黒い画集 (新潮文庫)

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レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109190

感想・レビュー・書評

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  • 「遭難」「証明」「天城越え」「寒流」「凶器」「紐」「坂道の家」の7編を収録。
    銀行内での権力、上下関係を描いた「寒流」、中年になって若いホステスに入れあげてしまう「坂道の家」が面白かった。

  • 短編七編のうち四編までが、男と女の愛憎を描いている。
    一般論として、女の嫉妬は時として激しいが、男の嫉妬は醜悪に見える。
    と、つくづく思わされたのが「坂道の家」である。
    全体的には、男には男の立場の秘密、女にも同様に持ち合わせているのです。
    自らの安全と出世を願う人たちは、誰しもが持っている不透明な部分を、見せかけのアピールで透明性を保つことで、組織の中で安心感を与え出世コースを辿るのであろうが、少しでも不透明な部分を見せてしまうと排除されてしまう。

  • 浮気や不倫が発端で破滅の道へ。。そのなかでも「遭難」や「天城越え」はともかく、「寒流」や「坂道の家」は読んでて痛々しい。

  • 「遭難」「証言」「天城越え」「寒流」「凶器」「紐」「坂道の家」の七つ短編が収録。昭和33年から昭和35年までの間に「週刊朝日」に連載された作品らしい。
    確かに、昭和、安保闘争の頃の社会・世相が舞台になっているのを感じるとともに、七編のうち四編が男女の「浮気」が主題になっている。

  • 安定のミステリー。

    男女の、社会での嫉妬、人間の末恐ろしい感情や行く末など読めて、ゾッとした。

    しかしこの人間の感情は誰しもがあるものであり、それによって人生が変わるかも。

    そういうところが見れたので、怖いと同時に心理描写がやはり上手いと感じた。

  • 松本清張作品だが、社会派と言うよりは「奇妙な味」系の短編集。いずれも読み応えのある作品だが、「凶器」のブラック感が特に印象に残った。

    「遭難」
    前半は、山岳雑誌に掲載された道迷い遭難事故の手記。後半は、その時のリーダー江田が被害者の姉の依頼で従兄の槙田と弔い山行に出掛ける様子が江田の視点で描かれる。後半は倒叙系に変わって、二人の心理戦を描いたサスペンス小説。山岳小説としても楽しめる作品。

    「証言」
    会社や家族に内緒で元部下の女性をかこって逢い引きを重ねる石野。その帰りに近所の住人と会ったばかりに厄介事に巻き込まれる。「人間の嘘には、人間の嘘が復讐する」という結末。

    「天城越え」
    主人公が家出をして、天城越えをしようとするも断念し、引き返す際に魅力的な女と出逢い、その女と別れるまでの印象深い体験談が綴られる。年月が経ち、印刷工になった主人公のもとに、警察からその当時に起こった事件資料の印刷を依頼される。その資料が紹介されるとともに、意外な真相が明らかに。

    「寒流」
    主人公沖野は、大学の同期であり、銀行での上役にあたる桑山に恋人奈美を奪われ、仕事でも地方支店という”寒流”に左遷され、復讐を果たそうと画策するが、何度も苦い思いを味わう話。沖野は無用な執着に捉われて、エネルギーを使うところを間違えていると感じる。ラストはちょっとあっけなく、物足りない。

    「凶器」
    九州の田舎の村で見つかった撲殺死体。容疑者の女が浮かび上がり、凶器の「丸太ン棒のようなもの」を探すが、見当たらない。刑事は三年後にふとした出来事から、その凶器に思い当たる。最後の一行のブラック感がすばらしい。

    「紐」
    多摩川の川原で見つかった男の変死体。その妻の鉄壁のアリバイ崩しの話。最初は刑事視点で、途中から保険会社の調査員の視点で、調査の過程が描かれる。真相自体は想定の範囲内であったが、死体の両面の死斑の謎、最後に明らかになるある人物の真意が面白い。

    「坂道の家」
    キャバレーで働く若い女とひょんなことで知り合った中年男がその恋にのめり込んで、身を滅ぼしていく話。騙される男の哀れさが痛切に描写されている。真相発覚に至る手掛かりが工夫されている。

  • ラジオで紹介された小編の主人公と同姓である事がキッカケになって購入したもの。

    残念ながら、本編中一番ショボい役柄だった…

    松本清張は点と線以来、2冊目。作者の風貌からあまり興味を持っていなかったのだが、今回比較的小編という事もあり、最初から最後まで飽きる事なく読めた。

    殆どの事件が、オトコとオンナの関係、特に不倫関係から発したもので、余りにも年の割にウブな男共にハラハラしたりしながらも楽しめた。

  • 7つの短編・中編が収められている。
    読みたかったのは「遭難」。
    会社の山仲間3名で登山に出かけたところで遭難が発生。疲労凍死で1名が亡くなってしまう。
    その死因に疑問を持った親族による追及が始まる。
    あっと驚く結末に。

    その他は、不倫ものが多いかな。それなりに面白い作品が入っています。

  • 短編集です。
    男と女の欲望が絡み、、愛憎、、殺人へと。。

  • どこかで「天城越え」の粗筋を読み、きちんと読了したいと思い幾ばくか厚い本を手に取った。
    やはり読書は、裏切らない。
    いや、この場合は松本清張は裏切らないというのが正しいのであろう。
    松本清張といえば、サスペンスドラマの原作者としか認識がなかった。
    なのでこの「黒い画集」は、私にとって初めての作品となる。

    収録された7篇より、掻い摘んで書評を認めたいと思う。

    「遭難」
    登山パーティと、遭難した者の家族と周到に練られた計画。
    心理戦という名の盤上で指される、将棋の如き繰り広げられる攻防。
    この緊張感は映画でも漫画でもなく、文章だからこそいい。

    「天城越え」
    ある青年の回想として、物語は語られ始める。
    少年時代に芽生えた独立心と、徒歩で向かう人生の冒険。
    そこで出会った人物たちと、巻き起こる殺人事件。
    迷宮入りとなった事件は、大人になったいま意外な形で真相が判明する。
    予想を遥かに上まる展開を、読まずにいられようか。

    「寒流」
    主人公の気持ちに移入し、読者は復讐心に駆られる。
    果たして、主人公の報復は叶うのか?
    ぜひこの感情を、体験して欲しい。

    「凶器」
    著者のミスリードにより、読者は凶器はあそこじゃないかと推測する。
    がしかし、凶器は意外な物で今はその形を見ることはできない。
    貴方は、これを読み解くことはできるか?

    ・総評
    基本的には愛憎の縺れか、一方的な想いで引き起こる事件を描く。
    斯様な分野は好き嫌いはあるだろうが、一読に値する推理小説の短編集。

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著者プロフィール

●1909年、福岡県に生まれる。印刷工、新聞社社員を経て42歳で作家の道へ。「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。『点と線』『眼の壁』『砂の器』『ガラスの城』『黒革の手帖』など推理小説の第一人者として多くの作品を発表する一方、『日本の黒い霧』『昭和史発掘』などノンフィクション分野でも活躍。日本ジャーナリスト会議賞、吉川英治文学賞、菊池寛賞、朝日賞など受賞多数。1992年死去

「2017年 『徳川家康 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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