眼の壁 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109176

感想・レビュー・書評

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  • 清張没後30年 WOWOWドラマ化。契約してないので観れませんが。なぜ、眼の壁を?まだ本棚に残っているので再読です。
    資金調達に窮した昭和電業製作所。白昼のとある相互銀行(平成5年相互銀行法廃止)で、三千万(今だと4or5億くらい?)の手形詐欺にあってしまう。担当者は自殺。部下に遺書ともいえる事件の詳細を書いた手紙を残す。部下・萩崎は友人の新聞記者と共に、事件を追い始める。それは、連続殺人事件へと繋がっていく。
    経済犯罪小説の先駆け。事件に絡む右翼組織。作者らしい、伊勢や木曽などの地方都市への旅情。
    今では考えられない社会常識の中での推理小説ですが、最後まで何を追い詰めているのかさえもわからない名作だと思います。

    でも、これ小説の手順で手形パクリ詐欺ができるとは思わないでくださいね。詐欺事件の手法としては、簡易すぎます。手形を準備していますけどを、融資の種類、手形貸付あるいは割引手形か、さえも明確でない。まして、融資取引を契約していない銀行とは不可能。なーんて重箱の隅突いていたら、作者は、そこのところを故意に簡易化したようです。
    この詐欺の後の事件の背後を重視ですね。

    そして、なんと今年度後期に手形交換所がなくなるみたいなんですよね。なんと電子化。今では、電子手形なる物も利用されているとか。経済犯罪も電子化でしょうか。現物の手形を使った詐欺のドラマはそろそろ最後ということでしょうか。

  • 一気読み。面白かった。上司が手形詐欺に遇い自殺。主人公はその犯人を探し出そうとするも、大きな組織の存在が見え隠れする。なかなか掴めない黒幕、殺害方法のトリックなど最後までわからず楽しめた。手形詐欺の現場、銀行の応接室に連れてこられたら信じてしまうよね。さすがに今の時代はこんなケースはないだろうけど。臨場感溢れるミステリーだった。

  •  
    ── 松本 清張《目の壁 19570414-1229 週刊読売 19710330 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101109176
     
    (20230224)
     

  • 巧妙な手形詐欺で3000万を騙し取られ責任を取り自殺した会計課長の部下の萩崎竜雄は、義憤に駆られ真相究明に動き出す。友人の田村と共に探っていくが、組織によって第二第三の事件が起きる。長編小説だが、会社員の主人公が命の危機に直面しながらも上司が死んで真犯人がのうのうと生きているのが許せないという気持ちで踏ん張るのが共感する。

  • 「松本清張」の長篇ミステリー作品『眼の壁』を読みました。

    『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    手形詐欺の驚くべき手口! 
    上司の汚名を晴らすため、ひとりの男が立ち上がった。
    傑作サスペンス!

    白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。
    責任を一身に負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた「萩崎」は、学生時代の友人である新聞記者の応援を得て必死に手がかりを探る。
    二人は事件の背後にうごめく巨大な組織悪に徒手空拳で立ち向うが、せっかくの手がかりは次々に消え去ってしまう……。
    複雑怪奇な現代社会の悪の実体をあばき、鬼気迫る追及が展開する。
    -----------------------

    「松本清張」の短篇を連続3冊読んで、久しぶりに長篇を読みたくなったので本書を選択しました。

    400ページを超える長篇でしたが、面白かったので、一気に読んでしまいました、、、

    昭和32年の4月~12月に『週刊読売』に連載された作品なので、それから60年近くの年月が経っていますが、現在でも十分愉しめる内容に仕上がっていますね。

    昭和電業製作所の会計課長「関野徳一郎」は、つなぎの資金を調達しようとして、R相互銀行本店の会議室でパクリ屋グループによる巧妙な詐欺(篭脱け詐欺)に引っ掛かり、3,000万円(現在だと4億円くらいとか…)の手形を詐取される、、、

    会社は大損害を被り、その責任を感じた「関野」は自殺、遺書により過程を知った「関野」の部下「萩崎竜雄」は、自ら真相を追跡しようと決心… 学生時代の友人で新聞記者の「田村満吉」の協力を得ながら事件の真相を探る。

    この序盤の展開から物語に引き込まれましたねぇ… 「萩崎」に感情移入して読み進めました。

    「萩崎」と「田村」は、「関野」が付き合いのあった高利貸の「山杉喜太郎」や、その女秘書「上崎絵津子」を探るうちに、早い時点から事件の黒幕として右翼の「舟坂英明」の存在に気付きますが、なかなか核心に迫ることができません、、、

    その間に、会社からの依頼で事件の真相を探っていた顧問弁護士「瀬沼俊三郎」の部下で元警察官の「田丸利市」は、犯人グループの一味と目されるバーテンダーの「山本一夫(本名:黒池健吉)」に近付こうとして「黒池」が射殺されます… その後「瀬沼」が誘拐され長野県西筑摩郡の山中で死体(死因は餓死?)として発見され、「黒池」も同県北安曇郡の山中で白骨化した死体(死因は自殺?)として発見されます。

    「瀬沼」と「黒池」の死については、静養を理由に荻窪の自宅から伊勢に移動した「舟坂」が裏で糸を引いていると思われますが、巧妙なトリックにより、なかなか真相に辿り着くことができません、、、

