- 本 ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101109121
感想・レビュー・書評
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松本清張原作の映画を見てるような気になった。
まだ作家として途上にあった頃だから、ほぼ作家になるまでの話だけど、人生そのものが、その後に書いた小説の礎になったことが、強烈に伝わってくる。
頁数は決して多くないけど、情報量半端ない。
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作家というのは出生から恵まれた環境の人が多いと思ったがその真逆であった。箒を売りに行ったりしたところで後の記事のネタが生まれたのだろう。それにしても壮絶な人生だ。
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2009年…太宰治生誕百年の年、
ボクは、太宰が入水自殺した玉川上水をたどり、
三鷹の禅林寺に墓参した。太宰の墓の前には、
森林太郎…森鴎外の墓がある。
太宰と鴎外…およそかけ離れた作家を
つなぐかのように感じられるのが松本清張だ。
松本清張は太宰と同年の生まれ…しかし、
清張が作家として世に出たとき、すでに太宰は亡かった。
清張が太宰を知らなかったはずはない。
しかし、太宰に関して書いたものをボクは知らない。
その一方で、鴎外を描いたものは数多ある。
その秘密を知りたいと思った。
折しも、今年…2012年は、鴎外生誕150年、清張没後20年にあたる。
清張が作家になるまでを知りたくて本書を手にしたのだった。
あとがきにこう記されている…
-いわゆる詩小説というのは私の体質に合わないのである。
たしかに本書で、きらびやかな青春が描かれることもなく、
ドラマティックな成功譚が綴られるわけでもない…のだけれど、
だからこそ、清張作品の虚構が照射するものは、
真実をつまびらかにしているように思われてならない。
今年の夏…清張が鴎外に関して書いたものを読みながら、
二人の足跡をたどってみようと思う…清張が育ち、
鴎外が暮らした小倉…鴎外の出生地・津和野…
ボクの旅の愉しみは、頭の中でまわりはじめてるんだ。 -
松本清張自身が、作家になるまでの自身の半生をつづった自伝的作品。恵まれない家庭環境、生い立ち、親と家族の家計を子ども時代から支え続けた筆者の境遇などが描かれている。
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実に誠実で素朴な私小説。
清張が何ゆえに 文学の道に進んだのか
本のわずかな動機だった。
その動機を最大限活かした。
清張が、印刷の下働きをしているときも
朝日新聞に勤めているときも
『なにかがたりない』『なにかがむなしい』
と感じながら生活していた。
しかし家族の生活を支えていかなければならない
という二つの労働が必要だった。
清張の常なる向上心というべき姿勢が
文学史に 残る実績を作り上げた。 -
松本清張の作品が
好きなので本書を
みつけたときは
著者の背景を
知りたくて
嬉しかった。 -
松本清張、唯一の私小説
結婚の馴初めなどは一切書いてゐないが、立派におもしろかった。清張は私小説が苦手で、これも気に入らなかったとしてゐるが、私には十分な私小説に思はれる。小卒の人間の苦心惨憺たる半生が、「或る「小倉日記」伝」同様に、端正でくどくどしない文章で瑞々しく語られてゐる。
苦労人で、後半で七人家族を養ふことの懊悩がさらりと俯瞰で示されてゐる。達者だと思ふ。至言と感じた文も多かった。たとへば、兵器廠の片手の管理人のくだりの「世間の人は組織の大きさだけを見る」で、かういふ達観したやうな文が好きだった。 -
「松本清張」が作家デビュー前までを回顧した自叙伝『半生の記』を読みました。
『表象詩人』、『溺れ谷』、『新装版 遠い接近』に続き、「松本清張」作品です。
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著者を育んだ故郷・小倉の記憶、そして父母のこと、兵役や仕事のことなど……。
いかにして「作家・松本清張」は生れたのか?
文壇デビュー以前の回顧録。
日本が破滅に向って急速に傾斜していった時代、金も学問も希望すらもなく、ひたすら貧困とたたかっていた孤独な青年、「松本清張」。
印刷所の版下工として深夜までインクにまみれ、新聞社に勤めてからも箒の仲買人までしながら一家八人の生活を必死で支えたその時代が、今日の「松本文学」を培ったのだった――。
本書は、社会派推理小説の第一人者である著者が若き日を回想して綴る魂の記録である。
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『表象詩人』や『新装版 遠い接近』等、「松本清張」の実体験が色濃く反映された作品を読んで、「松本清張」の自叙伝である本作品を読みたくなったんですよね、、、
貧しく孤独な生い立ち、失意の青春時代、金も学問も希望もなく印刷所の版下工としてインクにまみれていた若き日、旧日本軍における召集・軍隊生活… 作家としてデビューするまでの苦闘の日々を、切々と告白した文章が心に響いてくる印象的な作品でしたね。
■父の故郷
■白い絵本
■臭う町
■途上
■見習い時代
■彷徨
■暗い活字
■山路
■紙の塵
■朝鮮での風景
■終戦前後
■鵲(かささぎ)
■焚火と山の町
■針金と竹
■泥砂(でいさ)
■絵具
■あとがき
どこかで見たことのある場面だな… と思わせる部分が何か所かあり、これまでに読んだ「松本清張」作品の題材には、実体験が活かされている部分があるんだな と改めて感じましたね、、、
親の愛と束縛、そして、絶望するような極貧と虚しさの中で家族を養うために、小学校を出てから働きづめの毎日… 想像を絶するような苦労を重ね、40歳を過ぎてから作家として成功した人生を辿ることで、「松本清張」の凄さを感じました。
自分だったら挫折していただろうなぁ… ここまでのハングリー精神は持てなかったと思います。
『焚火と山の町』で、戦後間もない広島を訪ねた際の記載があり、比治山公園や宇品、広島駅近辺のヤミ屋・猿猴橋、八丁堀・福屋デパート等々が紹介されていました… この部分は食い入るように読んじゃいましたね、、、
本人も広島市(現在の南区京橋町)出身らしいですし、母親が東広島市の志和出身ということもあり、広島には親近感や郷愁の気持ちがあったのかもしれませんね。 -
昔読んだ本
著者プロフィール
松本清張の作品





