倉橋由美子の怪奇掌篇 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1988年1月1日発売)
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  • 本 ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113111

感想・レビュー・書評

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  • 二十編の二十の怪奇掌篇を収録しています。

    「革命」は、身体のなかで進行するガン細胞が、革命をめざす前衛党員たちとなって会話しているのが聞こえるようになった男の話です。心理学者の岸田秀が『ものぐさ精神分析』のなかで、まさにガンの進行を革命になぞらえる考えを語っていたことを思い出しました。

    「鬼女の面」は、面をかぶるととれなくなってしまう「肉付きの面」のアイディアを借りた話です。面をつけられた女性たちが、死にいたるまでの性の悦びをあじわっていたことを知り、男は自分でも面をつけてみたいという誘惑に駆られます。

    そのほか、印象にのこっているものとしては、少年の首のような植物らしいものを拾ってそだてる「アポロンの首」、美青年が醜い悪尉のような面相にとり換えられてしまう「交換」、スウィフトの『ガリバー旅行記』のパロディであり芥川龍之介の翻案による「桃太郎」のようなブラック・ユーモアに満ちた「オーグル国渡航記」などがあります。

  • 大人のための残酷童話が面白かったのでこれも読みました。
    古典とかの元ネタが色んなとこに入ってる幻想小説で、エンターテイメント系なのでめちゃくちゃ読みやすかったよ。大人のための残酷童話もそうやったけど、多分わざとクセのないあっさりした文章で書いてるよね。
    話もどれも面白かった。元ネタは分からないのもたくさんあったかもしれないけど。

  • やはり倉橋さんの怪奇小説は最高に面白い。
    “大人のための童話”って感じがする。
    夜の深い時間に無音の中読むのを薦めたい。

    神話や伝説、昔話を題材にしたものから
    SFちっくなお話までジャンルが幅広く、
    作者の知的な部分が至るところで垣間見える。

    設定や展開が斬新で、結末が最後までよめない
    ところもよかった。
    オチもいい意味でサッと終わっててよい。

    文章の書き方も、重厚で文学的な文章から
    ライトな語り口のものまで自由自在。

    個人的に、カボチャのような顔の元首相の話と
    長風呂しすぎて骸骨化する男の子の話が好き。

  • ◆一篇が10ページにも満たない、倉橋由美子の二十の怪奇掌篇。倉橋由美子をアンソロジー以外で読んだのはこれが初めて。思ったよりもドライでSF的。◆首遊び・カニバリズム・近親相姦・乱交・不倫…禁忌にあふれた大人のお伽話。毎夜3話ずつ読んだ。
    ◆倉橋由美子は語らぬ首を愛おしむ。体の美と分断された首を愛おしむ。まるでその中にすべてが、見尽くせぬ宇宙が詰められているように。囚われた首は表現することをやめ、夢を見続ける。切り離された身体は言うがままの物体となる。人を物体として扱い・人に物体として扱われることで、人は“人間” “自己”であることから自由になる。◆もしや禁忌を侵すとはそういうことなのかもしれない。人は潜在的に自分を縛っているものから解き放たれたいのだ。たとえ、その先がもっと深い闇の牢獄であるとしても。

  • ドロドロした怖い話が冷ややかに語られていて、むっちゃ面白い。
    何度も読み返していますが、
    今回一番心に引っかかったのは「首の飛ぶ女」。
    人を愛することさえしなければ――という、
    語り手の決意が哀し過ぎ。

  • お前何読んでるのとか突っ込まないでください。

  • 怖いっていうより、やっぱ毒気が強いという印象。

  • 古本屋で見つけて紙で読みました。
    短篇全部刺さりまくり、さすがです。
    どれもオチが良かった。

  • 怪奇と云うよりは、奇妙な味わいの余韻を残す、小洒落た作品集。
    サラッと読めるのがいい。

  • 幻想的な、あるいは不気味な話が20編。こういう話が好きなわけではないが、たまに読むとおもしろい。昭和六十三年三月二十五日発行、昭和六十三年九月二十五日五刷。定価320円。
    収録作品:「ヴァンピールの会」、「革命」、「首の飛ぶ女」、「事故」、「獣の夢」、「幽霊屋敷」、「アポロンの首」、「発狂」、「オーグル国渡航記」、「鬼女の面」、「聖家族」、「生還」、「交換」、「瓶の中の恋人たち」、「月の都」、「カニバリスト夫妻」、「夕顔」、「無鬼論」、「カボチャ奇譚」、「イフリートの復習」、「解説」(北杜夫)

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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