張込み 傑作短編集5 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109060

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  • 松本清張『張込み 傑作短編集(五)』新潮文庫。

    松本清張の初期作品8編を収録した短編集。いずれの短編も、ミステリーというよりも普通の人間が内に秘めている業を炙り出しているかのようだ。既読作が多いが、さすがに30年ほど前に読んだ作品なので、細部については忘れている。

    『張込み』。強盗殺人犯の石井久一が訪ねたのは今は普通の主婦で、かつて恋仲にあった女だった。石井を逮捕するために張込む刑事の柚木は主婦の暮らしを壊さないことを願うが…ヒリヒリするような緊張感が文章から伝わる。

    『顔』。劇団員の井野良吉に銀幕デビューの幸運が舞い込む。しかし、井野には知られてはいけない過去があった…井野良吉と石岡貞三郎の心理描写の対比が面白い。

    『声』。前半は結末が解るような単純なミステリーだと思っていたが、見事な仕掛けと捻りに見事に騙された。

    『地方紙を買う女』。地方紙に掲載される新聞小説を読みたいという理由で地方紙を取り寄せた東京の女、塩田芳子。ところが、新聞に男女の情死事件が掲載されたのを契機に新聞小説が面白くないという理由で購読を止める。それをいぶかしんだ新聞小説の作者、杉本隆治はその女に興味を持つが…一つの綻びが…

    『鬼畜』。映画やドラマにもなった傑作。妻のお梅と共に印刷所を営む竹中宗吉は料理屋のお春と男女の関係になり、3人の子供をもうけるが…終盤にミステリーらしい描写もあるが、基本的には人間の業を描いた作品であろう。

    『一年半待て』。現在は良く耳にするDVを下地に、女性の強かさを描いた作品。29歳の須村さと子が夫殺しで被告となったところから物語は始まる。ラストでタイトルの『一年半待て』の意味を知る時…

    『投影』。東京の新聞社を辞めて地方紙の記者となった太一が市政に蔓延る悪を暴く。

    『カルネアデスの舟板』。この短編もまた鬼気迫る人間の業を描いており、秀逸。

  • 短編集であるが、その中で投影はトリックよりも人情味溢れる内容があり、最後のシーンは少し感傷深かった

  • ドラマ「鬼畜」を見て、これが短篇だとどう描かれているのか気になって読んだ。松本清張の短篇集を読むのは初めて。こんなに夢中になって読めるとは思わなかった。

  • カバー 木村光佑
    解説 平野謙

    『張込み』
    なんか読んでもよくわからなかったけど(私がアホだから)
    刑事がずっと張り込みをする話ですね
    奥さんが不倫してたっぽい

    『顔』
    ある劇団に所属する無名の若手俳優の話
    彼は過去に、付き合っていた女性を殺した
    なかなか女性が別れてくれずに面倒くさくなったのだ
    そして、殺しに行った時、一人だけ女性の知人と会ってしまった
    その知人に顔を覚えられていると思い込んでいる主人公は、いつ自分の犯罪がバレるかひやひやしている
    しかし、俳優として大きな仕事が彼に舞い込む
    映画にでて顔が全国に広まれば、あの知人男性に見られるかもしれない
    でも、俳優として大成したい気持ちもある
    そして彼はついに、その知人を殺すことを思いつくが、当の知人はまったく主人公の顔を覚えていなくて……

    主人公の思い込みが結果、どうなるか?
    悪いことをしてはいけませんね~

    『声』
    主人公は、かつて大きな企業の電話番を務めていた。
    200人以上の社員の声を聞き分けられる彼女は
    会社の中でも一目置かれる存在だった。
    しかし、その彼女の良い耳が、悲劇のもとになるなんて。

    『地方紙を買う女』
    全く自分とは関係のない地方の新聞を買う女の話
    新聞を取り寄せるために彼女は「連載されている小説が読みたいので」と嘘を書く
    そして、その嘘の事実が小説家本人にも知らされたことから、彼女の不幸は始まる

    『鬼畜』
    小さな印刷業を営む主人公の男の話
    仕事が軌道に乗り始めた男は、とある店の女中と深い中になる。やがて彼女との間に子供が3人も生まれ、8年間妻に隠し通してきたが、経営が傾いたとき全てがバレる。
    そして家に乗り込んできた愛人は、子供3人だけを残して実家に帰ってしまう
    主人公の妻は、残されていった3人の子供を始末するよう男に命じるのだった

