蒼い描点 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101109213

感想・レビュー・書評

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  • まだまだあった、読み残しの清張作品。
    『美しき闘争』(角川文庫)と『蒼い描線』(新潮文庫)

    昭和時代を感じるのはおもしろいし、しかも古びていないところがすごい。
    両書とも熱海や箱根が舞台、そしてストーリー展開によって、日本全国縦横に旅する、その土地土地が目に浮かぶ。

    『美しき闘争』(角川文庫)1962年雑誌に連載、1984年カドカワノベルズ刊行
    『蒼い描線』(新潮文庫)昭和33年7月から週刊誌に連載、昭和34年(1959年)に光文社から刊行

    巻末解説とあるけれど、ほんとうにほんとうに清張さんの作品は多いのだ。

    清張さんはわたしが児産みが一段落して(笑)子育て真っ最中の1972年ごろから、文藝春秋社の全集を買って読んでいた。カッパノベルズなどで同時進行に読んでいなかったのだからというわけで。

    特に全集の最初の巻数は清張さんが選んだ(傑作と思われたかどうか?)ばかりだったので、傑作集のような限られていたのものだったのだね。その後、文藝春秋社の全集は続巻を出したようだけど。

    両書とも女性の出版業界における編集者が主人公、働く女性をめぐる描写の昭和なのが、かえって面白い。

    ストーリ展開の調査旅先地名も描写も、わたしが行ったことがある、住んだことがあるところが多い。知った土地名だからか、なお深いなあ、なつかしいなあと、わたしが年とって経験していることも悪くない。

  • 「松本清張」の長篇ミステリ作品『蒼い描点』を読みました。

    「有吉佐和子」の『悪女について』を読んで、昭和の雰囲気の作品を読みたくなったんですよね、、、

    「松本清張」作品は、今年5月に読んだ『松本清張傑作選 黒い手帖からのサイン―佐藤優オリジナルセレクション』以来ですね。

    -----story-------------
    女流作家「阿沙子」の秘密を握るフリーライターの変死――事件の真相はどこにあるのか? 
    代作の謎をひめて、事件は意外な方向へ……。
    -----------------------

    1958年(昭和33年)7月から1959年(昭和34年)8月に『週刊明星』に連載された長篇ミステリ小説… 若い女性編集者「椎原典子」が、先輩の編集者「崎野竜夫」と協力しながら、女性作家「村谷阿沙子」の周囲で続発する怪事件の謎を追跡するロマンティック・ミステリーです、、、

    700ページ近いボリュームでしたが、面白かったので、比較的サクサクと読めましたね… 


    雑誌『新生文学』の編集者「椎原典子」は、今月も締切りに遅れそうな「村谷阿沙子」の原稿を催促する目的で、「阿沙子」の滞在する箱根宮ノ下へ向かった… 途中、顔見知りの「田倉義三」を見かけるが、「田倉」は「村谷女史は最近苦しそうですな」と意味深長な言葉を「典子」に残した、、、

    木賀温泉に宿を取り近くを散歩していた「典子」は、「阿沙子」の夫「亮吾」が謎の女性と佇んでいるのを目撃し、さらに翌朝、「阿沙子」と「田倉」らしい人影を発見する… 原稿は遅れて「典子」の滞在は長引くが、その間、河原で「田倉」の転落死体が発見された。

    「田倉」が死んだ夜に「亮吾」が失踪、加えて東京に戻った「阿沙子」も、精神病院に入院後行方不明となる… 不審な事件の続発に疑問を抱いた「典子」は、上司の「白井編集長」の助言もあり、先輩の「崎野竜夫」とともに、真相究明に乗り出す、、、

    「典子」と「崎野」は、「阿沙子」の作品が盗作だという疑惑を抱きつつ調査を進め、「田倉」や「白井」等が「阿沙子」の父で文学者だった「宍戸寛爾」を通じて知り合いだったことを突き止め、その関係者の中に盗作のことを知る人物がいるのではないかと推理する… 徐々に人間関係が明らかになっていくが、調査を進めるうちに「村谷家」の女中「広子」、「田倉」の妻「よし子」、その弟「坂本浩三」、「浩三」の職場の同僚「木下一夫」が次々と関係者行方不明となっていき、調査は行き詰まる。

