昭和の文人 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2000年6月28日発売)
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101108049

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  • 評論家の平野謙は、自ら積極的に軍部への協力を行っていたらしい
    情報局文芸課の嘱託として、演説の草稿など書いたという
    しかし戦後、その事実を隠そうとして批判を受けた

    平野を批判した1人に、転向プロレタリア作家の中野重治がいた
    中野は、少なくとも転向の事実を曲げて書くことはなかった
    しかし彼にも隠していたことがある
    日本の軍部よりもはるかに厳しい検閲を、共産党が行っていたということ

    中野重治の、かつての同人仲間に堀辰雄がいた
    堀は複雑な家庭環境に育ち、養父に対しては冷淡な男だったという
    一方で、芥川龍之介を実の父親のように慕っていた
    「聖家族」は、彼の心に描いた虚構の、崩壊するさまそのものといえる

    世間に対して虚構の自分を演じてみせることがいけないとは言えない
    生きていくには色に染まる必要もあろう
    西欧文化に並ぶべく、無様な背伸びを続けた東洋人のように
    しかし虚構は虚構だ
    黒いカラスを現実に白と言わせる行為が
    いずれ世界を歪めないわけはないだろう

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著者プロフィール

江藤 淳(えとう・じゅん):文芸評論家。昭和7年12月‐平成11年7月。昭和31年、「夏目漱石」で評論家デビュー。32年、慶應大学文学部卒。37年、ロックフェラー財団研究員と してプリンストン大学留学。東工大教授、慶大教授などを歴任した。新潮社文学賞、菊池寛賞、日本芸術院賞、野間文芸賞など受賞多数。

「2024年 『なつかしい本の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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