    『一年半待て』
    一度決まった判決内容は変えられないことを利用したしたたかな女の話。かわいそうなだけでは終わらない、女性の怖さを感じる


    『投影』
    これはよくわからなかった(おい)

    『カルネアデスの舟板』
    学者とかつて弟子だった男の話
    師と弟子の立場が逆転する?というか、
    昔の恩師を大事にしないようなやつは、
    偉くなっても大成はしないのかな

    自分が忘れないように書いてるんで意味わかんなくてごめんなさい

  • 先日逝去された渡部昇一先生はかつて『書痴の楽園』のテレビ番組の中で、松本清張作品は短編小説が面白いと語っておられました。
    丁度、松本清張の『鬼畜』を読んでいた。
    物語が進行するうち、かつてテレビドラマで視聴したことがあると感じながらネットで調べてみると、確かにあった。
    主演はビートたけし・妻役は黒木瞳がヒットしたが、それ以前に映画化されていたようである。それは主演が緒方拳・妻役は岩下志麻が最初らしい。
    何とも悲しくて辛い物語であろうか、犠牲者は妾に産ませた子供3人である。大人のエゴのため、子供たちは順番に処分されていくのです。
    決して子供たちは親を恨んでいない、子供たちは親に処分されるのを知っていたのではないかと考えるが故に、胸が詰まる思いがする。
    松本清張は、社会派ミステリー作家として数々の作品群を世に送り出している、暗い闇の部分を抉るような作品はどれもシリアスである。

  • P443

  • 「張込み」「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」の8篇短編集。
    「松本清張の作品は犯人がどうして犯行に至ったかの心理が巧みに描かれていておもしろい!是非読んでみて欲しい」と勧められお借りしたものの、表紙がものすごく不気味でおどろおどろしさ満載で、依然読んだ「黒の画集」読後の気持ち悪さが甦り、なかなか読み始める気持ちを引き出せないまま4ヶ月が経過してしまった。

    なんとか意を決して1話目の「張込み」に取り掛かると、ミステリーの仕掛けもトリックもなく、異常心理の描写もなく、張込みから逮捕までの過程を淡々ち描いて終わったのでほっとした。

    そして、この短編集の中の一番のお勧めと伺った「地方紙を買う女」にとりかかる。
    女遊びの好きな薄汚い男と、それに毒され凶行に及んだ女。

    サスペンスフルでスリリングな文章表現の巧みさは称賛するが、男女の醜い情愛絡みの話が多くて、それに対峙させられる松本清張の作品はやっぱり苦手。

  • 松本清張の短編7編が収録。戦中・戦後・高度経済成長前の日本が舞台のためか、物価の違い、世相の暗さは、否めない。とはいえ、いまなおドラマ化される短編も収録されており、時代が変わっても、変わることのない人間の情愛・欲望が描かれている。

  • 【張込み】【顔】【声】【地方紙を買う女】【鬼畜】【一年半待て】【投影】【カルネアデスの舟板】収録。

    映画化された【張込み】【顔】【鬼畜】他、松本清張初期の作品を新潮文庫にて再編成された短編集。
    どの作品もミステリー的な仕掛けや目を見張るトリックはありませんが、登場人物のディテールが徹底している為重厚な人間ドラマを堪能することが出来ます。
    その典型が【張込み】で、僅か20頁しかありませんが何とも言えない味わいが堪りません。
    【顔】はどんでん返し、【声】はアリバイ崩しも楽しめる秀作。その他【鬼畜】や【一年半待て】など粒揃いで読み応え十分です。

  • 短編

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著者プロフィール

●1909年、福岡県に生まれる。印刷工、新聞社社員を経て42歳で作家の道へ。「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。『点と線』『眼の壁』『砂の器』『ガラスの城』『黒革の手帖』など推理小説の第一人者として多くの作品を発表する一方、『日本の黒い霧』『昭和史発掘』などノンフィクション分野でも活躍。日本ジャーナリスト会議賞、吉川英治文学賞、菊池寛賞、朝日賞など受賞多数。1992年死去

「2017年 『徳川家康 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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