夜光の階段(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109565

感想・レビュー・書評

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  • 著者、松本清張さん(1909~1992年)の作品、ブクログ登録は27冊目になります。

    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    26歳の美容師・佐山道夫は、勤め先の美容室から独立するため、証券会社の社長夫人・波多野雅子と関係を持ち、出資にこぎつける。さらに、雑誌「女性回廊」の編集者・枝村幸子を誘惑し、彼女の口利きで人気タレントのヘアデザイン担当に。金とマスコミの力で一躍有名になった道夫だったが、夫に預金通帳を見られた雅子から返済を迫られ…。男の野望と女の情愛が絡み合う傑作長編。

    ---引用終了

  • 名探偵がトリックを暴く「推理小説」ではない。誰が犯人なのかはあらかじめ分かっており、犯罪者•被害者•関係者などの心の動きを描く。
    松本清張が描く、男女関係の描写にも注目。
    男の視点、女の視点、犯罪者の視点、被害者の視点、それぞれが主語となり、心の動きを描いているという、自分の中では斬新な手法。

    こういうふうにも書いていたんだというのが新鮮な驚きだった。
    社会に出ると、実力で評価されるのではなく、うまい立ち回りや運に評価が影響されると言う点、心に残った

  • 九州は福岡県、武蔵温泉の神社裏で殺害された若い女性。この事件に偶然遭遇したのが、福岡に出張中の検事。犯人は、近くの精神病院から脱走した患者で、結果、無罪判決となったことを知る。舞台は東京に移り、野心溢れる男性美容師が、裕福な女性客に気に入られて独立し、愛人関係となり、その女性の賛助で店舗を構え独立する。さらに芸能人のヘアーデザインを手掛けることによって、徐々に有名になっていく。そこにも、やはり美容院の上客であっり、愛人関係の女性雑誌編集者が関わっている。しかし、お店も構えるも、その返済を融資した女性から迫られるようになる。

  • 登場する女性がほとんどほんとにいやなやつ。
    主人公がなぜそこまでするに至ったかの過去の描写がもっと見たかった。

  • 野望を持ち狡猾な男が起こす、欲で自ら巻き込まれていく女たちとの殺人事件。克明な男女の描写が最初は冗長に感じるが、その情報が後から話の面白みを増している。

  • 男性美容師がパトロンの人妻、編集者を利用して成功をおさめるが…というサスペンス。始めは女を利用する冷血漢だと思ったが相手にしている女が虚栄心と嫉妬と肉欲の塊で胃が切り詰めらる様な感覚でスケジュール管理していく姿はビジネスマン的ですらある。

  • まだ、上巻だけを読み終わった段階ですので、まだまだ詳しい所は、何もわからないぜ、という状況でございますね。下巻で、どのような展開が、待ち構えているのか、、、ドキドキしながら、読み進めたいと思います。

    上巻を読んだだけの感想では、同じ松本清張の著書としては「砂の器」と近い雰囲気かなあ?と思いました。社会的成功への野心を持った若き男の犯罪。栄光と墜落。犯罪を追う司法の側の人間の、調査への執念と、へこたれなさ。

    砂の器の和賀英良が、この夜光の階段の佐山(宮坂)道夫かなあ、と。まだ、上巻を読んだだけの感想なので、なんとも言えないのですが。

    九州での、八年前の、武蔵温泉近辺での村岡トモ子殺害事件。精神異常者の犯行とみなされている、この事件。これの犯人も、ほぼほぼ道夫だろう、という感じではあるのですが、上巻では、まだぼやかされている感じですよね。下巻で、どのように、何故に、道夫が、トモ子を殺害せざるを得なかったのか?その理由が、どのように明らかになるのか。ちょっと、注目しております。

    それにしても道夫は、どうしてこんなに、美容界で成功したいと思っているのか?波多野雅子には、大金を出させ自由ヶ丘に店を出した。そこでは満足せずに、青山にも二号店を出そうと考えている。枝村幸子には、芸能界への伝手を作ってもらい、有名な芸能人のヘアスタイルを担当することで、そちらの方面から世間的に有名になろうとしている。

    こうした上昇志向。それが、全然、楽しそうではない。雅子と幸子の事は全然好きじゃないし、二人に二股かけつつ、おまけに更に新たな金づるとしての女性も二人抑えて、四股かけてますやんか。女性の為のスケジュール調整、めちゃくちゃ大変やん。おまけに仕事もしないといけないし。雅子を自殺に見せかけて殺すっていう、すげえ手間もしてるし。

    これほど大変に立ち回りつつ、全然楽しそうじゃなく、心底愛する女性もいないっぽいし、仕事もしてるし、で、仕事が、無茶苦茶楽しいか?というと、そんな描写もあんまりない、、、気がするし。道夫、いったい、何のためにこんなことしてるのかしら?というのが、疑問でしゃあない。有名になるためにすげえ努力してるんだろうけど、全然楽しそうでも幸福そうでもないのが、ほんとうになあ、、、なんなんだろうね?って思います。

    あと、桑山検事が、法曹の世界の関係者も、名文を知らなければならない、という思いを持っているのは、作者の松本清張自身のポリシー、哲学を、登場人物に反映させているんでしょうかね?小説家としての矜持を感じさせる感じがして、凄く好きです。

    で、おそらく、実在したであろう昔の有名な人物の著書の文章を引用したりしているんですが、これってどんだけ博覧強記やねん、とか、思いますね。松本清張自身が、それだけの本を読んで、しっかり自分でその内容に納得したうえで、自分が創作している物語に、引用している訳ですよね。いやあ、凄いよなあ。勉強家、という言い方では、失礼にあたるか。自分が好きだからこそ、色んな色んな本を、本当にこう、読んでいたんだろうなあ。素直に尊敬、ですね。

    あと、この小説が書かれたのは、雑誌連載が1969年~1970年の間、単行本化が1981年、だそうです。雑誌連載が終わってから、単行本化されるまでに11年もタイムラグがあるのは何故やろか?とも思うのですが、それはそれとして、凄く興味深かったのは、当時の女性の年齢に対する世間の目の描写。

    波多野雅子は、小太りの有閑マダム、という描写ですが、この雅子は、年齢としては40歳ちょっと前。アラフォーですね。村枝幸子は、27歳。で、その年齢で「まだ結婚しないでいるが」と描写されている。

    これ、2020年の今どきの作品になったとしたら、雅子が50歳ちょっと前、幸子が37歳くらいで、物語に合うキャラとして、ちょうどええくらいの年齢ちゃうんかなあ?とか思うんですよね。ちょうど、世の中の「それなりの年齢」ってヤツの評価、判断が、10年は、遅くなっているんではなかろうか。それが、超高齢化社会、2020年の日本の現状ではないのかね?とか思うのです。いやあ、社会情勢って、不思議だなあ。

  • 続きを~~、続きを早く~~!

  • 感想は下巻にて。

  • 再読。

    おもしろーい。ドロドロ。こういうのは時代関係ないのね。
    のし上がるためには、手段を選ばないってか。
    下巻も楽しみ。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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