砂の器(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109251

感想・レビュー・書評

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  • もしも。
    もしも、あの時。
    もしも、あの時、過去に戻れたとしたなら。
    彼は彼の人生のどのあたりまで戻ればよかったのだろう。
    過去を遡れども遡れども、彼の力ではどうすることもできない〈社会〉や〈法〉というものが、彼の宿命を決定づけていたのならば、彼はどうすればよかったのだろう。
    過去に戻れたとして変えるべきだったのは、彼か、それとも彼を生み出した社会だったのか。この社会こそが『砂の器』なんだ。

    読み終えていちばんに考えたことだ。
    上巻を読んだときは、被害者がなぜこんな目にあったのか。善行の人である被害者に裏の顔があるとも思えないし、もしかして犯人の逆恨み、それとも犯人に対して被害者は何らかの地雷を踏んだのか。そんな動機の部分が気になって仕方なかったのだけど、それよりももっと重要なテーマが、実はあるのではないかと気づかされた読後感だった。

    今西部長刑事の捜査はしだいに犯人に近づいていく。何度も犯人によって辛苦をなめることになりながら、それでもこつこつと事件に向き合う、これこそが刑事の執念というべきものだろう。
    若手の吉村刑事は、その老練の刑事の背中を追い、そして信頼しあうバディとなって事件を追う。
    私は上巻で〈ヌーボー・グループ〉と今西部長刑事の生き方の対比が面白いと思ったのだけど、クライマックスで今西刑事が吉村くんへと伝えたひと言に、また違う面白さを味わうことになった。
    〈ヌーボー・グループ〉と吉村くん。古きものを嘲笑し、蔑ろにして新しいものを求めていく生き方と、古きものを敬い継承しながら、新しく自分の道を切り開いていくものの、若者たちの対比。
    ホシをあげる、そのいちばんの見せ場。そこでの今西部長刑事から吉村刑事へのバトンタッチ。
    「本人に逮捕状を見せるのは君の役だ。君がしっかり本人の腕を握るんだよ」
    今西部長刑事の言葉に胸が熱くなり、ぐっときたのだ。

    清張さん没後30年。読めるだけ読んでみたい。
            『この作家この10冊』
            『文豪ナビ 松本清張』より
    ☆ゼロの焦点    黒い福音
    ☆点と線      球形の荒野
    ☆波の塔      神々の乱心
    ☆砂の器     ☆或る「小倉日記」伝
     黒の回廊     天城越え
     かげろう絵図   一年半待て
     黒い手帖(随筆)  家紋
     Dの複合      顔
     西郷札      鬼畜
     けものみち    黒地の絵
     無宿人別帳    カルネアデスの舟板
     大奥婦女記    日本の黒い霧
     彩色江戸切絵図  現代官僚論
     乱灯 江戸影絵   昭和史発掘
     天保図録     陸行水行     
     西海道談綺    古代史疑
     私説・日本合戦譚 天皇と豪族
     私説古風土記   ペルセポリスから飛鳥へ
     張込み(なおなおさんよりオススメ)
     共犯者( 同上 ) 
     声( 同上 )     
     砂漠の塩( 同上 )         

    • 地球っこさん
      そうです、和賀英良(加藤剛さん)の言葉です。
      昭和の俳優さんて、イケメンという言葉よりハンサムという言葉が似合う気がします(*^-^*)
      そうです、和賀英良(加藤剛さん)の言葉です。
      昭和の俳優さんて、イケメンという言葉よりハンサムという言葉が似合う気がします(*^-^*)
      2022/09/03
    • なおなおさん
      地球っこさん、ごめんなさい^^;
      地球っこさんが「ハンサム」と表現されたのを読んで実は笑っちゃったんです。今は「イケメン」という時代だから。...
      地球っこさん、ごめんなさい^^;
      地球っこさんが「ハンサム」と表現されたのを読んで実は笑っちゃったんです。今は「イケメン」という時代だから。
      でもでもっ!なるほど〜☆加藤剛さんのような方はイケメンというと軽くなるかも。
      さすが地球っこさんですわ(*゚▽゚)ノ
      昭和=ハンサム、平成〜=イケメン ね!
      了解です(`・ω・´)ゞ
      2022/09/03
    • 地球っこさん
      うふふ、そうなんです。
      あえてのハンサムです(*>∀<*)
      よくぞ気づいてくださりました 笑
      昭和の俳優さんて、なんか凄味や色気や落ち着きや...
      うふふ、そうなんです。
      あえてのハンサムです(*>∀<*)
      よくぞ気づいてくださりました 笑
      昭和の俳優さんて、なんか凄味や色気や落ち着きや、なんやかんや同じ年齢の今の俳優さんとは、ちょっと違う重さがある感じがするんですよね~
      2022/09/03
  • さすが読み応えありの推理長編。
    タイトルの意味を自分なりには解釈できたのかな。

