- 新潮社 (1992年7月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (724ページ) / ISBN・EAN: 9784101110141
みんなの感想まとめ
テーマは、井上成美という人物の合理主義と独自の視点に基づくリーダーシップです。彼は、第二次世界大戦の開戦ムードの中で非開戦を唱え、艦隊決戦論に対抗して航空主兵論を提唱しました。その姿勢は周囲から疎まれ...
感想・レビュー・書評
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井上成美を知ったのは、第二次世界大戦の敗け方を組織論の観点から分析した『失敗の本質』だった。
彼は日本全体が開戦ムードに傾く中、徹底して非開戦を唱え、艦隊決戦論が主流の海軍で航空主兵論を説いたという。
合理主義者で誰に対しても歯に衣着せぬ物言いをすることから煙たがれる場面も多かったようだが、自分の頭で考え抜き、正しいと思ったことを貫く姿勢に私は感銘を受けた。
同じ著者が書いた、『米内光政』や『山本五十六』(どちらも井上成美の実力を買って重用した)も読んでみたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東郷平八郎や山本五十六のような著名な戦功をあげた人物ではないにも関わらず、本書は色々なところで推薦されており、30年以上も読み継がれています。その理由を知りたかったのですが、確かに今の世にも通じる内容が多いのだなと感じました。
本を読み進めていくと、井上成美という人物像について、以下の点が浮かんできます。
・希望的観測を嫌って事実を重視し、合理性を重んじる人だった。
・冷静な観察眼や大局観を持っていた。
・組織に対しても迎合しなかった。
・故に、周りから疎まれていった。
真の理解者は米内光政など限られた人のみだったようですが、少数でも深い理解者とともに仕事ができることは幸せなのかもしれない、とも思ったりします。周りから見ると少し偏屈な人物だったようですが、自らの任務と職責に対する態度、および、自らのスタッフへの接し方は見習いたいところが多いです。
また、本書は「組織力学」「教育論」に関する示唆も多く含んでいます。700ページを超えますが、一人の軍人の伝記といったカテゴリーを超えて、多くの人に読んでほしい一冊です。 -
先日読んだ『失敗の本質』の中で艦隊思想が主流の日本海軍の中で一部に航空強化論があったことが語られており、興味を持った。井上大将の徹底した合理的思考は常人からは敬遠されがち。だが、その本性は冷徹漢ではなく、むしろ”人をつくる”ことに心血を注いだ人生である。こういう人が懐刀に止まらず、サクッとトップに立ち、時代に合うグランドデザインを描くと組織は強いのだろう。戦争物の本は今まであまり読んでいないので読みづらいが自分が広がる感じがしてそこも良い経験だった。面白かった。
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海軍の反戦大将
読んでて思ったのは、強化版 御手洗くん
ゴリゴリの合理主義者でよくあの時代に暗殺されなかったなと思う
日本人特有のその場の空気を大切にするのが嫌いで、なし崩し的に事が進むくらいなら、孤高を選んででも意見する
兵法家としての才能はからっきしりだけど、三国同盟時期と江田島校長時代の功績は本当に凄い
特に日本には絶対必要なタイプの人間だと思う
三提督に触れる機会を与えてくれた阿川さんに感謝です -
山本五十六、米内光政、井上成美。
ともに帝国海軍大将、三国同盟反対派、米英戦争反対派。
井上成美はこの中で一番知られていないが、もっとも戦後に影響を与えたと言っても過言ではないと感じた。
満洲事変から太平洋戦争に至るまで、海軍が陸軍の横暴を抑えられれば日本の運命ももっと良くなっていたと思わざるおえない。 -
「阿川弘之」が「井上成美」を描いた伝記『井上成美』を読みました。
『国を思うて何が悪い ~一自由主義者の憤慨録~』、『山本五十六〈上〉〈下〉』に続き、「阿川弘之」追悼読書です。
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一億総玉砕だけは避けねばならぬ。
孤高にして清貧。
日米開戦を強硬に反対した、最後の海軍大将の反骨心溢れる生涯。
昭和五十年暮、最後の元海軍大将が逝った。
帝国海軍きっての知性といわれた「井上成美」である。
彼は、終始無謀な対米戦争に批判的で、兵学校校長時代は英語教育廃止論をしりぞけ、敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭し、戦後は近所の子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた。
