白い長編が読めました。 -
最後の展開は読めなかった。
けど、財前五郎が最終的には医者の使命を全うしていたのは感動した。
財前五郎を囲んだ人間模様も最後の方のが味が出ている。
本当に良い作品でした。 -
Kindleのprime readingにて一巻が無料であったため、よく聞くタイトルでかつ医学についての知識がつきそうだな、ということから読み始めた。読むのが遅い私だが一巻は思いの外スラスラと読めてしまった。2巻からは有料となるがAmazonの思う壺だとわかりながらも、この最終巻まで読み終わる事に購入していった。
昭和45年たりの話という事で、私にとって2世代昔の大阪での医療政治の話という風に捉えて作品を見た。
特に、最終巻での裁判後の急展開には非常に驚かせられ、最終章はまさに5巻分のフィナーレを飾るような見事な結末であった。特に最後、夏の打ち上げ花火のようにクライマックスで上手く輝く作品であるという点において、ここまで人気で訳が頷けた。 -
本日読了。
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最後は怒涛の展開だった。
学術会議選挙に勝ち、医療裁判や学内の政治に多忙な日日を送る財前に遂に病魔が…
最後は本作らしい結末だった。 -
通勤途中の電車内で読んでいたので、眠い日や飲み会があったりして遅々と進まなかったけど、この巻は勢いよく、外出時は早めに家を出て現地で読んだりしていた。
今読んでも全然面白かった。
タイトルが白い巨塔とあったので、大学病院の医療関係者の権力争いの様なものが中心だと思ったが、加えて医事紛争裁判がその割合を大きく占めていた。
裁判は互いの主張も理解出来るので良い悪いでは簡単に片付けられないけど、原告は進める過程で嘘偽りなく事実を事実として証言し、被告は名誉や権力を得るために事実を捻じ曲げる証言をするが、自分だったらどうだろう。
この様な選択は多くはないけど何度かあった。
普段の生活でも思いもしていない事を言い忖度する事もあった。
子供の頃に両親からいつも言われてた「人に迷惑を掛けてはならん」を思い出す。
今は定年を迎えたので全てが昔の話だ。 -
結末のバックにベートーヴェンの『荘厳ミサ』が湧き上がるように書き込まれてあり、救われた気がした。
解説にもあるようにそこに作者の意思もあるのだろう。
一人の人間として悪者といえども心の震えはあり、いつ滅びるかと不安にさいなまれている生き物なのだと。
当時(「白い巨塔」が連載されていた頃)、社会派小説は流行っていて私は松本清張氏を多く読んでいて共感や憤りを経験していたにもかかわらず、今回はまいった、あまりの臨場感に。
どろどろした人間関係に憤慨して読んでいると、胃がん手術のリアルさ、医師の頭の下がるような執刀の様子。かと思と法廷の緊迫したやりとり。大阪の商人のドラマチックな展開。
悪人の代表のような財前五郎、ヒューマニズムの、あるいは神のような存在の里見脩二。わかりやすい描きかたに舌を巻く。うーん、その他の登場人物もしかり。
「生み坊主のようにぬるりと頭をひからせた」財前の舅の又一。「鶴のような痩身」の解剖の大河内教授などなど。まるでアニメのようといってもいい。
しかし、作者山崎豊子氏は取材、予習と大変苦労された。だから内容に齟齬がないのだろう。また、一旦、第一審までで筆をおき、二年後続編を書いたということは、読者の反響、社会的影響によるという。
やはりすごい小説だ。大反響だったことは知っていたが、やっと私が読めた感。 -
大学病院を舞台にして繰り広げられた権力闘争、医療過誤の法廷闘争の幕が降ろされる最終巻。あとがきによると本当は三巻までで終わっていたはずが、読者からの反響の大きさにより続編として書かれたのが四、五巻に当たるという。前半だけで終わっていたら、これほど静かな読後感があったかどうか。
法廷闘争第二審の最中、あまりの財前の横暴ぶりにそれまで偽証を繰り返していた証人が自分の言を撤回する。しかし物証がないため信頼性に欠けるとされた時、「シヨウコアル」との電報が届くシーンは心揺れた。