    出世欲、病気、戦争などさまざまな因が絡み合う展開、今西刑事の執念がじわじわと確証に近づくなか、意外なほど静かな結末の描写に、彼の少しの安堵を感じました。

    私の「電子音楽」といったら、YMOなんですけども。。。
    彼らにも影響を与えた作品だったのかな、と思ったり。
    推理小説のトリックからまた一つ勉強させていただきました。

  • 全国を飛び回り、断片的な手掛かりを1つの真実に結び付けていく刑事の根気強さには脱帽した。
    途中、犯人の手掛かりを探しに、北陸の山村を訪ねる場面がある。私も幼少期に近くまで行ったことがあるが、山中温泉からさらに奥地であり、今はダムの底に沈んでいる場所だと思う。今回の悲劇が始まった山里の風景を思い浮かべた。
    真実が明らかになり、結末を迎えるわけだが、読後には感動というよりも、空虚感が漂った。是非ともこの本を読んだ人、映画を見た方と会って議論したい気持ちになった。
    恥ずかしながら、ハンセン病に関する知識が乏しく、改めてこの病気に関する差別の歴史と研究を学んでみたい。皮膚に異形の症状が現れるので、患者さんを初めて見た人は驚くのだろう。科学的根拠の無い差別が生じ、本人と関係者は本当に辛いことである。当然、時代とともに医療が進歩しているが、時代に関係なく差別をしてしまう「人間の業」を如実に描き、社会的問題を提起した名作だと思う。
    ジブリの「もののけ姫」でも、「たたら場」で働くハンセン病患者の描写があり、そして舞台は奥出雲地域と思われる。地域の一致は偶然なのだが、連想してしまった。

  • 2019年3月20日、読み始め。
    2019年3月25日、読了。

    この作品は、1960年5月17日から1961年4月20日にかけて『読売新聞』夕刊に連載されたとのこと。したがって、今から58年位に書かれた作品である。で、手元の新潮文庫は平成30年9月15日の111刷。長いこと読み継がれている作品ということになろう。
    また、清張は1909年生まれなので、清張が50歳になった頃に書かれた作品になる。

  • 善人と誰もが認める、元警官・三木謙一を殺害したのは誰か?

    そして、劇団の女事務員はなぜ自殺したのか?
    劇団員の男は自然死だったのか?

    最後まで繋がらない…

    警視庁捜査一課・今西は執念で、断片的な事実をひとつひとつ、明らかにし、繋いでいく…

    今西の執念はすごい…

    最後まで犯人に辿りつかない…
    もちろんドラマで知っているのだが…

    本浦秀夫が、7才から歩んだ道は、我々が想像もできない壮絶なものであっただろう。

    その過去を知る三木謙一。
    彼は本浦秀夫の成長、成功を喜んでいただけだろうに…
    そんなに恐怖だったのだろうか…
    本浦秀夫にとって、三木謙一は善人ではなかったのか…
    そんなはずはないはずだが…
    なぜ⁇


  • 昭和の社会問題を背景に描く松本清張ミステリー。「砂の器」は、病気、戦争を背景にした作品。主人公の刑事が真面目に一歩ずつ犯人を追い詰めていく展開に、頁をめくる手が止まりませんでした。

  • マジシャンのようにネタをお客さまに一つ一つ並べて見せておきながら、しかもミスリードさせながら最後に。

    時代が生んだストーリーなのでしょうね、病気、空襲。
    偶然の再会が無ければ何一つ悲劇は起こらなかったのに、そう思うと第一の被害者の善意がますます哀しく感じられます。
    日本各地、物見遊山させてくださって今西刑事ありがとう。
    (お陰さまでゆっくりできなかったけれど)

    キーパーソンの一人と同郷で、何やら親近感が沸きました。
    日本各地の地名を挙げてゆくとこういう効果もあるんですね、なるほど。

  • 上巻に感想書きました

  • 昭和36年の作品なので古さはあるが、読みやすい。

  • 2022.9.13
    手がかりをこつこつ探し集めるところやじわじわ真相に向かっていく描写、人間関係とか、わくわくしながら面白く読み進められた。
    が、最後が駆け足な気がするし、最後のネタばらしのために情報を隠しておいてるのか途中から詳細をぼかして語られるシーンが多くて(書いた手紙の内容とか、急に本浦親子でてきたりとか)なんだかモヤモヤした。あと、ポケットマネーで休暇中に捜査したりとか、今西が勝手をしすぎじゃないかなとか思ったり、2人目と3人目の殺人方法もいまいちピンと来なかったり。可能なのかもしれないけど。あと関川がクズ

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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