松本清張傑作選 憑かれし者ども 桐野夏生オリジナルセレクション (新潮文庫)

  • 新潮社 (2013年3月28日発売)
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本 ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784101109763

感想・レビュー・書評

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  • 昭和の香りがプンプン。セレクトも桐野夏生らしい。ほとんどの人が「鬼畜」が一番というのだろうが、個人的には宗教がらみの話が面白かった。オウムを思わせるわけではないが、新興宗教の一面をよくとらえており、清張の先進性をよく表しているように感じた。

    古臭さは否めないが、一読に値する。

  • 「赤いくじ」好き

  • "ここに掲載されている作品群は強烈な個性。
    「憑かれし者ども」が集まっている。
    宗教の怖さというか、はまるからくりというか、そうした一見第三者からみるとなんでそうなるの?という人々を見つめた作品が「密宗津仙教」。これが強烈に印象に残った。"

  • P410
    桐野夏生 オリジナル セレクション

  • (欲しい!/文庫)

  • 清張の重視したのが犯罪者の動機で、本編の収められた5編もそれを主題にした小説である。中には「鬼畜」のように検事から聞いた実話もある。なにかをきっかけに普通の人が、一歩踏み越えて鬼畜にならんとする危なげな世界をふと感じてしまった。14.10.12

  • 6月2日

  • 出版社ってすごいなぁ、こんな企画を出せるんだ、と、その功罪?成功?について考えつつも感心した作品。

    松本清張(いま、なぜ?)の短編を、新潮社が6人の作家に選ばせるわけだがそのラインナップが面白いっちゃー面白い。
    浅田二郎、海堂尊、原武史、佐藤優、宮部みゆき、桐野夏生。

    たまたま入手したのが桐野夏生。

    ダークで自虐的な彼女のこと、どんな作品を選ぶのかと思ったら、またこれがなかなか。

    短編のみなので、有名どころの長編はもちろん出てこなくて、でもしっかりと、「清張」してる。個人的には最初の「発作」がこわよかった(怖かった+よかった)。なんのことはない日常が狂気に反転する様は圧巻。個人的にはざらついた感が、動的な安部公房みたい、と、思ったり。次いでの作品「鬼畜」は他のアンソロジーにも選ばれている、結構有名な作品。ただ欲望のままにわが子を手にかけてゆく浅ましい男女の物語。まったく救いようはないんだけど、その完成度の高さで、なぜかなんども読んでしまう作品。わずか数十ページの短さに「清張」味が、たんまりつまってる。まるで小さな点と線。すごい。


    話はそれるが、松本清張といえば私が思い出すのは、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞した際の、選者坂口安吾の慧眼。彼は清張の文章から間違いなく、推理小説家としての清張の将来を言い当てたのである。しかもその文章が、美しい。もちろん彼自身が推理小説をものとした作家でもあったということもあるかもしれないけれど。

    坂口安吾の選評:
    「『或る「小倉日記」伝』は、これまた文章甚だ老練、また正確で、静かでもある。一見平板の如くでありながら造形力逞しく底に奔放達意の自在さを秘めた文章力であって、小倉日記の追跡だからこのように静寂で感傷的だけれども、この文章は実は殺人犯人をも追跡しうる自在な力があり、その時はまたこれと趣が変りながらも同じように達意巧者に行き届いた仕上げのできる作者であると思った」

    そうして、この安吾の選評ほど有名ではないものの、同じく選者瀧井孝作のまなざしと分析力、表現の美しさ。
    「松本清張氏の『或る「小倉日記」伝』は、青空に雪の降るけしき、と形容したいような、美しい文章に感心しました。内容は無名の文学青年の伝記で、大したものではないのによくまとめてあるので面白い、と見ました。ついでに三田文學の昨年の三月号の『記憶』というのも読み、この人は、探求追求というような一つの小説の方法を身につけているようだと分かりました」

    「青空に雪の降るけしき」

    雪は当然、曇った白い、ないしはグレーの空から沈うつに落ちてくるものだ。それを平たく「青空」から降る、と言い切った瀧井の表現力。そしてこの文章は本当に、松本清張の文章をあらわしているように思う。暗い世相を切り取る社会派としての清張の推理小説には、常に奥底に、いつも作者のすかんとした明るさがあるように感じていたのだが、そうか、それは、空にあったのか。



    すかっとした抜けるような空からはらはらと落ちてくる雪。いちめんまっ白の、すべてをおおい尽くしてしまうような閉塞感に、抜け感のある青が足される「けしき」を思っただけで、すこし気が晴れるような気がする。





    昔誰かが、言葉を尊敬していれば、おのずとどんな表現であっても美しくあるはずだ、というようなことを言っていた。本当にいさぎよい、美しい考え方だと思う。それが評論であれ、今であればメールの文面であれ、ブログであれ、ツイッターであれ、ことばへの愛を忘れない人は、たしかに、存在している。あたしはそんな奇跡のような人をシアワセなことに何名か、知っている。



    ストイックに自分を追い詰めて、ことばをつむぐひと。
    ・・・だからきみは、だれよりもうつくしい。

  • 集められた短篇はどれも性的なものを感じさせる。
    人間の泥臭く、汗臭く、湿度の高い、濃い獣臭。
    一歩踏み外す人間、どうなってしまったか分からない女、何とか救われる夫人など、心にひっかかる登場人物ばかり。

    松本清張の短篇はやはり面白い。

  • 映画化されているが観たことのない鬼畜は初めて読んでみた。
    憑かれてしまった人は恐ろしい。
    犯人が逮捕されるところまでは書かないのが松本清張?

    2013/04/13図書館から借用;04/21夕方から読み始め;04/22夕方読了

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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