山本五十六 (下) (新潮文庫 (あ-3-4))

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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101110042

感想・レビュー・書評

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  • 山本戦死後の記載が半藤のものと比べ、充実していた。開戦の日の述志より、
    名を惜しみ、己を潔くせむ私心ありてはこの大任は成し遂げ得まじ。
    リーダーたるもの、自分の名を惜しむ気持ちがちょっとでも出たらいけない、批判はいつでも結果論である。草鹿の言葉でつないでいる。

    全体を通じ、著者の客観的であろうというスタンスが伝わってくる内容だった。引用書簡なども多い。ただ、家族から名誉毀損の訴訟を抱えるなど、事実をありのままに記載しようとすることによる弊害も生じ得るのは、近現代の人物の伝記作品ならではの宿命であろうか。

  • 下巻は真珠湾からの話。
    少々、戦争史っぽくなる。もっと五十六を出してもよかったか。

    とは言うものの、訴訟問題になるほどの作品。
    読む価値あり。

  • 下巻では、真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦を経て、ブーゲンビル島での死までを描いています。

    上巻同様、たいへんおもしろく読むことができました。ただ、本書を読み進めながら、文学が戦争というテーマをあつかうということはどういうことなのだろうか、という疑問が沸きあがってくるのを押さえられませんでした。

    さまざまな人びとの思惑が入り混じりながら、あらかじめレールが敷かれていたかのように戦争へと向かって日本が進んでいった時代に、指導者と呼ばれる立場にあった人物の心に迫るという本書の叙述は、思想的にはまったく反対の立場に立つはずの、広田弘毅をあつかった城山三郎の『落日燃ゆ』(新潮文庫)と重なりあってしまいます。

    むろんそれが、両著とも戦争の真実に迫っているために必然的におなじような傾向をもつようになったのだとすれば、何も問題はないはずなのですが、個人的にはわれわれ日本人が「あの戦争」を振り返るという所作そのものが、よりいっそう大きな枠組みのなかに捕らえられてしまっているのではないか、と感じられてなりません。

    「あの戦争」をどのように考えればよいのかということを考える前に、「あの戦争」へと向かうわれわれを規定している「戦後」という時代を、「戦後」を生きるわれわれ自身がどのように考えればよいのかということにも目を向けてみるべきではないのかと思わされました。

  • 山本五十六って意外とフツーの人だったのかもしれない。相手次第では弱いところをみせる。けれども自分の存在意義をクリアに認識して(せざるを得ない?)できることを淡々とやった。

  • 英雄列伝というより 官僚型組織における職業軍人の悲哀を感じた

    山本五十六の死で 敗戦が決まった気がした

  • 2016.9.10
    真珠湾からミッドウェイまで。これは山本の判断ミスだったのか?
    死場所を求めて、ラバウルをたったのか?
    山本の核心にせまる渾身の作品。
    しかし、日本の海軍はミクロネシアまで制圧してたとは。

  • 大敗したミッドウェー開戦、山本長官のごり押しで、反対を押しきって決定されたものらしい。博打打ち、山本五十六の運が尽きてしまった、ということなのかもしれない。
    本書、遺族との間で訴訟沙汰になっていたようだ。それだけリアルな山本五十六像が描かれている、ということかも。

  • 日米開戦時の海軍連合艦隊総司令官だった山本五十六の伝記。対象と程よい距離感で淡々と描かれており、かなり良質な伝記文学となっている。山本五十六の人間くささがよく伝わってきた。ただ、山本五十六自身にはそれほど惹きこまれることはなかった。どちらかというと、はっきり物を言い、考えが一貫している井上成美に好感を持った。海軍の上層部には山本や米内や井上のような戦争に消極的な人たちが少なくなかったのに、結局、日米開戦にまで至った経緯をたどると、個人の力ではなかなか抗うことのできない時代の空気ともいうべきものの恐ろしさを感じた。本筋からは外れるが、人相見の水野義人のエピソードが興味深かった。

  • 下巻は山本五十六の真珠湾攻撃から敵機の襲撃を受けて戦死するまでを詳しく語っている。
    戦争に反対していた男を、無理やり真珠湾攻撃のための指揮官に当てたり、戦死する可能性が高いにもかかわらず戦地へ赴かせたり・・・。アメリカの現状を克明に伝えた人の話を聞かないで山本五十六を戦死させた日本は、本当に人の話を聞かない無知な国だったと感じました。専門家が、外交をしてきた人が話すことにどうして耳を傾けなかったのか、戦後、日本が一番最初に思ったことでしょう。
    戦死したことで「神的」のようになった山本五十六である。しかし「神的」というよりは「人間の暖かさを持った人物」という非常に身近に感じることができる人だと感じます。故郷を愛し、家族を愛し、友人を愛し、博打を好み、心許せる大切な人がいて・・・
    特に涙した部分は、戦死した部下や友人の葬式の際、周囲を気にせず思いっきり泣いたという話があると語られている部分です。

    山本五十六の話を聞いて、アメリカと敵対しなければ、今、日本はどんな国になっていたのでしょうか。
    生きるとは、戦争とは、組織とは・・・。この作品を通し、考えずにはいられない気持ちでいっぱいになりました。

  • 私が学生の頃抱いていた大東亜戦争の印象は、「軍や政治家が狂信的に行った非合理的な戦争」というものだった。しかし、山本のように合理的な視点から戦争に反対していた人々も居た。
    政治家が戦略的視点を持たず、落としどころを見つけられなかったのがあの戦争の悲劇か。政治家や陸軍側視点で何が考えられていたのかも知りたい。
    多くの書簡や公私両面から山本の人物像が描かれており、著者は努めて客観的に描こうとしているのが感じられる。

    真珠湾攻撃が米軍に知られていたのでは、という件についてもう少し突っ込んで調べてみたいと思った。

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著者プロフィール

一九二〇年(大正九)広島市に生まれる。四二年(昭和一七)九月、東京帝国大学文学部国文科を繰り上げ卒業。兵科予備学生として海軍に入隊し、海軍大尉として中国の漢口にて終戦を迎えた。四六年復員。小説家、評論家。主な作品に『春の城』(読売文学賞)、『雲の墓標』、『山本五十六』(新潮社文学賞)、『米内光政』、『井上成美』(日本文学大賞)、『志賀直哉』(毎日出版文化賞、野間文芸賞)、『食味風々録』(読売文学賞)、『南蛮阿房列車』など。九五年(平成七)『高松宮日記』(全八巻)の編纂校訂に携わる。七八年、第三五回日本芸術院賞恩賜賞受賞。九三年、文化功労者に顕彰される。九九年、文化勲章受章。二〇〇七年、菊池寛賞受賞。日本芸術院会員。二〇一五年(平成二七)没。

「2018年 『南蛮阿房列車(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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