米内光政 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101110066

感想・レビュー・書評

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  • 終戦時の海軍大臣。いわゆる秀才タイプではないものの、識見と確固たる信念を持ち、胆力を持つリーダー。本土決戦派を抑えて終戦工作という困難を成し遂げた。
    他方で、持ち前の面倒くさがりか無口からか、海軍内の主張・理念を部内に周知徹底させず結果として海軍として一枚岩の形にすることを怠ったことは悔やまれる。

  • 太平洋戦争に、井上成美、山本五十六と反対し続きた海軍の米内光政。

    米内光政とはどのような人物なのか、なぜ内閣は短命で終わったのか。

    なぜ昭和天皇に気に入られたのか。

    あの有名な畑俊六の極当国際軍事裁判での米内光政。

    この本を読み終わった時には、彼をもっと知りたいと思えるようになる。

    彼の内閣が短命で終わらなかったら、、、と考えると戦争は終わっていたのではないかと考えます。

    表面上、日本は軍部全員が全員戦争賛成をして敗戦したように見えるが、最後の最後まで殺されるかも分からない時に反対し続けた米内光政。

    彼から学べることは沢山ありました。
    とても面白かったです。

  • 日本に必要な人物。少しでもこの方の声に耳を傾け、国民の生活を考えられる人がいれば良かったのに。今の日本も、国民のことを第1に考えて政をしてる方が現れることを祈りたい。

    桜の会を弾劾するために、税金の高給取りが子供に見せられない野次を飛ばし、記憶に無い、私の管轄では無いと何十時間も平行線の無駄な時間を費やすのだろうか……

  • ◇いろいろな面で、非常に勉強になりました。

    最も印象的だったのは、
    「真の指導者とは何か」を教えてくれる
    教科書のように感じました。

    今まで読んだリーダーシップの本で、
    聞いたことこともないスタイルなのですが、
    (つまり、何も言わない。
    しかし、内なる信念はハッキリしていて、
    最後の最後には、指導力を発揮する)
    これぞ、理想のリーダー像なのではないか。

    批判ばかりしている自分を大いに反省させられ、
    願わくば、かくありたい、と思わせられました。

    ◇米内とは、偉大な人らしいが、何をしたのか、
    かねてから知りたいと思っていたのですが、
    本書を読んで、かなり見通しがよくなりました。

    あわせて、なぜ無謀な太平洋戦争に突入していったのか
    何が起こっていたのか、大戦中に登場する人物像等
    様々なことが、よく見えてきました。

    ◇戦争中、名が残るのは、派手なことをした人であって、
    華々しいけれど、評価に値するとは必ずしも限らない。

    しなかった人の方は、一般からはわかりにくいので、
    真に偉大でも、名は残りにくい、
    ということがわかりました。

    あの時代にあって、冷静にものごとを見つめ
    命を張って、戦争に突入するのを止めようとしていた人が
    こんなにいたとは知らなかった、と新鮮であり
    そんなことも知らなかったのかと、恥ずかしくなりました。

    ◇井上成美との、コントラストも、とっても面白かったです。

    「米内中将は、二・二六のような変事でもなけれは
    慈眼衆生を観るといった感じの、したしみ深い長官だが、
    (井上)参謀長はご本人が論理学の教科書みたいな人で
    目つきは鋭いし、日常接するのが怖かった」

    ◇その井上が米内をどう評価していたか、
    というところから、本書は始まります。

    井上が、
    「日本の海軍には、一等大将と二等大将とがあった」
    と言っていたのは、有名な話だとのこと。

    果たして、誰が一等大将に合格かと言えば、
    山本五十六でさえ、条件付きで一等大将とは、
    何と厳しい評価なのかと驚きました。

    「大将の位がえらいなんて思っているような大将は全員落第なのだが、
    この容赦なしの井上成美が、同時代の提督の中で、
    無条件で一等大将と認めていたのが米内光政であった」

    と言われると、米内とはどんな人物なのか、
    一気に引き込まれました。

    ちなみに、井上の教え子の某氏によると

    「山本五十六さんほか数人が二等大将か、辛うじての一等大将。
    あとは東郷元帥を含めて全部三等大将だったのではないでしょうか」

    とのことだそうです。。。

  • 最も印象深い二つの対照的な場面

    8月10日の御前会議前
    米内光政「多数決で結論を出してはいけません。きわどい多数決で決定が下されると、必ず陸軍が騒ぎ出します。その騒ぎは死にもの狂いだから、どんな大事にならぬとも限りません。決を採らずにそれぞれの意見を述べさせ、その上で聖断を仰、御聖断を以て会議の結論とするのが上策だと思います。」

