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本 ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784101109077
感想・レビュー・書評
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松本清張氏の傑作短編集第六弾。推理モノ。完全犯罪をめざすが、ひょんなことから犯行が露見してしまう。特殊なトリックなどなく、ある程度は予想された展開ではあるが、これが昭和30年代の作品とは驚きです。
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白い闇:北海道に仕事に行ったきり帰ってこない。東北本線を利用。TVでは新幹線利用。
捜査圏外の条件:会社の同僚が?
ある小官僚の抹殺:砂糖に関する癒着、急行なにわ
巻頭句の女:俳人の女性の死亡にまつわる保険金殺人
駅路:定年退職の男が80万円持参で蒸発。広島可部線
誤差:東海道線から私鉄で2時間の温泉宿。大井川鐡道?
万葉翡翠(ひすい):最初の部分はイマイチ理解出来ず。後半は面白い。準急アルプスの全盛時代。大糸線が開通して間が無い頃かも。しかし細い点と線をうまく結びつけるものだ。
薄化粧の男:テレビで見た事があった。50歳になると美男ほど見にくくなるものか。
偶数:映画の大映しのように出てきた茶碗、表現が上手い。
陸行水行:邪馬台国の調査がからんだトリック。しかし邪馬台国の事を徹底的に調べたものだ。 -
親近者が行方不明になった時に、人はどのような行動を起こすのか。幾重にも物語が派生する松本清張の企みは愛憎を潜ませる。この素朴な激情が人の業として様々な事象に連鎖して、転落する様がドラマとして魅せられる。いいよね清張。
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1957(昭和32)年から1962(昭和37)年、次々と傑作を大量に発表し、清張ブームを巻き起こした脂ののった時期の短編集。調べてみると、ちゃんと発表年代順に作品が並んでいることがわかった。
おおむねミステリ/推理小説の系列の作品が多いようだが、清張の場合は犯人の欲望を描き、倒叙の形で構成された方が彼らしくて面白い。なので、本格推理小説というのとはちょっと違う。興味は卓抜な探偵にあるのではなく、一線を超え犯罪を企むことになった犯人の欲動のあり方にある。そしてそれが、清張らしく一切同情心のない、ドライでクールなストーリーテリングとなっている。やはり読んでいてそれが清張の醍醐味であり、面白い。人間心理の掘り下げがさほど深くもないじゃないか、なんて言い出すと、清張は物足りないと感じることになろう。
本書中、異色なのは最後の「陸行水行」(1962)。邪馬台国は結局どこにあったのかという論争を背景に、独創的な仮説が論じられており、そういえばこの作家はこういう、歴史やら考古学やらが趣味で、かなり該博な知識を持っていたらしい、ということを思い出した。確かにこれはなかなか専門的であり、他の作品とはまるで様相が違う。その分、ここでは、犯罪に向かう人間の欲動というテーマからは離れることになったようだ。
全般に面白く読める短編小説集で、さすが清張という安定感である。 -
短編集として、次の作品が所収。
「白い闇」「捜査圏外の条件」「ある小官僚の抹殺」「巻頭句の女」「駅路」「誤差」「万葉翡翠」「薄化粧の男」「偶数」「陸行水行」
今なお、TVドラマでリバイバルされ続けている松本清張の短編作品。それだけ、どの短編も時代が移ろい変わっても、人間の情欲は不変ということが描かれているためか。
最後の「陸行水行」は、考古学、邪馬台国論争の新説が興味深く描かれており、他の作品とか違った趣を感じる。こうした題材を取り上げるのも、松本清張ならでは。 -
読み応えのある短編集
社会派ミステリーを思い出させてくれた -
□松本清張読み返し【7冊目】
