黒革の手帖(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.64
  • (127)
  • (275)
  • (354)
  • (21)
  • (5)
本棚登録 : 2222
感想 : 201
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109534

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 面白かったです。表現や内容はちょっと古めかしいところもあるのですが、とても読みやすくてのめり込みました。
    ドラマは武井咲さんの方だけ観ましたが、ドラマとは違って、元子さんが若くも美しくもありませんでした。
    銀行員がバァのママになって、男からお金を巻き上げてのしあがっていく。元子さんの強かさがすごいです。
    楢林は破滅したけど、橋田はこれからなのかな。安島もなんだかドラマと違うので、続きが楽しみです。
    すみ江の言い淀んだことがかなり気になるのですが、下巻で描かれるのかなぁ。

  • 見映えの悪いお局銀行員が横領したお金で銀座のママになる。その転身だけでも面白い。しかし元子はそれだけに留まらず、昔掴んだネタでゆすってライバルを蹴落としたり、次なる策を労したりと抜け目なく意欲的に動いていく。
    だが、いい事はそうそう続かない。下巻でどうなるのか楽しみだ。

  • 何度もテレビドラマ化されているが観てないので、原作で初読破。
    うーん、イメージと違った。産婦人科院長の裏金作りや医大予備校校長の裏口入学の斡旋と文教族の政治家との癒着など金儲けのカラクリ描写は面白い。けど、復讐や愛人のために大物総会屋や闇紳士たちが銀座のママを破滅させるストーリー展開が現在からみると陳腐にしか思えず。主人公・元子の悪女っぶりも金銭欲のみで随分と卑近で魅力を感じなかった。ドラマ版ではどう描かれているのやら。

  • ◆夜の世界でのし上がるために必要なのは金、金、金。そんな狭い世界を、女独り泳がんと悪辣さを発揮する、昭和ピカレスクロマン小説の怪作◆

     漫画「女帝」の如く、「バア」のママが、男の秘密・弱みを利用し、その世界でのし上っていくピカレスク・ロマン小説。

     背景には、例えば、今は昔となってしまったと言えそうな、借名口座を利用した所得隠し・脱税。
     産科医師による人工中絶に保険適用がなく、つまり自由診療で、多額の現金授受がなされていたという実情が踏まえられている、
     あるいは、勤めの看護婦が医師の二号である点など、社会事象が美味い胡椒のように味付けられ、満足満足である。

     もとより、小説としては、出来過ぎの部分が多いが(最たるものが、割烹「梅村」の女中島崎すみ江がホステス面接に来る件)、それを無視すればなかなか楽しい。著者が主人公を通して語る、社会に対する斜に構えた態度、捻た視座が、面白さの要因だろう。

     ところで、初出年は1980年だが、借名口座が厳禁されるようになったのは、現代の税逃れの手法が借名口座を利用したものではなくなったから、というのは穿ち過ぎか。

  • 古い本、しかも松本清張なので、読みづらいかと心配したが、そんなことはなくむしろ読みやすかった。
    上巻では、元子の思惑通りに事が運びうまくいっているように見えるが、所詮素人の策略なので粗だらけで、ハラハラする。
    下巻で反撃にあうのか?!
    楽しみだ。

  • テレビで断片的に見て少し興味を持ったので図書館で借りてみた。
    上巻では、テレビと違って、主人公の目的がただの金儲けであるかのように書かれている。銀行員で我慢したこれまでの地味な生活とは正反対の世界で生きてみたい、それだけ。
    そのような主人公には感情移入ができないが、ママという立場を利用して社会的な地位の高い男達の不正を探り、逆手にとってお金をむしり取るというところが少しだけ痛快。実際の描写はかなりどろどろしていて、あまり気持ちのいいものではないがこの後どうなるか気になるので、下巻も読んでみる。

  • 下巻にて

  • 米倉涼子さんのドラマを見ていて、気になったので読みました。
    ドラマとは多少違うところもありますが、登場人物がみんな悪いのがなんとも面白かった。

  • テレビ放映されたドラマが面白かったので、原作を読んでみた次第。やはり原作とドラマは違う、当たり前。どちらもその良いところ、楽しめるところを享受すれば、より一層この心理サスペンスを理解できるだろう。

    原作の執筆された80年初頭と今現在では時代背景がかなり異なるので、ドラマはドラマ、原作は原作として全く別物としてどちらも楽しめた。といっても、まだ上巻しか読んでいないわけだが。

    やはりドラマのほうがよりドラマチックにビジュアルに作られており、キャラクターも相当濃く煮詰められている。原作のほうではみな淡々としたものだ。そのせいか、だれもかれもそれほど悪いことをしている感がない。主人公元子すら、それほど銀座に執着しているようにも見えない。ドラマのように銀座一の店を買い取るといったような野望は上巻ではまだ沸き起こっていない。そもそもテレビドラマだけの筋立てなのだろうかな。そこは下巻のお楽しみといったところ。

    また、時代背景といえば執筆当時の女性の働き方の描写も興味深い。女は結婚するまでちょっと働いて、寿退社が目標。結婚しそこなって職場に長く居座ると、男性からも女性からもうざがられるといったような記述がある。まさしく主人公の元子がこれだったわけだ。元子が横領したお金で銀座でバアを開業するのは、この単調な生活から抜け出し、また見返してやりたいといったような動機もあったようだ。しかし、なんか私には元子がそこまでして銀座に店を持ちたいという欲望原作からはそれほど感じなかった。動機付けとしてはなんか弱い気がする。

    そもそも、ああいう人間相手の商売は人間が好きでなければやっていけないはず。男相手の商売は男好きでなければやっていけないはず。小説の元子はむしろ男嫌いで性交渉にもそれほど喜びを感じていなかったようす。こういう心理が分かるのも活字ならではである。上巻の最後のほうでは、そんな男嫌い元子もなにやら悩ましげな感覚にとらわれ初めているけれども…

    また小説でもドラマでもなにやら重大な役柄であった看護婦の中岡市子。この人は多分、女としては元子よりはるかに幸せだろう。そう思ったのも、小説を読んだからである。ドラマのほうではあまり気づかなかった。女優さんの熱演は大変よかったけれども。

    というわけで下巻が楽しみです。

  • 上下巻の長編作品ですが、すらすらと読むことができました。古い作品なので現代とは異なる部分も多いですが、どんでん返しありのサスペンスとしても、社会風刺作品としても優れた作品であり、何度もドラマ化されるだけの普遍性を感じることができました。

全201件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松本清張の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×