黒の様式 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109275

感想・レビュー・書評

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  • 松本清張文学忌 1909.12.21〜1992.8.4 清張忌

    若い頃、よく読んだ松本清張。どれを再読しても良いけれど、残してある文庫の紹介文を読んでいたら、この中編集が連作推理小説集とあり、全く覚えてないのでこちらを読みました。
    が、しかーし、連作ではありませんでした。共通事項は、死者が出るところしかないです。
    (ちなみに昭和の文庫本)
    そして、新装版の紹介を確認したら、傑作中編小説に変わっていた。やれやれ。

    「歯止」
    能楽堂の場面から始まり、演目は「班女」
    結構後、二年で自殺した姉。死因は薬物接種。遺書はなし。その妹も現在高校生の息子の非行と犯行に苦しんでいる。偶然、息子の奇行を母親が治めている家庭の存在を知り、そこから、自分達の将来そして姉の自殺の理由に思い当たる。

    「犯罪広告」
    警察が動いてくれない犯罪を立証するため、広告を作り投函を続ける男。遂に、地域を動かして現場確認ができることになる。真実に近づきすぎた悲しい男。

    「微笑の儀式」
    古拙の微笑 飛鳥仏の様な口角を僅かにあげた微笑み その微笑みを持つ彫刻の精密な出来栄えに疑念を持つ そしてその彫刻によく似た死者との関係を探す

    • みんみんさん
      この前大沢在昌の北の狩人を借りたら
      ボロボロで二段構えの細かい字で
      読むの諦めて返したよ笑
      この前大沢在昌の北の狩人を借りたら
      ボロボロで二段構えの細かい字で
      読むの諦めて返したよ笑
      2023/08/05
    • おびのりさん
      それ読みたいのよ。コミックだけで、小説ちゃんと読んでないの。毎日、何か読んでるのに、なかなか、辿り着けないねえ。
      それ読みたいのよ。コミックだけで、小説ちゃんと読んでないの。毎日、何か読んでるのに、なかなか、辿り着けないねえ。
      2023/08/05
    • みんみんさん
      いっそ買ってしまおうか?と悩ましい
      いっそ買ってしまおうか?と悩ましい
      2023/08/05
  • 「松本清張」の中篇3作品を収録した『黒の様式』を読みました。

    『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』、『時間の習俗』、『霧の旗』、『強き蟻』、『高台の家』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    「松本清張」 生誕100年記念復刊第一弾。
    毒が手繰り寄せた忌まわしい過去。
    姉の自殺の驚くべき真相とは――。

    結婚して二年たらずで自殺した美しい姉。
    歳月がながれ高校生の母親となった妹が、思春期の息子の手に負えない行状から、姉の死の真相にたどりつく『歯止め』。
    小さな港町の家々に投げ込まれた奇怪なチラシ。
    二十年前に母親が義父に殺されたと告発する男が巻き起こす騒動の驚くべき顛末『犯罪広告』。
    “古拙の笑い(アーケイック・スマイル)”を浮かべた若い女の硬直した死体の謎『微笑の儀式』。
    傑作中編小説三編。
    -----------------------

    引き続き「松本清張」作品に嵌っていますね、、、

    本書には、以下の三篇が収録されています。

     ■歯止め
     ■犯罪広告
     ■微笑の儀式
     ■解説 中島河太郎/郷原宏


    『歯止め』は、大学受験を控えているが荒れている一人息子「恭太」の母親「江利子」が、T大をトップクラスの成績で卒業したエリート「旗島信雄」に嫁いだ翌年に自殺した姉「素芽子」の死に関して不信感を抱いて真相を知ろうとする物語、、、

    「江利子」は、留守中の「恭太」の行動に不安を感じつつ、親戚の結婚式に参列するため夫「良夫」とともに長野を訪れるが、その際、病的な性欲を持つ男の話(変態的な性欲を抑制するために母親がある手段で歯止めをかけている)を聞き、死ぬ前の姉の異変や「旗島信雄」とその義母「織江」の微妙な関係、思春期の息子の理解し難い行動をヒントに、改めて事情を調べ始める。

