- 本 ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104485
感想・レビュー・書評
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東京裁判の判決が下ろうとしていた。
東京裁判にモニターとして携わる賢治は、連合国側が敗戦国・日本を裁く一方的なやり方に疑問を覚える。
椰子には原爆による暗い影が…
原爆の恐ろしさを感じる。
勝者が敗者を裁く。
勝者が正しいのか…
広島、長崎への原爆投下は正しいことなのか…
戦争は二度と起こしてはならない。
核を使うなんてことはあってはならない。
『私は米国の敵だったのだろうか』
アメリカに忠誠をつくした日系二世にもかかわらず、戦争が終わってもまだ差別され、少しでも日本への心情があると反米と言われる…
狭間で苦しむ賢治…
賢治には二つの祖国を持つ身として、戦って欲しかった。
日系アメリカ人の不遇と公正を世に問い続けて欲しかった。
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軍事裁判、椰子との関係の結末は。
裁判後賢治は身の振り方をどうするか…
重い結末はだったがこの物語らしい納得いく内容でした。山崎豊子さんの作品はどれも印象深い。 -
東京裁判は判決を迎える。
賢治の愛した梛子にも不幸な運命が待ち受ける。
3巻から引き続き東京裁判に翻弄されました。
判決の重さ、その判決を通訳として言い渡すことになった賢治の苦悩。
梛子との別れ、家族との不和、そして東京裁判、それらが賢治を壊していく。
日系二世としてアメリカに忠誠を尽くすも、日本人としても心を強く持ってしまった賢治には、余りにも酷な運命でした。
衝撃のラスト、賢治の選んだ最後が悲しい。
まだ幼いアーサーが心配です。
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東京裁判がクライマックスを迎える。
通訳とはいえ、主人公は、一人の日本人に死刑を宣告をすることになる。
また、広島で奇跡的に助かったはずの恋人は、白血病を発病し、広島の病院に入院してしまう。
臨終に間に合うことができず、主人公はその後ずっと引きずることになる。
そんな主人公のお荷物でしかない妻は、子供とともにアメリカに帰る。
次第に主人公は心を病み、酒に溺れる。
そして、自死という最悪の選択をして、この物語は幕を閉じる。
主人公と、その親友のチャーリーはモデルとなる実在の人物がいるそうで、主人公はやはり現実でも自殺をするらしい。
その原因は明らかになっていないが、この小説で描かれているように、東京裁判の重圧から心を病んだことによるものと考えられる。
主人公には生き抜いて、アメリカのマスコミ業界でまた活躍して欲しいと思っていただけに、最後の展開は残念でならない。
後味は悪い物語だったが、これまでスポットが当たらなかった東京裁判の詳細について、アメリカ在住の日系二世について知ることができたので読んで良かった。 -
とても勉強になる本でした。
日系二世の差別、語学兵の苦しみなどこの本で初めて知りました。
昔、「不毛地帯」はドラマで観ましたが小説でも読んでみようと思います。 -
戦争を引き起こした東條らが戦犯となるのは当然じゃないか、と漠然と信じていたが二つの祖国を読むとそんな国民感情だけでは済まさせれない戦勝国が敗戦国を裁くことの是非や国際法に基づいた公正な裁判だったのか、という問題を突きつけた作品だった。山崎豊子ならではの取材力には舌を巻く精度の高いフィクション小説。東京裁判を記録したDVDを借りて観てみたがこの二つの祖国を読んだことでよく理解できた(逆に言えばこの作品を読んでいなければ全く理解できなかったと思う)
「東京裁判を書くにあたっては、本質を見失うことなく、いかに小説的にわかりやすく書くかということに全力を注いだ」という著者の努力が伝わる内容だった。 -
やるせないな...
虚無感に陥った賢治は、はっと、パズルのピースが全てハマったようにw、死へのピースを自ら埋めてしまったのだな。引き返す機会もあったが、椰子という心の支えを失った賢治には終焉へ一直線だった。
これを読んで、第二次世界大戦や原爆などへの受けての考え方が微かに変わった気がする。▼インドのパル判事「戦争を犯罪として裁く法律が国際間に出来ない限り東京裁判の被告を戦争犯罪者とすることは出来ない」と東京裁判という名の政治を批判したように、現在は戦争犯罪を裁く国際法や国際法廷等が設置されているが、国連自体が安保常任理事国の拒否権で機能不全である。
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正義とは、忠誠心とは、国籍とは、、、
不幸な結末、最後は報われて欲しかったと思うが、そんな単純に整理ができない作品。
日本人の精神ならではの意味を持つ、肚 。
翻訳モニターとしての苦悩が凄く伝わる描写でした。
そして、山崎豊子さんの作品は葛藤や苦悩の心情を分かりやすく解説してくれるのが、作者さんの魅力の一つだと思います。
著者プロフィール
山崎豊子の作品





