約束の海 (新潮文庫)

著者 : 山崎豊子
  • 新潮社 (2016年7月28日発売)
3.85
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104515

作品紹介

海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。マスコミの批判、遺族対応、海難審判……若き乗組員・花巻朔太郎は苛酷な試練に直面する。真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ花巻。時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が幕を開ける。自衛隊とは、平和とは、戦争とは。構想三十年、国民作家が遺した最後の傑作長編小説。

約束の海 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 自衛隊の潜水艦と民間の船が衝突し、多数の死者が出た事故をきっかけに、自衛隊の在り方を問う話。山崎豊子ならではの世界。
    残念なのは、三部構成の予定だったそうだが、残り二部は未刊のまま、山崎氏が亡くなられたこと。
    編集チームの補足により、氏がいかに丁寧に取材をされ、一連の小説を書くのに膨大な時間をかけられていたことがわかり、改めて、これまでの数々の作品の重みを感じるとともに、読み直してみたくなった。

  •  海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と民間船の衝突事故は、過去最大の惨事となった。正義感あふれる主人公・花巻朔太郎は、多数の遺族を前に自責の念にかられ、自らの進退に悩む。一方的に海自側を批判するマスコミ。思いを寄せる頼子との関係はどうなるのか。
     と風呂敷を広げきったところで、続きを読みたい気持ちが行き場を失う。2013年、山崎豊子は数々の名作(ほとんど読破した、してしまった)をこの世に残し、そして本作を最後まで書き上げることなく鬼籍に入られた。改憲の議論が高まる今だからこそ、最後まで読みたかったという思いと、最後まで読めなかった分著者が残してくれた問題に自分なりに向き合ってみようという思いが同時に押し寄せる。

     『戦争は絶対に反対ですが、だからといって、守るだけの力も持ってはいけない、という考えには同調できません。
     いろいろ勉強していくうちに、「戦争をしないための軍隊」、という存在を追求してみたくなりました。
     尖閣列島の話にせよ、すぐにこうだ、と一刀両断に出来る問題ではありません。自衛隊は反対だ、とかイエスかノーで単純にわりきれなくなった時代です。
     そこを読者の皆さんと一緒に考えていきたいのです。今はその意義を再び考え直すタイミングなのかもしれません。』

     あとがきで、このような言葉を残されています。憲法を改正したら徴兵令が復活する、自衛隊の海外派遣は武力の行使だから違憲だ、そんな簡単なものなのか?とは常々思っていたこと。実際にあった「なだしお事件」から海自を一方的に批判したマスコミのようになってはいけない。感情的にならず、全体を見る目を養い、自分の国をいかにして守るべきか、平和への追求を忘れないでおこうと改めて思った。

     本作で、海上自衛隊の潜水艦隊という存在とその役割に興味を抱いた。そもそも存在自体を全然知らなかったけれど、北朝鮮のミサイル問題をはじめ、今も国のために暗躍しているんやろうなあ。
     知ることは思考の材になる。山崎豊子という尊敬する作家が残してくれたものを、自分の一部にしていこう。

  • 1988年に起きた「なだしお事件」をモデルに、自衛隊の潜水艦に従事する花巻朔太郎を主人公に物語が展開。この作品は3部作予定が作者の逝去により1部での発表となったようですが、巻末のシノプスを読むとこの物語の壮大さが伝わってきます。「戦争と平和」がテーマであるとのことで、自衛隊のあり方や現在の世界情勢も視野に入れて、憲法第9条の改正で揺れる今だからこそ、もう一度考えるよい機会となりました。作者の膨大な取材の量に圧倒され、返す返すもこの先が読みたかったと思いました。

  • <内容紹介より>
    海上自衛隊の潜水艦「くにしお」も釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。マスコミの批判、遺族対応、海難審判……若き乗組員・花巻朔太郎二尉は過酷な試練に直面する。真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ花巻。時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が幕を開ける。自衛隊とは、平和とは、戦争とは。構想三十年、国民作家が遺した最後の傑作長編小説。

    ーーーー
    やはり、山崎豊子の作品は存在感というか、訴えてくる力がものすごく強いと感じました。
    重厚なストーリーと、綿密な取材による圧倒的なリアリティは、他の追随を許さないモノを持っていると思います。

    今回の作品は自衛隊がテーマ、ということで非常に楽しみにしていた、のですが未完のまま山崎豊子は鬼籍に入られてしまいました。
    完成していれば、衝突事故を起こした船の乗組員たちや、世論(マスコミの苛烈な報道を含めて)、被害者遺族との関わり方などを通して、これからの国民の考えるべき「意識」のひとつのモデルを提示してくれる作品として、多くの読者に影響を与えたであろうことを思うと、残念でなりません。

    第一部と、第二部以降のプロットが収録されていますが、完成稿のある第一部だけでは、やはり物足りなさを感じます。

  • 海上自衛隊の潜水艦が釣り船と衝突して多数の犠牲者が出た事件を題材とした、山崎豊子の遺作。
    未完ですが、その後の構成案をまとめたものなどもあり、最終作を読了の満足感は味わえました。

  • 完結していないのが残念。

    〆切本で知って借りた見た。

  • 読む本がなくなったので、旅先のコンビニで購入。未完とは知らなかった。自衛隊の存在意義に、真っ正面から取り組んだ作品だけに、先が気になる。著者が、どう捉え、どう物語を語りたかったのだろう。
    このモデルとなった「捕虜第一号」についても、読んでみたいと思った。

  • なだしお事件の描写は、「沈まぬ太陽」の日航機事件に比べるとそれほど鋭くはない。今後の戦時のエピソードがクライマックスになっていくと期待される中での絶筆。期待される内容を読めないのは残念だが、この年齢でもこれだけの構想を練り、取材し、書き始めた作者の意思と情熱に脱帽。絶筆の作品に、今後の展開の可能性を示すスタッフの記録が記載されるというのも、この作者の作品ならではかも。

  • 骨太な文章、人物の心情の細かな描き方、もう最高な山崎節です。未完が本当に残念だけど、巻末に先生と編集部の今後の展開についてのメモがついているので、想像力にまかせていろいろ考えるのが楽しい。

  • 初めて山崎豊子の未完の遺作を読んで、一冊も読んでいなかったことを本当に後悔。

    なだしお衝突事件を軸に、現代の防衛を担う自衛隊、多くを語らぬ帝国海軍士官の父、民間人と自衛隊との温度差や相互理解の不足を描いた作品。
    ご存知の通り、未完であるが、充分に未完部分を補ってくれる、著者の構想シナリオがあり、読者が展開やラストを描かせてくれる。

    著名な作家というのは、読者のために、様々なストーリー展開を構想するのだと、思ったのは、本当に発見であった。

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