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本 ・本 (269ページ) / ISBN・EAN: 9784101113012
感想・レビュー・書評
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倉橋由美子がデビュー作「パルタイ」(1960年)で受賞した直後の作品群。
「観念の操作をその根底においた、抽象的な作風」(解説の森川達也)にもかかわらず、一気に読ませる。KやLといったローマ字で表される登場人物たちが、この世なのだが似て非なる世界を遊泳する様子が克明に綴られる。
ファンタジーとは違う、その非現実ぶりは独特だ。巨大な「悪夢」だと作者も言う。
「鷲になった少年」(カミュ風作品)
友達のピンチヒッターで高校生の家庭教師をした女大学生「L」は少年を誘惑するが、陰では大人の男性と婚約している。恋する少年は二人追いかける。不条理な結末。他の2編に比べてわかりやすいし、ほっとしたというのも変だが、情緒といえども倉橋風。
「婚約」(カフカ風)
比喩、暗喩から言えば結婚へ到る道は通し。主人公「K」は作家なので、その姿勢、発言は作者の代弁である。
「どこにもない場所」(サルトル風)
題に魅せられた。やはり作家の小説のとらえかた、有りようが議論されていて面白い。しかし、ストーリーは複雑、夢想的である。「どこにもない場所」は作者の意識の中だろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(1972.01.13読了)(1971.06.27購入)
*解説目録より*
著者の鬱屈した文学的青春の夢と感受性を明晰に歌いあげた散文詩「鷲になった少年」、カフカをモデルにしたフィクションで、彼の生涯と文学に献げた鎮魂と頌讃の歌「婚約」、サルトルの美学を文学的背景として純粋想念の世界を描いた「どこにもない場所」。〝純小説〟の独自な作風をもっとも端的に示す作品三編。
☆関連図書(既読)
「聖少女」倉橋由美子著、新潮社、1965.09.05
「妖女のように」倉橋由美子著、冬樹社、1966.01.20
「スミヤキストQの冒険」倉橋由美子著、講談社、1969.04.24
「暗い旅」倉橋由美子著、新潮文庫、1971.11.30
著者プロフィール
倉橋由美子の作品





