鮨 そのほか (新潮文庫 あ 3-19)

著者 :
  • 新潮社
3.80
  • (2)
  • (4)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 58
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101110196

作品紹介・あらすじ

見渡す限り桜満開の美しい情景が続く霊園――。志賀直哉の末娘の死を描いた「花がたみ」。旅の帰路に会った見知らぬ男性との、一瞬の邂逅を描く「鮨」。夏目漱石・内田百閒の衣鉢を継ぐ「贋々作『猫』」……。詩情と諧謔に満ちた短篇小説の名品や、馥郁たる日本語の粋を尽した随筆類と共に、吉行淳之介・遠藤周作を偲ぶ座談会などを収録。70年近い著者の文筆生活を締め括る、最後の一冊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 阿川弘之の作品集『鮨 そのほか』を読みました。
    阿川弘之の作品は昨年10月に読んだ『七十の手習ひ』以来ですね。

    ------
    志賀直哉への思慕、旧友への追憶、自身の文学観……。
    文筆生活を締め括る最後の一冊。

    見渡す限り桜満開の美しい情景が続く霊園――。
    志賀直哉の末娘の死を描いた「花がたみ」。
    旅の帰路に会った見知らぬ男性との、一瞬の邂逅を描く「鮨」。
    夏目漱石・内田百閒の衣鉢を継ぐ「贋々作『猫』」……。
    詩情と諧謔に満ちた短篇小説の名品や、馥郁たる日本語の粋を尽した随筆類と共に、吉行淳之介・遠藤周作を偲ぶ座談会などを収録。
    70年近い著者の文筆生活を締め括る、最後の一冊。
    ------

    2013年(平成25年)に刊行された作品……引退宣言後の刊行で、で未刊行だった作品集です。

     ■花がたみ
     ■鮨
     ■贋々作『猫』
       * * *
     ■阿部昭の短かかりし日々
     ■四十四年目のマンボウ航路
     ■宮脇俊三さんを悼む
     ■宮脇俊三『史記のつまみぐい』
     ■半藤一利『それからの海舟』
     ■世界最古の王室
     ■妃殿下、ハワイの休日
     ■クックス博士の思ひ出
     ■五里霧中の我が文学論
     ■蘆花と軍歌
     ■舷燈消して
     ■『雪の進軍』
     ■私の八月十五日
     ■「新型爆弾」が焼いた蔵書
     ■娘の顔
     ■伝統の社風
     ■駅前のルオー旧居
     ■志賀直哉とルオー
     ■志賀家の皿小鉢
     ■「白樺」の前にあった「白樺」
     ■志賀直哉の生活と芸術
     ■「暗夜行路」解説
       * * *
     ■座談会 わが友吉行淳之介―阿川弘之 遠藤周作 小島信夫 庄野潤三 三浦朱門
     ■対談 良友・悪友・狐狸庵先生―阿川弘之 北杜夫 阿川佐和子
     ■あとがき―著者より読者へ―
     ■阿川弘之について思い出すこと 三浦朱門

    短篇小説、随筆、座談会、対談など多彩な作品を収録した作品……旧仮名遣いで描かれているので、最初は読み難いかと思いましたが、意外とすぐに慣れてましたね、、、

    文壇仲間や親交のあった作家たちとの思い出話は文学史の裏話のようで興味深いですねー 吉行淳之介や遠藤周作、安岡章太郎をはじめ、阿部昭、宮脇俊三、北杜夫……同時代を生きた作家たち、先立った友への思いは慨嘆は深かったですね。

    阿川弘之の文章は、硬くて知的な印象がありますが、その中にもユーモアや皮肉が隠されているので、意外と愉しく読めました……そんな中で最も印象に残ったのは、地方都市での討論会で宴席を辞退したために主催者側が用意して持たされた寿司折に纏わる短篇小説『鮨』ですね、、、

    寿司折には、胡瓜巻き、干瓢巻き、玉子巻き、巻き寿司が詰められていたが、東京帰着後に夕食の約束があることから、好物の太巻きの巻き寿司をひとつだけ食べて残りを持て余す……これ以上食えず、持ち帰っても冷蔵庫で数日滞留して捨てられる運命にあるが、捨てるに捨てられず というもどかしい気持ちに共感してしまい、自分事のように心をシンクロさせながら読むことができました。

    あとは、阿川弘之が自身のことを良く自覚していたんだなー と感じて興味深く読めた随筆の『舷燈消して』ですね、、、

    偏屈で頑固で心が歪んでいる とか、我儘な癇癪もちで、外で発散しかねる憤懣を家庭で別のかたちで爆発させる とか、しっかり自己分析できていたんですね……ちょっと意外でしたが、自分のことをしっかり描き残したいという気持ちの表れだったのかもしれませんね。

  • 面白かった!タイトルからしてとても惹き付けられて、読んでみました。
    他のも読んでみます!

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

阿川弘之
一九二〇年(大正九)広島市に生まれる。四二年(昭和一七)九月、東京帝国大学文学部国文科を繰り上げ卒業。兵科予備学生として海軍に入隊し、海軍大尉として中国の漢口にて終戦を迎えた。四六年復員。小説家、評論家。主な作品に『春の城』(読売文学賞)、『雲の墓標』、『山本五十六』(新潮社文学賞)、『米内光政』、『井上成美』(日本文学大賞)、『志賀直哉』(毎日出版文化賞、野間文芸賞)、『食味風々録』(読売文学賞)、『南蛮阿房列車』など。九五年(平成七)『高松宮日記』(全八巻)の編纂校訂に携わる。七八年、第三五回日本芸術院賞恩賜賞受賞。九三年、文化功労者に顕彰される。九九年、文化勲章受章。二〇〇七年、菊池寛賞受賞。日本芸術院会員。二〇一五年(平成二七)没。

「2023年 『海軍こぼれ話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿川弘之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×