黒革の手帖 (下) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1983年1月27日発売)
3.66
  • (144)
  • (250)
  • (329)
  • (24)
  • (7)
本棚登録 : 2141
感想 : 210
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784101109541

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • さすがでした。
    女の事件簿が、ちゃんとサスペンスになりました。
    あざやかな伏線回収でスッキリというより、ちょっと寒気がしたら止まらなくなっちゃったという感じでした。

    今も夜の銀座はこんななんだろうか?
    松本清張先生は銀座に足を運んでいたのだろうか。

    「錯誤による抹消」
    土地取引においてこんなことがまかりとおるなんて。法を犯すことなく。いわゆる法の抜け道なんですかね。

    振り返ると、登場人物全員悪い奴ばかり。

  • 順調に欲望をかなえていく元子。予備校の理事長を騙し、一流クラブを手に入れようとする。破滅に向かって行くのが予想され、ドキドキする展開。元子の妊娠に何か意味があるのかと思っていたが、ラストでそうきましたか。伏線は回収されました。

  • 流石の松本清張、代表作。上巻を読んだ感想が元子は凄い人(=怖い、強い、ずる賢い)で、インパクトがあり、一気に下巻を読み終えた。私は、仮説①元子は逮捕される、仮説②元子に天罰が下る、仮説③元子が独り勝ちするの3つを立てたが、仮説②が正しかった。医大予備校経営者の橋田、梅村の女中すみ江、元国会議員秘書の安田、バアのママの波子等が元子を「騙し」て、元子を破滅に至らしめる。おまけに流産後に救急車が行き着いた先は楢林産婦人科。これで元子は終了。数十年前に書かれた本ですが、全く色褪せてない。最後はホラーでした。

  • 2024年12月28日読了。高級料亭・クラブの獲得に向けバアの上客・橋田の脅迫を試みる元子だったが…。恐喝ってクセになるものなのかね、地道に商売をしていけばよかったものを…と思ってしまうが、そもそも男性に潔癖な人がバアのママをやっちゃいかんのだろうな。橋田らが仕掛ける罠は随分大掛かりで、準備も大変だし元子が彼らの思惑通り動くかどうか随分危ない橋を渡っているような気もするが…終盤の展開は読んでいて胃と下腹部が痛くなった、池井戸潤だったらここから大逆転するところだが現実世界はそんなに甘くない。経営には金融と法律の知識と、書類をよく吟味して理解する能力が必要だなあ。

  • 横領、恐喝、、黒革の手帖が1つ2つと、、
    3つ目の黒革の手帖へと。。
    やり手の医学予備校の理事、亡くなった議員の跡目を探る秘書、
    嵌められた者、裏切られた者たちが。。あらゆる欲にまみれていく。
    結末に向かう仕掛けが目まぐるしく、そして引き込まれる。
    悪いことはなかなか上手くいかない。その道のプロにならなければ。。

  • 夜の世界で戦う女性達の生き様が描かれていて、とても面白かった。エンターテイメント小説ですね。

  • 結末に向かって吸い込まれるように読んでしまいました。

    ドラマより断然面白かったです。
    女が1人で悪事に手を染め、生き抜いていくことは
    今も昔も非常に難しいことですね。

    最後の最後、元子があそこに行くことになるのも偶然?誰かの指図?
    いずれにしても、どこも混んでいる中あそこが空いているのは、元子のせいってことかな。

  • 最近、松本清張の作品を良く読む。
    本当は、もっと若い時分に読んでおけば良かったとも思うが、そうそう暇があったわけでもないので、まあ仕方がないかなと思う。

    作品を読むうちに、女一人でのし上がっていこうとする主人公を応援していたりするが、世の中、そうそう甘くはないようです。

  • 昨年から読んでいたこちらが、今年の一冊目になった。
    実家(北陸)の暗い冬にピッタリすぎる、ゼロの焦点と、この黒革の手帖で年末年始を挟んで、なかなかの濃いお正月となった。

    上巻は、原口元子がこわーい、と思いながら読んだ。
    昨年末によくみかけた銀行の貸金庫丸パクリ事件は、この本の冒頭の顛末さながらである。
    ブイブイ言わせる元子は、さらに上へ上へと挑戦していくのが上巻。
    ところが下巻に入ってから、急に世界はガラリと足元から崩れていく。
    そのおおもとは、上巻の元子の行動に恨みを持つ女たち。
    ひどいしっぺ返しを受け、そのまま終わる…。
    マジか、どこかでさらにやり返せるかと思ってたので、終わりまで見て頭が真っ白になった。
    たしかに元子は酷い仕打ちをしてきたが、銀行時代の男性行員に対する苦しさや、悪い銭を貯めてきた小悪たちにムチを振るってきただけなのに、と思ってしまった。
    安島との一夜の描き方はちょっと微妙。
    こんな悪女もまた女だったのだ…!体の悦びに打ち震えていたのだった!とか言いたげな、清張氏の筆はなんだか古臭くておっさんの描く女像だな、ととたんに白けてしまった。
    今までの元子がいなくなったようで詰まらない。

    最後まで読んで、銀座の夜を舞台に、男や女のアツい戦いに燃えたのは事実だけど、このおわり方にはヒューと背筋が寒くなった。
    みうらじゅんの言う、松本清張の後ろメタファーがよくわかった気がします…。

  • 元子はどこまで黒い世を渡っていくのだろう。
    血も涙もなく、計算高い人間ならば、裏の手を使って人を脅してでも成功をつかめるものなのだろうか。

    現状に決して満足をしない彼女は、次々に利用する標的を探していきます。
    なにかもう取り付かれたよう。
    家族を持たず、守るべきものは一切無い彼女をそこまで動かすものは何なのか。
    この作品では、そういったセンチメンタルな情緒は皆無であるため、彼女の本当の思惑についてはわかりません。
    おそらく著者は、ヒロインの動機付けには興味が無く、とにかく計算づくでダークな世間を動かそうとする、欲深い一人の女性を描きたかったのでしょう。

    それでもやはり、彼女の暗躍に限界はありました。
    好意を抱いた男性の登場で、ようやく彼女の人間らしく、女らしい側面が引きだされるかと思いましたが、愛らしさや幸せではなく嫉妬や焦りといった負の感情が書き込まれています。
    とことん、作品に明るさや安定を入れないことにしているようです。

    結局その男にも裏切られ、脅すつもりの男に脅され、八方塞となった彼女。
    女同士の罵り合いのひどさには目を覆いたくなりました。
    「パン助」なんて侮蔑語に、時代を感じます。

    一番ぞ~っとしたシーンで、突然のように物語は終了。
    これで終わり?と、納得できずに、巻末の新刊宣伝ページまでくくって確認しました。
    なんて恐ろしいエンディングでしょう。血の気が引きます。

    それでも、最後まで共感できなかったヒロインには、因果応報や自業自得という言葉しか浮かびません。
    人を陥れて自分がのし上がろうとする人は、手痛い報復を受けるという命題が、ラストシーンで浮かび上がりました。
    強欲まみれの人々の織りなすどろどろの闇の世界。
    救いがありません。

    自分に見合った人生を、殺意や恨みをかうことなく送るのが、人にとって一番幸せなことでしょう。
    元子にしてやられ、制裁しようとする男たちも、明日は彼女と同じ立場になるかもしれないのです。
    彼女のように欲深く、きらびやかな世界の裏で騙し騙されながら生きている人は、実際にいるのだろうと思えるほどの、迫力に満ちた物語でした。

全210件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松本清張の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×