「山本五十六」「米内光政」に続く、著者のライフワーク海軍提督三部作完結編。
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海軍提督三部作の完結篇、、、
「井上成美」のことは、あまり知らなかったのですが、『山本五十六〈上〉〈下〉』を読んで、その冷静でストイックな生き方が気になったので、本書を読んでみました。
大局的な見地で物事を考え、客観的かつ冷静な判断力を持ち、曲がったことが大嫌いで、妥協することなく自分の考えを貫き、相手が誰であっても自分の主張を明確に… そして、歯に衣着せずに、そのまま伝える姿勢には憧れを感じますね、、、
自分に不足している部分だからかなぁ。
「山本五十六」が「近衛文麿首相」に対米戦の見込みを聞かれ、
「ぜひともやれと言われるなら、最初の一年や一年半は思う存分暴れてご覧に入れます」
と宣言したことに対して、
「山本さんは何故あの時あんなことを言ったのか。
軍事に素人で優柔不断の近衛公があれを聞けば、とにかく一年半は持つらしいと曖昧な気持ちになるのは決まり切っていた。
『海軍は対米戦争やれません。やれば必ず負けます、それで聯合艦隊司令長官の資格がないといわれるなら私は辞めます』
と、何故はっきり言い切らなかったか」
と明確に批判する等、親密な関係にあった人物であっても、はっきり言っちゃうんですからね。
あまりにも頑固で、潔癖症で、そして、論理的に説明できないことは受け入れない、、、
特に金銭面に関する潔癖性については異常なまで拘り、戦後は長井に隠遁し清貧な暮らしを営むことになりますが… 教育への拘りは捨てきれず、私塾を開いて近所の子ども達に英語を教えていたようです。
江田島の海軍兵学校時代の言動も考えると、軍人や政治家よりも教育者の方が向いていたんじゃないかと思いますね。
友人や親戚だと、付き合いが難しい存在でしょうが、、、
恩師として知り合うのが理想な人物なのかもしれませんね。
「井上成美」の言葉、、、
「私の見通しこそ正しかった。
私の意見、立案に耳傾けていてくれたら、こんな惨澹たる敗戦には立ち至らずにすんだのに」
この人が、もっと日本のトップに近い位置にいたら、日本の歴史は大きく変わったと思います。 -
最後の海軍大将となっていたが、実は本人はこれを断固拒否していたとは。一貫して米英との戦争と日独伊三国同盟に反対を唱え、戦艦での海戦を時代遅れとし、いち早く飛行機での空戦が主体となることを主張した先見の明。戦後の日本の復興にも大きく関わって欲しかったかも
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当時戦争に反対していた人はかなりいたと思うがここまで徹底して反対していた人は少なかったのではないか。
第二次大戦前のヨーロッパにおいて侵略の犠牲になった国と中立を全うした国の条件を整理しての「侵略国が攻撃のために支払う損害が、その獲得し得る利益よりも大きいと思わせるに足る抵抗力を一国が保持する時は中立の維持が可能でである」という箇所は、まとめてみると当たり前だがなるほどと思って考えさせられた。 -
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ほんとに正しいことを言ったのに、したのに、時代に押し流されてしまった人。空軍力の増強をいち早く取り入れようとしたのもこの人。
戦後はもっとまっすぐに日本のために尽くしてくれた方が良かったかもしれない。ストイックすぎたひと。 -
記録の渉猟、訪問取材を積み重ねて執筆された伝記物語。
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2016.10.22
海軍のよさを体現した人だったのではないか?
江田島での教育方針、戦後を見据えてのことだったことには感服した。
戦はへただった。
山本、米内もそれぞれに良さと悪さがあり、井上もそう。それを、丁寧に書き上げている筆者のすごさにいけい。それを互いに補っていた。 -
井上提督は、国家を戦争の道に陥れた、いわば国賊を憚ることなく厳しく批判していた。東京裁判でA級戦犯とされた何人もそのなかに含まれている。東京裁判は、戦勝国による一方的な判決という見方は完全に否定できないが、あながち間違っているとも言えない。
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切れ者。自己に厳しい。鋭い。
だが、近所の子たちに英語の塾を喜んでしていた人でもある。 -
ただしい、を貫き通すことと、善し悪しとは、また違うんだろうなあ
山本五十六、米内光政と来てようやく!!
