江分利満氏の優雅な生活 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101111018

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  • のほほんとしたお話かと思いきや、実はちょっとせつない話。

  • サラリーマンの物語と言えば「島耕作」が浮かぶ。
    「動的」で「憧憬的」なストーリーの前者に比べると、
    山口瞳のこの作品をコミカライズすれば著しく「静的」な物語になってしまうだろうか。

    飄々とした一庶民の生き様が時代を問わず共感を抱かせる一方で
    出生における不都合からの生じたある種の諦念、戦争前後の驚天動地の中で育まれた思惟といったより著者本人のカラーが出る部分にも読ませるものがあった。

  • 35歳で東西電気に務め、妻と10歳の息子とともに暮らしている江分利満(えぶりまん)というサラリーマンの男の日々の生活をえがいた作品です。

    高度成長期のごくあたりまえの男の現実がユーモラスな文章で記されており、気楽に読むことができますが、江分利の日常を脅かす父親とその老醜に触れた箇所など、心を揺さぶられます。「才能のある人間が生きるのはなんでもないいことなんだよ。……ほんとに「えらい」のは一生懸命生きている奴だよ、江分利みたいなヤツだよ。匹夫・匹婦・豚児だよ」と語られているように、江分利に注がれる著者のあたたかいまなざしが印象深く感じられました。

  • 山口瞳作品初挑戦でしたが、ぐっとはまってしまいました。文体が好きなのかも。
    主人公が大正14年生まれ、現在の年齢で言うと89歳、自分の祖父母ぐらいの世代になります。その戦前世代が働き盛りな時代の生活を垣間見ているような気分で、今と変わらない喜怒哀楽に共感を感じたり、逆にギャップを感じたり。
    冒頭、江分利満氏の生活は少し抽象的で、ショートショート短編のような毎日から始まります。社宅で暮らす江戸っ子的な、それでいて都会的な一家は、物語が進むと様々な困難にぶち当たるわけです。その度に涙を流し、誰かの助けを受けて生き抜く江分利一家は、その肉付けの末、気付けば冒頭の抽象的な一般家庭などではなくなっているように感じられます。
    でもこれってもしかしたら、どこの家庭も同じなのかもしれないなぁと思います。困難にぶつかる度に強くなる家族の愛は、皆が持っているもので、つまりだからエブリマンなんだと気づくのであります。

  • 普通のサラリーマンの普通の人生。戦後ほどない時代背景で些かギャップを感じるが、なにか頑張って生きようという気にさせられる。13.6.5

  • この小説を読んで,「人は愚直で良いのだ」と思えるようになった.地べたに這いつくばって,歯を食いしばりながら生きていくことが有ってもかまわないのだと思えるようになった.

    この小説の主人公,江分利満はそれこそ,サラリーマン時代の山口瞳そのものなんだろうと思う.私小説に近いのではないか.だからこそ,中年男が抱える腹の奥深いどろどろとしたものが,すごく切実でなおかつ滑稽であったりする.文章がわかりやすい.いかにも昭和の男のサラリーマンという感じがする.でも,そういったところは平成の今の世の中も変わっていないのかもしれないところがあって,それはそれで身近に感じたりする.

    この本を読んで気楽になったといったら言い過ぎか.それでも,この本に出会って良かったと心底思う本だ.

  • 昭和元年生まれの、江分利•満=エブリ•マンは、最も典型的な昭和の日本人。

    一人の戦中戦後を生きたサラリーマンの悲哀に満ちた物語。

  • 再読。

  • 江分利満は決して平均的な日本人ではない。むしろお坊ちゃま的である。
    だが老醜を語る江分利満の言葉には、アルツハイマーの母を抱える私には、ひどく心に沁みいった。人の心は奥深く、一概に人を論じてはならないとしみじみ思った。偏見の人である、江分利満氏は、そして古い人である。そういう意味では平均的な日本人である。

  • 昭和37年のサラリーマン。直木賞を取った小説"ということになっているが、江分利氏は山口氏であり、半分はエッセイであるという斬新な作。’60年代半ばの昭和で、博打やモノを除いて会社や生活のあり方は、目をつぶったら情景が浮かぶほど今と違和感が無い。生活の根本はいつまでも不変であることを思い知らされる一作。

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著者プロフィール

1926年東京生まれ。小説家、随筆家。『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞受賞。おもな著作に31年間連載したコラムをまとめた「男性自身」シリーズ、『血族』『居酒屋兆治』など。1995年没。

「2014年 『ぐつぐつ、お鍋 おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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