けものみち(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109701

感想・レビュー・書評

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  • 著者、松本清張さん(1909~1992年)の作品、ブクログ登録は30冊目になります。


    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    執拗なまでに民子を追い続ける久恒は、高速路面公団理事の自殺、総裁人事の黒幕が鬼頭であることを確信する。鬼頭の過去には謎と闇が多く、複雑な刑事事件にも関わっていた。鬼頭は民子の若さを吸収しながら、病床から政財界を巧みに操り続け、民子も久恒もその渦に巻き込まれてゆく。
    〈けものみち〉に踏み入ったものたちの悪と情痴のドラマのなかに、日本の権力機構の裏面を抉る。

    ---引用終了


    どのような結末になるのかと期待したが、良くわからない結末で期待外れ。
    と言っても、全般的には楽しめる内容だった。

  • あっという間に読み終わってしまったのですが、結末がえげつなかった・・・。主人公の女性に関係している男性がどんどん死んでいく。けものみちを一歩間違えたら、深い森から抜け出せなくなった感じで、どんどん死んでいきます。

    ウソを隠すために、ウソをつき、そして関係するものの口をどんどんふさいでいく。最後の最後まで主人公の女性の行く末が気になる作品でした。

  • 注! 思いっきり内容に触れています



    ラスト、鬼頭が死んでからが面白いのは面白いんだけど…。
    ただ、いささか週刊漫画誌の連載漫画が急に終わる、あの感じみたいで、ちょっとなぁーw

    ……なんて思っていたら、最後は、かなりえげつない終わり方。
    民子がああいう殺され方をすることで、ストーリーがぐっと締まったように思う。
    変な話、民子がああいう風に殺されることで、次は「わるいやつら」を読もうかなーと思ったくらい(^^ゞ
    (ていうか、それを読むまでは上巻と同じく★3つだったんだけど、4つに増えたw)
    ただ、実際のガソリンを使った事件を踏まえて考えると、空間全体が爆発するように燃えるらしいから、小滝も怪我したんじゃないかなー。
    ていうか、連れ込み旅館みたいな所に火をつけるわけで。
    そんな大ごとにしちゃったら、事件をもみ消してもらうにしても大変なんじゃないだろうか?と、そこは疑問がないでもない。

    とはいえ、民子が殺される場面は、まさに“獣の道(所業)”で。変な、スカッと感がある(爆)
    民子は、決して嫌いな登場人物じゃなかったはずなのに、そこは面白い。
    ていうか。
    よくよく考えたら、この小説の登場人物って、な~んか、みんな嫌いじゃないなぁー(^^;
    久垣なんて本当にイヤなヤツだけど、あんな風に欲に追いかけられるようにせこせこ動き回っている人生って、
    実は、人は幸せなんじゃないだろうか?なんて、ちょっと考えてしまうw
    ♪幸せなんてなにを持っているかぁ~じゃない。なにを欲しがるかぁ~だぜ、と歌っていたはっぴいえんどの「はっぴいえんど」という曲を思い出した、
    なんて書いたら、松本隆に怒られるのか?(^^ゞ

    下巻は、最後の最期で「けものみち」というタイトルそのままの、ケモノ、ケモノした場面が出てきたんだけど。
    とはいえ、そこまではそんな感じじゃないんだよね(上巻の最初で民子が夫を殺しちゃうのは、むしろ共感しちゃうw)。
    というのは、主人公が民子で。
    久垣のパートを除けば、民子に沿って物語が進むから、本来“ケモノ”であるはずの鬼頭や秦野、小滝にしてもケモノ臭があまりしない。
    秦野なんて、民子には常に好意的(誠意をもってと言ってもいいかもしれない)に接するから、読者からすると嫌な人間にはならないのだ。
    ケモノの総本山であるはずの鬼頭も、民子を通して物語れるから、たんなる色ボケジジイって感じで。
    読んでいて、むしろ笑っちゃう、みたいな?(^^ゞ

    まー、もしかしたら、これが書かれた当時だったら、「うっわー。ケモノぉぉー」みたいに読めたのかもしれないけど。
    今だと、もっとエゲツないのがいくらでもあるからなぁー。
    そういう意味じゃ、今のエンタメ小説って、“いかに先人よりエゲツなく描くか”で(^^;
    先人よりエゲツなく描けば、読者にウケて。本が売れて、賞も貰えるってことなんだろう(爆)

    ただ、個人的には、エゲツなさはこのくらいで充分で。
    過剰なエゲツなさに注力する分、この小説くらいボリュームのある物語をつくってくれよ、と最近の作家に言いたい(^^ゞ
    そういえば、解説に、松本清張が語っていたことが引用されていて。
    「この時期に推理小説はその本来あるべき性格を失いつつあった。その理由の一つは題材主義に寄りかかりすぎたためであり、一つはジャーナリズムが多作品を要求したため不適格な作品が推理小説の名において横行したことであり、もう一つは、その結果、推理作家自体の衰弱をきたしたことである」と。
    上記は、著者が本格推理物について語っているらしいんだけど、いつの頃のことについて語っているのかはよくわからない。
    ただ、エゲツなさや露悪性を売りにしている小説がウケる今の状況にもそれは当てはまるような気がするかな?(^^ゞ
    松本清張って、すごく好きな作家というわけではないんだけど、そういう推理小説に対する態度とかを聞くと、
    作家の世界にこういう大御所が一人いるのといないのとでは、作家たちにも、出版業者たちにも、また、読者たちにもいろいろ違うんだろうなーなんて思ってしまう。

  • 人は権力に溺れたり権力の恩恵に与ろうとすると道を踏み誤るものだなと思った。竹中平蔵曰く、忖度には相手の考えを汲もうとする正しい必要な忖度と、そうでない不適切な忖度があるらしい。私利私欲のための忖度は良くない結果を招く良い例を描いた物語だと思った。

  • 主人公の仕えた寝たきりの高齢男性は、暴力団や政界にも顔をがきく大物。主人公を放火殺人容疑で追っていた刑事も死体として海から上がり、大物の高齢男性も突如、亡くなる。主人公の行く末は・・・。

  • 欲のために嘘を隠し、
    隠すために関係した者の口を塞ぐ。
    そして生き残るのは誰?

  • 前半は単調なストーリーだったが、結末が恐ろしく印象的だった。

  • 一気に読み終わった。ジェットコースターに乗っていたかのように。悪い人たちの物語。こう云ふお話は本当にありそうな気がします。

  • 悪いなあ 一気に

  • 【ネタバレあり】
    下巻。
    久恒の捜査が核心に迫っていくところで段々面白くなってきました。しかし、知りすぎた者は消される運命。ああやっぱりそうなったか…!鬼頭にとっては邪魔な人間一人殺すくらい蚊や蠅を殺すのとなんら変わりないんだろうな。鬼頭みたいな絶大な力を持った経済界の黒幕って本当に存在するのだろうか。警察の権力もまるで届かない巨大権力…ゾッとした。そして民子の末路も。
    知らず知らずのうちにけものみちに踏み込んでしまった民子だけど、民子が恋焦がれた小滝が、民子をけものみちに誘導した黒幕だったとは。なんて皮肉な結末。面白かった。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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