    「旗島信雄」と義母「織江」の関係や、姉「素芽子」が薬問屋で購入して自殺に使ったと思われる青酸カリは、実は「旗島信雄」が大学の応用科学の講師から入手した青酸カリだったことが判ったとき、「旗島家」の地獄風景が浮かび上がります。

    衝撃的な結末でしたね、、、

    ひとつ屋根の下でのドロドロした関係… 実際にあったら耐えられないなぁ。

    『週刊朝日』の昭和42年1月6日号 - 昭和42年2月24日号に連載された作品です。



    『犯罪広告』は、熊野灘に面した南紀の町・阿夫里(あぶり)で、主だった人々の家に、相次いで殺人告発の広告が投げ込まれたことにより発生する地域社会の波乱や、二十年前に女性が行方不明となった(殺された?)事件の真相を探る物語、、、

    広告主の「末永甚吉」は、
    「二十年前に、池浦源作は、私の母である末永セイを殺害し、家の床下に埋めた、と私は確信している。
     警察に訴えたところ、既に時効が過ぎ、源作を罰することはできないというが、せめて母の遺体を床下から収容したい。
     源作は私に会おうとしないが、これは彼の心にやましいことがあるからだ。
     そうでないなら、私の疑いを晴らすために床下の土を掘るべきだ」
    と主張するが、「甚吉」は過去に精神病院に入院していた経歴があり、「源作」は狂人を相手にするだけ損だとして応じなかった。

    しかし、小さな町の中でこの広告が大きな話題となったため、警察署長は根回しをして、床下を掘ることを「源作」に承諾させるが、床下から死体は発見されなかった、、、

    その後、「甚吉」が行方不明となり、「甚吉」の友人「金次郎」は「源作」が「甚吉」を殺したのではないかと告発し、再度、床下を掘ることに… 奇想天外な発端、畳みかけるようなサスペンスの連続と予断を許さぬ展開で、物語に惹きつけられました。

    「源作」等がウミホタルが付いた死体のことを吹聴し過ぎたために真相が発覚しちゃうのですが、、、

    「甚吉」と母親「セイ」の運命は予想通りでしたが… 共犯者は意外な人物でしたね。

    『週刊朝日』の昭和42年3月3日号 - 昭和42年4月21日号に連載された作品です。



    『微笑の儀式』は、飛鳥仏の持つ「古拙の笑い(アーケイック・スマイル)」の特徴が出ている彫刻作品「微笑」と、その彫刻作品とそっくりの顔付きで亡くなった女性との関連性や女性の死の謎を解く物語、、、

    大学で法医学を研究していた「鳥沢良一郎」は、奈良・法隆寺の飛鳥仏を鑑賞中、止利様式の仏像が持つ「古拙の笑い」にとり憑かれている彫刻家「新井大助」と出会う… その後、ある展覧会で見た彫刻作品「微笑」の顔つきには飛鳥仏の特徴がよく出ていたが、作者はやはりあの時の彫刻家「新井」だった。

    「新井」に祝意を述べた「鳥沢」だったが、そのあと「鳥沢」を呼び止めた生命保険会社の男は、この彫刻の大きさが「人間の実物大」であり、「本当の人間の顔からそっくり取った」ものではないかと指摘、さらに、この彫刻とよく似た顔の「宅間添子」という女性が、最近死んだ事実を告げる、、、

    「宅間添子」は部屋を冷やすためにドライアイスを使用して寝る習慣があり、ドライアイスから発生した炭酸ガスによる中毒死だったが、「宅間添子」の死顔と彫刻作品が酷似していることや父親を受取人にして二千万円の生命保険をかけたばかりだったこと、死顔が謎の微笑を浮かべていたこと等から、事件を不審に感じた「鳥沢」は警視庁に勤める知人「石井警部補」や操作を担当している神奈川県警「元田警部補」等と真相を探ります… 「宅間添子」へ言い寄っていたアパートの管理人の存在やプロパンガスに見せかけた笑気ガスの利用等が判明し、事故死ではなく殺人であることや、その動機が明らかになります。

