赤い氷河期 (新潮文庫 ま 1-56)

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  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109626

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  • 松本清張で一休み、と思ったらSF?ええー?

    近未来の2005年。世界はエイズが蔓延し、北半球では15%の若者が死亡した。IHC(国際健康管理委員会)の山上は、ドイツで見つかった首無し死体とエイズ発祥の謎について、アイデア屋の富豪である福光(別名タシロ)と真相に迫っていくが…。

    のっけから偏見まみれの微妙なエイズに関する知識の演説、森鴎外作品からのドイツ語りなど、書きたいことはわからないでもないが、松本清張らしからぬテンポの悪い文章がダラダラと続く。そもそも、清張って90年代に死んでたはずなので、いつ書いたのかと思ったら、1980年代末の話らしい。ソ連もあればドイツも分断したまま。

    また、サイエンス系の(SF)小説にもかかわらず、インターネット的な情報伝達手段もないわけで、ちょっといけてない。

    さらに、エイズが生物兵器説(タイトルの『赤い』でご想像のとおり。それが分子生物的に組み換えられて、感染力を上げるというところは、自分で書いている「T細胞に感染するからタチが悪い」というエイズの何たるかを完全に無視している。気管上皮にしか感染しなくなるのなら、T細胞を攻撃できないウイルスしかできないはずである。

    やっぱりこの人にはSFの才能がないなと思うと同時に、長編にはハズレが多いことも気付かされる1冊だ。

    終盤も映画の脚本化を意識しすぎたか、少女漫画のような展開で、そういうのが読みたかったんじゃなかった。

  • エイズを取り扱っている。
    エイズの発生が、1980年始め。
    その時フロリダでエイズのニュースに接したが、
    何か驚異に感じたことがあった。
    サルから ニンゲンにうつった病気で 薬がない
    ということだったと思う。

    なぜ突然そのエイズが生まれたのか?
    よくわかっているようで、わかっていない。

    この物語の背景は、2005年 
    エイズ患者が1億5千万人もいるという設定の話で、
    ソ連が、隔離病院を作っていることによって、
    その対策についての評価をする。

    人権問題を無視しているというが、
    隔離病棟は、現在のハンセン氏病に関連してくる。
    そして、インフルエンザにエイズウイルスを
    のせるという方法である。

    福光 山上 そしてハンゲマン 
    わずかな登場人物で、
    エイズを描こうとしている松本清張の意気込みが
    よく見えておもしろい。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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