決定版 夏目漱石 (新潮文庫 え-4-2 新潮文庫)

  • 新潮社 (1979年7月27日発売)
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本 ・本 (672ページ) / ISBN・EAN: 9784101108025

感想・レビュー・書評

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  • 漱石は兄嫁との禁じられた恋に悩んでいたらしい。
    だから、漱石は他人の女の子に手を出そうとする男の子を書くのだと思った。

  • かなりの部分、江藤は自分自身を漱石に重ねることで本書を世に問うた。またそのことで著者自身が世に出た結果となった。
    漱石が英国留学で、英文学者として国に貢献するという自らのアイデンティティの崩壊に直面したという指摘は、江藤自身の留学体験とエリートとしての自負、そして敗戦国日本人としてのアイデンティティの問題を浮き彫りにしているように見えて仕方がない。そのことの是非は問うべくもなく、本書冒頭のT・S・エリオットの引用にあるように「過去の時代の作品」の「時代の要求に応」じた再評価こそが批評の役割であり、本書はその洗練された一例である。

  • 学生時代、二十歳のときに読んだ。
    おそらく、蓮實重彦の「夏目漱石論」を読み、その衝撃のまま本書を手にしたのだ。
    蓮實重彦に<神話を破壊したつもりで新たな神話を作った江藤淳>と批判された、その内容を確認する意味で読んだのだが、江藤淳の神話にまんまと乗せられてしまった。

    江藤淳が<三田文学>この作品を発表したのは、1955年、江藤23歳、慶應の学生だったときだ。
    新たな漱石神話<嫂(あによめ)登世>は後の大作「漱石とその時代」で大きく浮上してくるが、デビュー作ではまだそれほど大きく取り上げられてはいない。
    それが本書を読みやすくしている理由かもしれない。
    漱石神話創成期の評論と見ることもできる。
    自分とそれほど歳の変わらぬ若者が、この評論をものしたと言うことに、物凄い衝撃を受けた。
    そんな青春の書だ。

  • 「明暗」を読む前に どうしても読みたかった 江藤淳 の漱石論。まさに漱石に肉迫した論述集。内面から 漱石をえぐった感じ。図書館で借りて読んだの失敗だった。線を引きながら 読みたい。今回は 則天去私について と「明暗」書評のみ読む。他は購入してから。


    「則天去私は弟子の作った神話」
    修善寺の大患後の漱石の創作態度の変化=漱石の現実逃避欲求のあらわれ。漱石にとっての則天去私=オースティン「傲慢と偏見」

    漱石作品の支配的な色彩=黒、闇、夜

    「明暗」
    *日常生活では無力な「思想」を 芸術的に再構成して表現
    *漱石は「明暗」にあらわれた人間行為を裁判
    *無私、自然に没入、自己と自然を同一視

    「明暗」と「道草」の比較
    *「道草」と同質の日常生活の世界
    *「道草」は 英国から 東京という田舎に帰ってきた物語。主題は 人間の幻滅と自己再発見
    *「道草」は私小説的、「明暗」は本格的な小説

  • 代表作

  • 私はここに描き出されている漱石の姿は自分とそっくりだと感じた。自我に苦しみ他者に脅かされ続けた一人の作家であり生活者でもあった漱石の像は現代にも通じる普遍性をもっているのだ。江藤淳が自身と漱石を重ね合わせるようにして著述していることも大きく影響している。江藤淳の漱石に共感する気持ちが読むものに伝わるので、あたかも江藤淳を通じて漱石と気持ちを通じ合わせているような感動を呼び起こすのだ。とても励ましをもらえる本である。

  • 第2部第4章(P143)まで読んだ。漱石の人として生きる悩みと小説との関わりが伝わってきた。しかし私はあまり漱石を読んでいないため、理解できないところが多すぎる。漱石を読んで改めて手にしたい。

  • 『道草』について考えていたことを、そうそう、って説明してくれた感じ。
    それと同時に漱石が好きな理由も大体分かった。

    「私小説的人間」ね~。
    いろいろ考えさせられる。ちょっと熱っぽい文章だな、ここ。

  • 51ページ、8〜10行目に次のようにある。
    《「文学論」を書いていた漱石には、自らの復讐の対象である文学の感触を楽しんでいるような、奇妙に倒錯した姿勢がある》
    夏目漱石には、文明批評的な要素や、「月が綺麗ですね」に象徴される洒脱な英国風要素や、「猫」「坊っちゃん」に見える前近代的封建制或いは町人文化的要素や、とにかく鬱々としたペシミスティックな要素など見所は沢山あるけれど、僕はこういう彼の天の邪鬼な所がやっぱり好きです。だって、
    《自分の見ているものの醜怪な形を他人に知ってもらえぬ者の焦燥――夜の魔におびえた子供が大人の無感動に対して感じる不信》(49ページ9〜11行》
    があるからです。
    こういう所、漱石の晩年の弟子内田百間を連想させますな。

  • 2009/9/7図書館で借りる
    2009/9/15返却

    読みたい。

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著者プロフィール

江藤 淳(えとう・じゅん):文芸評論家。昭和7年12月‐平成11年7月。昭和31年、「夏目漱石」で評論家デビュー。32年、慶應大学文学部卒。37年、ロックフェラー財団研究員と してプリンストン大学留学。東工大教授、慶大教授などを歴任した。新潮社文学賞、菊池寛賞、日本芸術院賞、野間文芸賞など受賞多数。

「2024年 『なつかしい本の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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