2024-8-26(月)松本清張『駅路』傑作短編集(六)を読み終えました。この短編集全6巻は、松本清張の短編作品を現代小説・歴史小説・推理小説に分けて、3つの領域を各2巻にまとめたものです。本書は推理小説分野の第2集で、傑作短編集全6巻の最終巻でもあります。
読売新聞の「松本清張 今日的意義問う」「分析する書籍刊行続く」という見出し記事で取り上げられていた『松本清張の昭和史』と『松本清張はよみがえる』を読んだのをきっかけに、松本清張作品を読み返そうと思いたちました。本書で7冊目です。学生時代に松本清張の作品はかなたり読んだと思い込んでいたけれど、読み返してみると初めて読む作品ばかり。本書収録の10作品も同様です。松本清張は41年間の作家人生で1,000編以上の作品を書いていると聞きました。昔は、数多い話題作のほんの一部を読んだに過ぎないのだなぁ〜とあらためて感じています。
本書では、『ある小官僚の抹殺』、表題作の『駅路』、『陸行水行』の3作品が特に興味深かったです。この3作品を含め本書収録の作品も、えっ!と絶句するような結末を迎える小説が多く、重くのしかかってくるような読書感の作品が多いですが、それでも惹きつけられます。
『ある小官僚の抹殺』は題名が直截的で読むのにちょっと構えてしまう。でも読み出したら止まらない。この作品は、ある中央官庁の課長の犠牲で幕引きとなった政官財の汚職事件の深層に、「私」警視庁捜査ニ課長が推理しつつ迫る展開です。1960(昭和35)年に発表されたもので、作中に昭和の雰囲気を感じる道具立てがいろいろでできます。夜行急行〈安芸〉、時刻表、駅の立ち売り新聞・・・。昭和の人間としては懐かしさを感じる部分が多い。ですが内容は現在の令和の時代にもありそうな状況を描いているように感じます。ぜんぜん古くない。今も汚職事件報道で見たり聞いたりするような。60年前も現在もあまり変わっていない構造があるのだろうかと思いなが読みました。
『駅路』は銀行営業部長を定年退職した人物が主人公です。律儀な努力で勤め上げ、普通以上の地位と収入を獲得した人物。第二の人生の出発に自由を求めます。事件解明にかかわる年配刑事の言葉が印象に残る。「・・・人間だれしも、長い苦労の末、人生の終点に近い駅路に来たとき、はじめて自分の、自由というものを取り戻したいのではないかね。」同じようなステージにある我が身には心に響く。結末は、自由を取り戻しつつある主人公の、明るい歩みであってほしかった。それじゃあ清張作品ではなくなるかもしれないけれど。
『陸行水行』この作品は推理小説なのだろうか?邪馬台国の謎に迫る古代史の歴史書ではないのか?もしかして両方かもしれない。そう思いながら読みました。それにしても、松本清張の古代史にかける熱い想いが伝わってくる作品です。『魏志倭人伝』『古事記』などを縦横に読み解きつつ、諸説を比較検討しながら陸行水行の謎に迫る松本清張の筆は、私にとって驚きの連続でした。この謎の追究は一種の推理だという主旨のことを、筆者は作品の本文で書いていました。この作品は古代史の謎に迫る推理と、この謎解きにかかわる登場人物たちをめぐる事件の真相に迫る推理。推理小説の二重奏だと、読み終わって感じる。何度でも読み返したい作品です。
だいぶ時間はかかりそうだけど、これからも松本清張作品の読み返しを続けようと思っている。
【本書収録作品】
・白い闇
・捜査圏外の条件
・ある小官僚の抹殺
・巻頭句の女
・駅路
・誤差
・万葉翡翠
・薄化粧の男
・偶数
・陸行水行
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巻頭の話がサスペンス向きで面白かった。
どの話も独特な暗さを感じるの自分だけだろうか。
短編とはいえ取材のみならず勉強(邪馬台国の辺りとか)はさすが巨匠だと思う。 -
読んだことのある作品もあった。
短編が面白いのはよくわかった。
長編も読んでみようかなぁ。
著者プロフィール
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