米内光政 (新潮文庫)

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  • 本 ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101110066

感想・レビュー・書評

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  • 義実家が岩手県で、伯父さんから岩手出身の総理大臣が多いことを聞かされ、興味を覚えて読んでみた。原敬、斎藤実、米内光政、鈴木善幸。海軍畑が多いのは海が近いからでしょうかと伺うと、当時は貧しく食べるために軍隊に入るしかなかったと聞いて腑に落ちたのを覚えている。
    かつての朝敵で反骨心があり、寡黙だが芯が強くぶれないのは何か県民性なのかなと感じた。

  • 井上成美と米内光政が一貫した思想をもって進めた終戦工作があって無事に戦争を終結させることができたことを認識した。私はマリアナ沖海戦で日本の敗北はほぼ決定していたのに日本の指導者はなぜもっと早くに戦争終結の道を選ばなかったのかとずっと思っていたのでなんだか少しホッとした。しかしその工作はかなり困難なものだったはず。この点をもう少し調べて見ようと思う。

  • 最も印象深い二つの対照的な場面

    8月10日の御前会議前
    米内光政「多数決で結論を出してはいけません。きわどい多数決で決定が下されると、必ず陸軍が騒ぎ出します。その騒ぎは死にもの狂いだから、どんな大事にならぬとも限りません。決を採らずにそれぞれの意見を述べさせ、その上で聖断を仰、御聖断を以て会議の結論とするのが上策だと思います。」

    ポツダム宣言受諾通告後
    大西瀧治郎「たしかに戦勢は不利です。われわれの努力が足りませんでした。申し訳ないことです。われわれが責任を負わなくてはなりません。しかし、あと二千万人の日本人を特攻で殺す覚悟なら、決して負けはしません。もう一度だけやらして下さい。もう一度智恵を出させて下さい。どうか、今しばらく戦争を継続させていただきたいと、陛下にお願いして下さい。」

  • 2012.1記。

    太平洋戦争前夜の海軍大臣にして首相の地位にあった米内光政の伝記的小説。その人となりを周囲の人の証言をもとに描き出すことが本書の狙いであるが、史実に忠実であろうとすると同時に、著者は主人公に強い共感を抱いていることを隠しておらず、そのことがかえって読後感を心に残るものにしている。

    米内光政は必ずしも同期の秀才ではなかったらしい。実際、参謀だの米国大使館だのを同期が歴任する中、佐世保あたりで芸者にもてまくってたりする。しかし、時代とともにドイツと連合して対ソ戦に備えるべきと主張する陸軍と、ドイツと組めば対米戦争不可避と絶対反対の米内ら一部海軍との対立が先鋭化、政治もこう着していく。
    こうした世相の中、省内で名も知られていなかった米内が次第に中枢に上り詰めていくプロセスは読みごたえがある。

    「カミソリみたいな井上さん(井上成美)を、参謀長として、のちには次官として、上手に包み込んで使っておられた」という人使いの妙。
    一方で「(米内さんはいつも井上や山本五十六とだけ話をするので)・・・部課長クラスが何を言ってきても…あまり相手にしない。まあお前たち適当にやれヨというようなことで・・・この点、陸軍は下が動かしているんですからね」などという証言は、あらゆる職場において目にする風景であり、サラリーマンとして色々思うところがあった。

    太平洋戦争緒戦の勝利に国民は沸いたが、実際には日本軍がもっこと鋤で防御陣地を作っていた頃、米軍はブルドーザーで陣地構築していた(占領地で接収し、日本軍人のほとんどが初めてその機械を目の当たりにすることになる)。この圧倒的な国力差によって日本が追い詰められていく様は、読んでいて暗澹とした気分にさせられる。

    この本を読んでも、「なぜかくも明確な戦力差がありながら戦争に突入したのか」の答えが見つかるわけではない。米内という人への評価も一つではないだろうと思う。それでもこの時代の一断面を知る上で、極めて示唆に富んだ一冊であるとは言えるように思う。

  • 豪快な性格ながらも、極限状態では緻密な判断を下せる能力。これが米内が持つ人を惹きつける力だったのか?著者が言うように、陸軍のトップも米内のようなカリスマ性を持っていれば果たして・・・

  • 20241015043

    最後の海相、米内光政の記録。常にニュートラルな思想で戦前、戦中、戦後を生きた米内の生き様は自然に生きることの難しさも感じさせられる。

  • 終戦時の海軍大臣。いわゆる秀才タイプではないものの、識見と確固たる信念を持ち、胆力を持つリーダー。本土決戦派を抑えて終戦工作という困難を成し遂げた。
    他方で、持ち前の面倒くさがりか無口からか、海軍内の主張・理念を部内に周知徹底させず結果として海軍として一枚岩の形にすることを怠ったことは悔やまれる。

  • 太平洋戦争に、井上成美、山本五十六と反対し続きた海軍の米内光政。

    米内光政とはどのような人物なのか、なぜ内閣は短命で終わったのか。

    なぜ昭和天皇に気に入られたのか。

    あの有名な畑俊六の極当国際軍事裁判での米内光政。

    この本を読み終わった時には、彼をもっと知りたいと思えるようになる。

    彼の内閣が短命で終わらなかったら、、、と考えると戦争は終わっていたのではないかと考えます。

    表面上、日本は軍部全員が全員戦争賛成をして敗戦したように見えるが、最後の最後まで殺されるかも分からない時に反対し続けた米内光政。

    彼から学べることは沢山ありました。
    とても面白かったです。

  • 評価が分かれる人で、取り上げていない部分もあり、この本だけで米内光政を理解することはできない。だが、この本で描かれている部分も彼の一面として確かにあったのかと思う。全てフィクションだったとしても、物語の主人公としてとても魅力的だった。老荘での理想的な人物像を体現しているとのことで、こういう人には惹かれる。

  • この本には書かれていない負の側面も米内光政にはあるそうだが、それを考慮したとしても、不思議なひと、そして最後の局面で役割を果たした立派な人ということになるだろうか。
    完全無欠ではない中で、どれだけ頑張れるかという糧になるかな

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著者プロフィール

阿川弘之
一九二〇年(大正九)広島市に生まれる。四二年(昭和一七)九月、東京帝国大学文学部国文科を繰り上げ卒業。兵科予備学生として海軍に入隊し、海軍大尉として中国の漢口にて終戦を迎えた。四六年復員。小説家、評論家。主な作品に『春の城』(読売文学賞)、『雲の墓標』、『山本五十六』(新潮社文学賞)、『米内光政』、『井上成美』(日本文学大賞)、『志賀直哉』(毎日出版文化賞、野間文芸賞)、『食味風々録』(読売文学賞)、『南蛮阿房列車』など。九五年(平成七)『高松宮日記』(全八巻)の編纂校訂に携わる。七八年、第三五回日本芸術院賞恩賜賞受賞。九三年、文化功労者に顕彰される。九九年、文化勲章受章。二〇〇七年、菊池寛賞受賞。日本芸術院会員。二〇一五年(平成二七)没。

「2023年 『海軍こぼれ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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