    ポツダム宣言受諾通告後
    大西瀧治郎「たしかに戦勢は不利です。われわれの努力が足りませんでした。申し訳ないことです。われわれが責任を負わなくてはなりません。しかし、あと二千万人の日本人を特攻で殺す覚悟なら、決して負けはしません。もう一度だけやらして下さい。もう一度智恵を出させて下さい。どうか、今しばらく戦争を継続させていただきたいと、陛下にお願いして下さい。」

  • 2016.9.30
    これまた米内光政を礼賛する訳ではなく、史実を丁寧に積み上げて記された名著。
    無口ではあったが、人を和ませる人柄だったと。でも、本当に戦争を回避したいのであれば、面倒くさがらずに、人を説得すべきだった。

  • この時代に生きていたとして、マスコミに踊らされずに米内さんのことを評価できたのか。

    山本五十六でテンポをつかめたのか、1カ月弱で読み切ってしまいました。

    五十六さんは、戦争の最中亡くなってしまうし、連合艦隊司令官長なので洋上、海外の世界が多かったのですが、こちらは大臣、総理として日本をきちんと敗戦に持って来て、海軍を終わらせた方。

    五十六さんだったり、決定版 日本のいちばん長い日と同じ時間を、別の視野からまた読み進めていくことで、まだまだ浅いですが自分の日本史の世界を複眼的にとらえられていく気がします。

    黙して語らず、しかし見ていて、本当に重要な部分は外さない。

    この器の大きさから、出世コース外のスタートから、海軍のトップ、日本の総理大臣まで。

    見ている人は、見ているわけですね。

    ただこの語らない部分が、対民衆、国民に対しては誤解を与える部分もあるのだなと難しく感じます。
    この時代に生きていたとして、マスコミに踊らされずに米内さんのことを評価できたのか。
    新聞などではわからないこの部分をどうやって知ることが出来るのか。
    自信がないですね。

    今の政治家を見る時の指針になれば、と思います。

    この本を読んでいるとこれまた井上成美
    さんの記述が多く、
    印象的だった

    to live in hearts we leave behind,Is not to die.」
    という言葉を贈ったのも井上さんです。

    ここまで読んで、いよいよ期待膨らむ三部作のラスト。
    読むのを楽しみにしております。

    実は、五十六さんは単行本で読み、写真がいろいろ挿入されていたのですが、今回は文庫で読んだので写真が全然無かったのです。
    とにかくイケメンであったと描かれた米内さんの写真が見られなかったのは残念と思い、
    重たいですが井上さんも単行本で読む予定です。
    秋突入に向け、いい読書スタートが切れそうです。

  • 米内光政を中心に、どうして先の戦争に突入したか~どのように終戦にもっていったかが、歴史本を読むより、より分かり易く理解できた。米内光政という人間を初めて知り、その魅力に一発でやられた。

  • いろんな人の証言や資料をベースに米内の後半生を丁寧に描いている。個人的には兵学校の成績が中くらいだった米内の学生時代や若い士官のころの話が知りたかったけど、とにかく彼の大物っぷりがわかった。
    開戦と終戦前の日本の国内の政治がどうだったのかをあまり知らなかったので学ぶところ大であったし、特に開戦前は映画山本五十六であったような通りだったのかと思った。

  • 帝国海軍の軍人・米内光政の生涯を描いた阿川弘之の作品。開戦から敗戦に至るまでの異常な状況下で大局的な観点で適切な判断により戦争を終結に導いた人物。その生き方は派手ではないものの、リーダーとはどうあるべきか等、色々と考えさせられる。

著者プロフィール

阿川弘之
一九二〇年(大正九)広島市に生まれる。四二年(昭和一七)九月、東京帝国大学文学部国文科を繰り上げ卒業。兵科予備学生として海軍に入隊し、海軍大尉として中国の漢口にて終戦を迎えた。四六年復員。小説家、評論家。主な作品に『春の城』(読売文学賞)、『雲の墓標』、『山本五十六』(新潮社文学賞)、『米内光政』、『井上成美』(日本文学大賞)、『志賀直哉』(毎日出版文化賞、野間文芸賞)、『食味風々録』(読売文学賞)、『南蛮阿房列車』など。九五年(平成七)『高松宮日記』(全八巻)の編纂校訂に携わる。七八年、第三五回日本芸術院賞恩賜賞受賞。九三年、文化功労者に顕彰される。九九年、文化勲章受章。二〇〇七年、菊池寛賞受賞。日本芸術院会員。二〇一五年(平成二七)没。

「2023年 『海軍こぼれ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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