過ぎゆく日暦 (新潮文庫)

  • 新潮社
2.00
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784101109657

感想・レビュー・書評

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  • 松本清張の昭和56年(1981年)以降の日記。日記とは言うが、そこは松本清張なので、論文的な部分が多い。

    個人的には駄作『赤い氷河期』のころに、ドイツを中心に歴訪したこと。また、ドイツからの連想なのか、森鴎外の生涯と著作『或る小倉日記伝』に絡めた鴎外の人柄などを、様々な文献からまとめた話の前半部が、極めて読みづらいし面白くない。固有名詞で話を進め、読者のことなどそっちのけで描写しており、どういう人が面白いと感じるのか全く理解できなかった。

    中盤からの英国取材での、巨石遺跡についてのレポートや、ブロンテ三姉妹の居住地および数奇な運命についての話については、謙虚に取材した内容を描いており、面白かったし、最後に講演原稿で『或る小倉日記伝』および初期作品の誕生秘話などについては、読みやすく解説されていて、知らない人たちにも読みやすいだろう。

    それを平均化しても、まあ松本清張の書作の中ではつまんない方の著作であることは間違いなく、わざわざ手にとるような本ではない。ていうか、エッセイ下手やろこの人。

  •  
    ── 芥川の文章は彫心鏤骨、一行書くごとに呻吟した。不眠症は昂じ、
    宿痾(しゅくあ)の痔疾はすすんで、さなきだに痩身が幽鬼のごとくに
    なる。かくては志賀の、思ったとおりをそのまま書く作家(志賀がほと
    んど一ページごとに「愉快だった」「不愉快だった」という語を平気で
    くりかえすのをみよ。武者小路実篤も同様)に羨望を感じるのである。
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101109656
    ── 松本 清張《過ぎゆく日暦(カレンダー)19930425 新潮文庫》P57
     
    ── 当時“小説の神様”である志賀直哉の文章作法が理想とされていて、
    金谷先生に借りた波多野完治《文章心理学》で、たとえば《源氏物語》
    に用いられる品詞の頻度回数などという研究手法があることを知った。
     しかし神様でさえも、無頓着に同じ言葉を繰り返している部分があり、
    情景描写は(いくら説明しても伝わらないので)ほとんど無用ではない
    か。考えた順序どおりに書けば冗漫になる、それなら読む順序にそって
    書くべきではないか。ふだんから書くように話すべきではないか。
    ── 《虚々日々 20001224 阿波文庫》P43 客太郎(Day'19990626)
     
    http://q.hatena.ne.jp/1228281209#a876625
     生涯座右 ~ 三十年ごとの極めつけ三冊 ~
    http://q.hatena.ne.jp/1099601647#a198066
     
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19930425
     過ぎゆく日暦・目次
     

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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