    しかし、二人は「瀬沼」を東京から列車で運び出したトリックや山中に迷い込み餓死したと見せかけたトリック、「黒池」の死体を数日で白骨化させて死後数ヶ月と見せかけたトリックを暴き、そして「舟坂」の正体… 不明だった出生の秘密(出身地や「黒池健吉」、「上崎絵津子」との血縁関係)を解き明かして、アジトとしていた瑞浪(岐阜県)の精神病院「清華院」で追い詰めます。

    そして、衝撃的な結末、、、

    次に命を狙われていた「上崎絵津子」が沈められるはずだった濃クローム硫酸の風呂に自らが落ちてしまい、跡形もなく溶解… 現在の映像技術で映画化すると、かなりグロテスクなエンディングになりそうですね。

    本作品、昭和33年に「佐田啓二」主演で映画化されているようです、、、

    当時のことなので、エンディングシーンは、そんなにリアルに描かれていないだろうと思います… プロットや展開は面白いので、機会があれば観てみたいですねぇ。



    以下、主な登場人物です。

    「萩崎竜雄」
     電機メーカー・昭和電業製作所の会計課次長。
     本作の探偵役。

    「田村満吉」
     新聞社社会部の記者。
     竜雄の学生時代の友人。

    「関野徳一郎」
     昭和電業の会計課長。
     竜雄の上司。

    「瀬沼俊三郎」
     昭和電業の顧問弁護士。

    「岩尾輝輔」
     長野県選出の代議士。

    「山杉喜太郎」
     麻布に事務所を持つ山杉商事の社長。

    「上崎絵津子」
     山杉商事の女秘書。

    「舟坂英明(山崎事務長)」
     戦後に勢力を伸ばしてきた右翼の新鋭。
     荻窪在住。

    「梅井淳子」
     西銀座の酒場「レッドムーン」のマダム。

  • 6月のWOWOWドラマ前なのでネタバレなしで。
    初めて松本清張作品を拝読した。
    前半のねっとりゆっくり丁寧な描写で物語の世界に惹き込まれた。
    要素が集まり物語が展開し始めると非常にスピーディーで夢中になり一気に読めた。

  • 資金にショートした民間会社。短期資金調達のために金融業者・高利貸金業者社長の口利きで相互銀行から資金調達できることになる。しかし、その実態はパクリ屋、詐欺集団の手中に落ちる。資金調達の担当者は、自殺。その真相を調べるために、その部下、部下の友人の新聞記者が奔走する。右翼団体、代議士、戦中戦後の混乱、貧村地域の悲哀、偽装殺人など徐々に真相が明らかになっていく。

  • <「歴史」を考証しながら「社会」を炙り出す作家へ! 「時代」を築いた作家による「古典」>


    『目の壁』は、手形詐欺にあった責任を苦に上司が自殺したことから、熱い主人公が立ち上がり、友人にして新聞記者の手を借りながら繰り広げる、大胆な素人探偵物語です! 途中、事件を追っていた弁護士が命を落とし、調査活動は一層な危険味を帯びていきます。
     詐欺をはたらく闇の組織へ、そして真相へと迫る主人公。しかし、組織に関わる者と知りつつも一目惚れした美人秘書の残像が、彼の脳裏にちらつき……★

     直木賞候補作『西郷札』、そして芥川賞受賞作『或る「小倉日記」伝』。初期の松本清張は、文壇に高く評価された一方で、けれん味のない【文学作品】を書いていたのだと思います。
    (→https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4334074804

     他方、この作品で、著者は「歴史」だけではなく「社会」という近さから、悪の存在について語り始めた気がしたのです。
     現代の社会構造で、一生のうちに金融機関を全く利用しない人はいないはず。ところが、信用第一(一応ね……★)の銀行内で真昼の犯行が行われたわけで……。本書は遠い昔の話ではなく、犯罪組織、詐欺グループはあなたの近くにもいるかもよ、という距離感で迫る怖さがあります★

     さすがに、捜査過程は「時代」を感じさせます。移動手段や時間感覚が違いすぎますね。新幹線のない鉄道の雰囲気や、都市と地方の激しすぎる隔たり、部落に関する記載……★
     これらが犯行そのものに大きく影響しているがために、古い小説だなという印象はぬぐえないかもしれません。細部に過剰なリアリティを求めず、時代劇のようなフィクションとして割り切って読むのがよさそう。
     大筋では、悪いヤツが人からお金を搾り取ったり、都合よく存在を消そうとしたりする危険は、いつの時代も変わらないですしね☆

     時代を代表する作家がターニングを迎えた気配を濃いめに湛えた作品です。松本清張、という作家の変遷を追いかけたい人にとっては、絶対に見逃し厳禁の「古典」の一つではないでしょうか?

  • 待ってくれ...!結局二見ヶ浦の旭波荘にいた舟坂は誰だったんだ...?!すごい威圧感で田村と一緒に汗かきながら読んでいたのだが??
    そして結局最後まで竜雄と上崎絵津子が出会わない事に動揺した。2人の出会いが読みたかった。

  • この作品は、昭和33年に刊行された年代物です。
    当時、清張は「点と線」も執筆しており、次第に文壇での地位を高めていきます。
    作品の内容は、手形詐欺の被害を受けた会社の若手次長と彼の友人とが、事件の真相を追うというスリリングなもので、読書の面白さを味わえる秀作です。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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