読み終えました。
春夏秋とかかりましたね。今年の収穫というか、じっくりと、取り組んだ海軍三部作です。
で、いきなり
晩年、東郷元帥をどう思ふかと人に問はれて
と旧仮名遣いになりびっくり。
前2冊を新しいバージョンで買ったのか、と驚いてしまいましたがそうでもない模様。
読み物的面白さ、それはつまり人物としての面白さで言いますと前二作の山本五十六、米内光政の方が魅力的です。米内さんが一番人としては大きいのかな、と感じさせられました。
とにかく、曲がったことが大嫌いなんですね。正しい。本当に正論だし、正義です。
ただしい、を貫き通すことと、善し悪しとは、また違うんだろうなあと読んでいく端々から感じられます。
そういった人もいるのが、組織。
その人と人との相性をもって、何倍にも力を増すことだってあるし、足を引っ張り合って成果を出せないどころか破滅に導かれる組織すらある。
海軍という組織の中ではこのような人が必要だったのだと、3冊読み終えるとわかります。
それゆえ、これを最初に読んでしまった方には、ぜひぜひ山本五十六と米内光政もお読みいただきたいですね。
信念を持ち、組織で、日本で自分がどう生きていこうか。そんなことを思ったりもしました。
考え、行動するためにも、歴史を、先人たちを知っていきたいと思います。 -
「最後の海軍大将」井上成美がこの世を去つて、今年で丁度40年になるな......と思ひ、本書『井上成美』を書棚から引張り出してゐたら、著者の阿川弘之氏の死去を伝へるニュウスが飛び込んできました。94歳。「文士」と呼ぶに相応しい人がまた一人ゐなくなつてしまひました。
ところで報道では、阿川氏を「第三の新人」の仲間扱ひしてゐる記事も散見されますが、さうなのですか? ま、いいけど。
海軍省リベラル派三人衆(左派トリオとも)と言へば、米内光政、山本五十六、そして井上成美。作中でも、しばしば「米内山本井上」とひとまとめにして記述してをります。阿川氏はこの三人それぞれの評伝小説を世に残しました。
米内光政は海軍大臣等を経て、内閣総理大臣にまでなつた人物。山本五十六は真珠湾攻撃で名を挙げ、その後戦死し半ば神格化されてしまつた人。
比べて、井上成美は軍人としては「いくさの下手な人」との評が付き纏ひ、ガチガチの堅物と呼ばれ、自分の信念を曲げず、如何なる相手でも理の通らぬ事は痛烈批判し、従つて周囲に敵が多く、肉親さへ彼を敬ひ遠ざけるほどの偏屈な人といはれ、小説や映画の主人公にはなりにくいと思はれます。
しかるに本書を一読しますと、阿川氏は上記三人の中で、最も思ひ入れが強いのは井上成美ではないかと、わたくしなぞは推測するのであります。数多くの人物に取材し貴重な証言を得、膨大な分量の文献に当り、なるべく私見を挟まずに記述することにより、逆に読者に著者の思惑が伝はる作品になつてゐます。
日米開戦には元元反対だつた、米内山本井上のトリオ。米国の実力を知る三名は、あんな国と戦争をして勝てる訳が無いと見抜いてゐましたが、陸軍はヒトラーのドイツ、ムッソリーニのイタリアと同盟を結べば(もちろんこのトリオは、三国同盟には真向から猛反対してゐました)、英米なにするものぞと意気軒昂であり、世論もそれに傾き、海軍内にも「山本腰抜論」が跋扈したとか。
結局山本が米国攻撃の指揮を取り、序盤は花花しい戦果をあげますが、案の定二年もたず戦況は暗転します。そして山本は戦死......
結局、終戦工作(和平交渉)を、米内海相、井上次官のコンビですすめるのですが、時遅く広島と長崎に「新型爆弾」が落とされ、ポツダム宣言を受諾することになりました。
井上は戦後、表舞台から身を引きます。横須賀市長井の自宅にて、子供相手に英語塾なぞを開いて教へてゐたさうです。子供たちは厳しく躾けられたが、この塾に通うことを楽しみにしてゐたとの証言もあります。井上先生は中中の人気者だつたとか。
海軍兵学校の校長をしてゐたこともあり、教育には大いに熱心で関心が高かつた。海兵学校では、敵性語として各所で禁止された英語教育を、頑として廃止しなかつた信念の人であります。
井上は軍人としては中途半端なキャリアだつたかも知れませんが、本人も発言してゐたやうに、本質は教育者だつたのでせう。平和な時代に、彼が教育者として名を残せたら、どんな実績を作つただらうかと妄想してしまふのです。
晩年は、必ずしも恵まれたものではなく、その原因も自らの狷介さ(よく言へば潔癖で、自分に厳しいとも申せますが)が招いたものなので、読者としては歯痒い思ひであります。
色色な立場によつて、その評価が大いに分かれる井上成美。評伝は各種出てゐますが、阿川氏追悼の意も込めて、まづは本書をお薦めします。じわじわと感動が広がつてくる、骨太の一冊であります。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-571.html -
阿川弘之著の海軍提督三部作完結編。
井上成美は、「山本五十六」、「米内光政」と共に日独伊三国同盟に反対し、米国との対戦に終始反対していた。また、開戦当時より日本の敗戦を予告し、敗戦前夜は終戦工作にも奔走する。
この三人の中でも井上は参謀タイプで合理的な判断を重視し、孤立を怖れずに自ら強い信念を貫く。
当時、世の中が陸軍を中心にファッショ的になる中でも信念を貫くことは生命の危険にも晒されることでもあり、その気骨ある姿に敬意を抱く。
当然のことながら、井上の言動に対して海軍内でも大いに批判があったわけだが、それを凌駕するだけの合理的な判断力、これはきっと留学等を経験する中で幅広い知見を得ていたのだろう、卓越した知力(考え抜く力)を有していた。
また海軍兵学校長も務め、戦後は地域の子供達へ英語教育を施すなど教育者としての顔もみせる。
著者は、人間として「堅物」、「付き合い難い」、とネガティブな人物像も記しているが、それ故、井上の真の姿(人間性)、実像を描くことに成功しているのではないか。
戦後は、英語の授業料を拒むなど、私生活でも清貧を貫く。まさに侍精神、武士道を残っていた時代なのかもしれない。
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著者プロフィール
阿川弘之の作品