悪逆を尽くした財前だったが、最後の最後は医者としての本分に立ち戻る。あらゆる面で遅かったのだけれど。
初読時は、医療過誤についても財前が絶対的に悪いと感じていた。でも読み返してみると、これで医者が悪いとされたらやりきれないかも、と思うことも。
もしも財前が手術後に一回でも患者に面会し、家族にも優しい言葉を掛けていれば訴えも起こらなかった気もする。実際家族も、「患者に対して不誠実な、人間味のない診察しか」しないことを一番問題視していたわけだし。
第二審結審後からの急展開、最後のページまでは他の用事が一切できないほど夢中に読んだ。名作。 -
ハイボールがよく出てくる。
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さすが、不朽の名作といったところか。
病院だけではなく、大学内の権力闘争、裁判と。
たくさんの要素が複雑に絡み合う。
このはなしが、文学部を舞台に~などでは大分難しいだろう。
テーマのチョイスも素晴らしい、
このあとで、動画サイトで田宮二郎版をみるとまさしく財前がそこにいた。 -
232
本書が刊行されたのは1965年。当時は今ほど医事裁判はなかった。なのにこのリアリティー。加えて、著者が医療関係には全く素人であるというのに、綿密に取材され出来あがった本書。凄いとしか言いようがない。
同著者、読了2作目。 -
環境に左右されない確固たる自分自身を持った生き方に勝るものはない、里見医師。 対照的に、毀誉褒貶に振り回され、名誉と欲望を求め続けた財前医師。
環境に適応することを目的に生きるのか、それとも使命に生きるのか。
自分に甘く生きるのか、自分に厳しく生きるのか。
一番大事なものは自分か、それとも自分以外の何かか。
周囲には利害に群がる人間か、それとも心から信頼し支えてくれる人間か。
花森ケイ子
「あの人はすごい人やわ、もっさりした服装をしてぼさっとしてはるけど、心の厳しさというのか、何か侵しがたいものごあるわ、私みたいにどんな一流会社の社長にも、有名人にも体をはって、操縦しようと思えばできないことのない人間でも、あの人だけはどうにも歯が立たへんわ、だから、あんたも誰に勝っても、最後は里見さんには勝てないのと違うかしらー」
弱い自分に打ち克てる人こそ、最も強き人なのだろう。
こんにちは!
いつもありがとうございます。
さすがの「白い巨塔」のレビューですね。
ここまで読み込めたらすごいですね。
山崎...
こんにちは!
いつもありがとうございます。
さすがの「白い巨塔」のレビューですね。
ここまで読み込めたらすごいですね。
山崎豊子頂点の作家です「自分にとって」
面白くてただ歯が立ちません。
山崎豊子作品の他のきのPさんのレビュー読みたいです。
二つの祖国、
不毛地帯
大地の子
華麗なる一族
沈まぬ太陽
探せば書かれてますか?
それともまだでしょうか?
山崎豊子作品沼なかなか抜け出せなかったです。
ブクログ会員でなかったので
感想は書けてません。「ずいぶん昔で」
コメント有難うございます!
山崎豊子はイチ作品の量もすごいですが質はそれ以上に凄まじいですよね!
面白いのですが、どの作品も奥深...
コメント有難うございます!
山崎豊子はイチ作品の量もすごいですが質はそれ以上に凄まじいですよね!
面白いのですが、どの作品も奥深いため、読むのにとても体力のいる作家のお一人です(^^)
ご質問ですが、「二つの祖国」と「大地の子」以外はレビューしておりますので、またお時間ある時に読んで頂けたら嬉しいです!
(ただし、「沈まぬ太陽」は途中までしかレビュー書けていません)
次に同著者で読むとすれば、「大地の子」を読みたいと思っています!
「大地の子」レビュー楽しみにしてます。
どうぞ気楽に。
プレッシャーはお与えしたくないので。
いつでも。
「大地の子」レビュー楽しみにしてます。
どうぞ気楽に。
プレッシャーはお与えしたくないので。
いつでも。