妖女のように (新潮文庫 草 113-D)

  • 新潮社 (1975年7月1日発売)
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  • 本 ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113043

感想・レビュー・書評

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  • 「妖女のように」「結婚」「共棲」の三作品を収録しています。

    三つの作品は独立した内容ですが、K、L、Sといった記号で表現される登場人物たちの物語だという点では共通しています。著者は「あとがき」で、「KおよびLという一対は、かりに男および女という外形をあたえられた仮設的純粋人間すなわちアンドロギュヌスをなす双生児であり、Sは社会的人間を代表する」と説明されています。

    さらに三つの作品それぞれの主題についても、「『結婚』は、結婚というフィクションへの参加を茶番的儀式として記録したものであり、『妖女のように』では「女にして作家であること」の条件がグロテスクに追求されており、『共棲』になると「結婚」というフィクションの内側で不貞な精神の生活が癌細胞のように繁殖していきます」と自解がおこなわれています。

    「結婚」は、KとLのきょうだいが永遠につづく男女のエロス的関係を象徴するとともに、Lが現実の次元における契約としてのみ結婚という制度を理解しようとするのに対し、社会的な存在を象徴するSが愛という理念を得たいと願って苦しむという、著者らしいエスプリを強めに利かせた内容だと感じました。

  • 個人的には表題作もさることながら「結婚」が好き。「パルタイ」などカフカの影響を受けた作品群に連なる笑劇的な運びと、それに反して「どこでもない場所」をすら思わせる結末。感傷的といえば感傷的だけれども、終盤の「黒い舌がはためいた」という表現は秀逸。

  • 表題作は豊富なユーモアもある面白い。カフカと少女趣味を足して2で割ったようなこの人の小説は意外にも読みやすいのだ。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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