約束の海 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 66
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104515

作品紹介・あらすじ

海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。マスコミの批判、遺族対応、海難審判……若き乗組員・花巻朔太郎は苛酷な試練に直面する。真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ花巻。時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が幕を開ける。自衛隊とは、平和とは、戦争とは。構想三十年、国民作家が遺した最後の傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 絶筆だから読みたいと思いつつも、未完だからと躊躇する気持ちもあり、これまで横目で見ながら手に取らなかった作品。

    加齢によって体力は低下し、その反面自分の立ち位置と存在意義を確認したいという欲求にも駆られ、自分のやりたいこと、やるべきこと、そして出来ることの線引きがぼやけ、なんとも心許ない毎日を過ごしてきた中で、またこの本と対面した。

    爽やかで正義感が強く、いかにもヒーロー然としていながらも、迷いや弱さを抱えて時には間違うことも、誰かを傷つけることもある、著者が描く人物像に触れたくなり、とうとう頁をめくることにした。

    著者の構想の半分にも満たない作品からは、迷いの中でどう進んでいくかのヒントを得るどころか、もっと難解な問いを投げかけられた。

    好き嫌いを問わずそれぞれの登場人物に感情移入し、もし自分ならばこのストーリーをどう展開させる、ラストをどう着地させるのか、答えのない問いかけこそが、著者からのメッセージかもしれない。

    後を引く読み応えのある作品。

  • 山崎豊子さん、最後の未完作品。
    二つの点で興味惹かれる小説である。

    * 高齢と病身である山崎さんの渾身の力はいかなるものなのか
    * 作者テーマである「戦争と平和」を描くとしても、自衛隊から掘り起こすとは

    上記は当時(2013年)文芸関係で話題になった。

    氏の秘書野上孝子さんも解説で
    「まさか先生、自衛隊を書くのではないでしょうねと、飛び上がった」
    と書いていらっしゃる。
    「先生には『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』という戦争三部作がある。
    その作者がどういう視点で自衛隊を書くのだろう。」

    山崎氏全作品読破のわたし、文庫になるのを満を持ししていたので、さっそく。

    さすがです!

    自衛隊が批判にさらされた「潜水艦なだしお事件」を題材にフィクションが始まる。
    その潜水艦の若き乗組員が主人公。
    一般人の犠牲者がたくさん出た、あってはならない事故である。
    たまたまその事件に遭遇してしまった真面目な悩みを通して
    自衛隊とは何かを問う設定。

    読んだところ、かなり自衛隊を肯定している。
    「かなり」っていうところが今の国民の気持ちだと思う。

    山崎節炸裂の力作ですが、第一部完結とはいえ、物足りないのは仕方ありません。
    でも、書かれなかった全体の予定構造の概略が巻末に付録してあって、
    第二部、三部と続くらしいが、それを読むのがわたしには非常に面白かった。

    病魔と闘いながら、きちんと第一部を終わり後の構想を残しておく。
    残念だけど好感持てる終わり方。

    最後まで書きながら死ぬ、これぞ作家冥利ですよ。

  • 自衛隊の潜水艦と民間の船が衝突し、多数の死者が出た事故をきっかけに、自衛隊の在り方を問う話。山崎豊子ならではの世界。
    残念なのは、三部構成の予定だったそうだが、残り二部は未刊のまま、山崎氏が亡くなられたこと。
    編集チームの補足により、氏がいかに丁寧に取材をされ、一連の小説を書くのに膨大な時間をかけられていたことがわかり、改めて、これまでの数々の作品の重みを感じるとともに、読み直してみたくなった。

  •  海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と民間船の衝突事故は、過去最大の惨事となった。正義感あふれる主人公・花巻朔太郎は、多数の遺族を前に自責の念にかられ、自らの進退に悩む。一方的に海自側を批判するマスコミ。思いを寄せる頼子との関係はどうなるのか。
     と風呂敷を広げきったところで、続きを読みたい気持ちが行き場を失う。2013年、山崎豊子は数々の名作(ほとんど読破した、してしまった)をこの世に残し、そして本作を最後まで書き上げることなく鬼籍に入られた。改憲の議論が高まる今だからこそ、最後まで読みたかったという思いと、最後まで読めなかった分著者が残してくれた問題に自分なりに向き合ってみようという思いが同時に押し寄せる。

     『戦争は絶対に反対ですが、だからといって、守るだけの力も持ってはいけない、という考えには同調できません。
     いろいろ勉強していくうちに、「戦争をしないための軍隊」、という存在を追求してみたくなりました。
     尖閣列島の話にせよ、すぐにこうだ、と一刀両断に出来る問題ではありません。自衛隊は反対だ、とかイエスかノーで単純にわりきれなくなった時代です。
     そこを読者の皆さんと一緒に考えていきたいのです。今はその意義を再び考え直すタイミングなのかもしれません。』

     あとがきで、このような言葉を残されています。憲法を改正したら徴兵令が復活する、自衛隊の海外派遣は武力の行使だから違憲だ、そんな簡単なものなのか?とは常々思っていたこと。実際にあった「なだしお事件」から海自を一方的に批判したマスコミのようになってはいけない。感情的にならず、全体を見る目を養い、自分の国をいかにして守るべきか、平和への追求を忘れないでおこうと改めて思った。

     本作で、海上自衛隊の潜水艦隊という存在とその役割に興味を抱いた。そもそも存在自体を全然知らなかったけれど、北朝鮮のミサイル問題をはじめ、今も国のために暗躍しているんやろうなあ。
     知ることは思考の材になる。山崎豊子という尊敬する作家が残してくれたものを、自分の一部にしていこう。

  • 1988年に起きた「なだしお事件」をモデルに、自衛隊の潜水艦に従事する花巻朔太郎を主人公に物語が展開。この作品は3部作予定が作者の逝去により1部での発表となったようですが、巻末のシノプスを読むとこの物語の壮大さが伝わってきます。「戦争と平和」がテーマであるとのことで、自衛隊のあり方や現在の世界情勢も視野に入れて、憲法第9条の改正で揺れる今だからこそ、もう一度考えるよい機会となりました。作者の膨大な取材の量に圧倒され、返す返すもこの先が読みたかったと思いました。

  • 最後まで読みたかった

  • 海上自衛隊なだしおと遊覧船の追突事故をモチーフにした小説で山崎先生の遺作となった小説です。クライマックスの直前で先生がお亡くなりになり、途中で物語がいきなり終わってしまいます。続きが読みたい思いがふくらみますが、他の人が加筆するのではなく、山崎先生の筆で終わるのが良いと思います。

  • 2020.06.17 品川読書部で紹介を受ける。
    http://naokis.doorblog.jp/archives/shinagawa_reading_comm_34.html

  • 続きを読めないのが
    非常に残念です…

  • 山崎豊子氏の絶筆で話が途中で終わっています。結末を知りたかったです。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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