    犯人としては、「新井」に「宅間添子」のデスマスクをとらせたことが命取りでしたね。

    『週刊朝日』の昭和42年4月28日号 - 昭和42年6月30日号に連載された作品です。



    三篇とも愉しめましたが、奇想天外な発端と予断を許さぬ展開が愉しめた『犯罪広告』がイチバン印象に残りましたね。

  • 3つの中編作品が収められたミステリー。この3編は好みでなかった。中途半端に長い。心理描写はさすがと思ったが清張さんらしいラストに「え~」と思えるようなインパクトがなかった。母と息子の歪んだ関係がテーマな「歯止め」、失踪した母は義父に殺されたと告発文を近所にばらまき真相を突き止めようとする息子に、たぶん殺しているのに証拠が全く出てこない義父。なかなか真相がわからない「犯罪広告」。入選した微笑む仏像の彫刻の顔が事故で死亡した女性にそっくりだったことから謎が深まる「微笑みの儀式」。松本さんは長編か短編が良い。

  • 結婚して2年足らずで自殺した美しい姉。死んだ姉の妹が、自分の息子の思春期による変化を見て、姉の死の真相に辿り着く「歯止め」。
    20年前に母親を養父に殺されたと印刷したチラシがばら撒かれる。町は騒動となり、養父の家の中に母親が埋められているのではとなり、床下が掘り返される.その結果は、真相は、何か。この本で1番面白かったのが「犯罪広告」。
    仏像の笑いを浮かべた若い女の死体と彫刻作品から、変死事件の謎が徐々に明るみになる「微笑みの儀式」。
    3作ともしっかり読ませてくれます。
    松本清張はすごいと改めて思った。
    2023年10月17日読了。

  • <充満する不穏な香り>

     3つの短編。どれも直ぐに香ってきて、燻る如く充満する。そして終始漂い続ける。特に一章は終わりを迎えてもその匂いが残り続けるという… いわゆる「タブー」ですが、簡単に空気を演出できる分こんな風にリアルを伴わせるのはすごい。
     三章、ネタバレになってしまうが沢村本人が自分の口で語るシーンが一切出ない。これが印象に残った。常に誰かの目を通して語らせることで「とりあえずこいつは好々爺なんやろう」と、僕はすっかり思い込まされてしまった。そうやってギャップを生み出すのかと。勉強になります。
     僕にとっての三つの共通点、それは過程がちっとも推理出来ないこと。実際、オチの方向はそうなんやけど、その道中はあっち行ったりこっち行ったり。あたふたしてる間に「え、待ってどうなんのこれ」と。面白い!

     「水のような表情」ってのは良い表現だ… 簡単な言い回しなのに思い付かない組み合わせ、だけどもしっかりとその表情、抱えている心情のイメージが浮かび上がってくる。良いです。

  • 「歯止め」「犯罪広告」「微笑の儀式」の3つの短編が所収。「歯止め」は、結婚後数年で自殺した姉の真相が、思春期の息子の素行や夫の実家の法事に出席したことをきっかけに徐々に明らかになる。「犯罪広告」は、義父による実母の殺害が20年たって明らかにしていく息子が、逆に殺される。「微笑の儀式」は、法医学の教授と新進気鋭の彫刻家の飛鳥での出会いが、殺人事件と結びついていく。

  • 「歯止め」「犯罪広告」「微笑の儀式」の3編を収録。時代設定は当然古いが、主題は現代でも十分おもしろい。2017.12.21

  • 安定したおもしろさ。3つの短編ミステリー小説。
    しっかりとしたストーリー設定と細かな部分のリアルさが、それぞれのミステリーを素晴らしいものに見せてくれる。

  • 短編3つ。1本目が死んだ姉と、やや薄気味悪い姉の旦那の話で、純文学なのかと思ったら、途中でいろんなパーツがパキーンとはまるミステリ。はまるまでの気持ち悪さのせいで、途中まではなかなか読み進められず。

    あと2本はどんでん返しで、最初からミステリと解るので読みやすい。阿夫里村の話は、怪文書と供述調書とで本筋が語られる、かなりクラシックな手法だが、今読んでも全く古臭さを感じない。

    もう一つは、最初から落ちがわかっている状態だが、事件性がないところに事件を作っていく。

    1本目の薄気味悪さには嫌悪感を催す人も少なく無いだろうが、松本清張の安定した面白さが詰まった1冊だ。

  • 狭義のミステリーではない。
    そこはかとない恐ろしさを感じさせる短編集。
    笑気ガスは今はもう殆ど使われてないから時代を感じさせる。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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