    編集長の「白井」が、「典子」と「崎野」の二人を積極的に事件に巻き込みつつ、意図的にミスリードさせるような言動があり、不審な人物だなぁ… もしかして事件の黒幕か?と思ったのですが、その背景には複雑な事情があったんですねぇ、、、

    そして、多くの人物が失踪した理由は、ひとつではなく、複数の事情があったなんてね、そして、まさか「よし子」が周囲から勘違いされていた別人だったとは… 男女の愛憎が事件の遠因となっているところは、「松本清張」らしいところでしたね。


    以下、主な登場人物です。

    「椎原典子」
     去年女子大を卒業し、文芸出版社「陽光社」に入社したばかりの新米編集者。
     村谷阿沙子を担当している。23歳。

    「崎野竜夫」
     典子の先輩編集者。
     冴えたひらめきを見せ、典子をサポートする存在となる。

    「村谷阿沙子」
     3年前にデビューし、現在ジャーナリズムの注目を浴びる女性作家。
     遅筆で有名。32歳。

    「村谷亮吾」
     村谷阿沙子の夫。
     証券会社の社員だが、妻の盛名に隠れて影が薄い。

    「白井良介」
     典子の上司で、月刊誌「新生文学」の編集長。

    「田倉義三」
     出版社に籍を置くものの、取材ネタを他社に売り歩くなど、問題ある行動が多い。

  • 女性盗作作家に絡む悲劇、清張作にしては若干迫力に欠けるか?

  • 昭和34年に発行された作品。女流作家の原稿係を担当する若手女性出版社社員が主人公。主人公は、入稿が遅れている女流作家を追って、箱根を訪れる。そこで遭遇した知り合いの中年フリーライターの自殺事件に遭遇。警察の自殺の見立てに不信を感じ、一方、担当する女流作家の代筆疑惑も持ち上がり、同僚の男性社員とその真相解明に動き出す。箱根、犬山、秋田、真鶴と全国を当時の国電で動き回る。携帯電話もな時代、電報や遠距離電話の申し込み、速達便などが連絡ツール。

  • 北九州の清張の記念館に行こうと思い立ち、旅の途中にと手に取った本。600ページを超える小説だが、ゼロの焦点や砂の器よりも軽く読めた。最後の加害者の手紙が印象的。

  • サスペンスでは無かったけど展開に引き込まれる

  •  ちゃんと、日本の少し古い名作も読んでみよう! と思って、手にとってみたんだけど。
     松本清張さんは、中居君がドラマの主人公をやってた「砂の器」を読んだらかなり面白くて、他のも読んでみようとずっと思ってて。
     今回、この話を読んでみたんですが……

     うーん、イマイチ。
     現代的な文章を読み続けすぎたせいなのか、やたら文章がくどく感じたり。
     何だか、合わなかった。

     おまけにこういう、男女の関係絡みの推理小説ものって、ちょっと飽きてるんだよな……
     別に、それはいらないだろう……と。

     個人的には、砂の器みたいにもっとどろどろしてるほうが好きです。
     他の小説読んだ方がよかったのかなぁ……
     失敗したかも……

  • ドラマを見ました。菊川令主演。ありがちー・・・な作家のドロドロなお話。

  • 長かったー。

    松本清張の作品で、女の人が主人公なのはあんまり読んだことがなかったので、ちょっと新鮮でした。
    事件の流れももちろんはらはらだったけど、ちょいちょい挟まる恋心も、読んでてどきどき!

  • 松本清張『蒼い描点』読了。清張先生にしては割と軽めなミステリ。箱根で起きた殺人事件を出版社に勤める男女が追い、その謎を解いていく。親切なのは、人物関係など複雑な点をさらっとまとめたり、さりげなーく紹介し直してくれるところ。頭の悪い私でもこんがらがらずに、ぐんぐん面白く読めた。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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