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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784101113135
感想・レビュー・書評
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はやりのデストピアの世界かユートピアか?と読みましたが、1986年に書かれた作品なので、その後を過ごしているわたしたちには、現実とダブりました。
著者もこの小説で言っています「食べても食べても飽きないお菓子」さらさらと読めたのはさすがです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
唯一神を信仰する「モノカミ教」のコレジオを出たPは、アマノン国への布教活動に赴きます。ところが、アマノン国はほぼ女性のみによって社会が運営されており、男性は国が管理する精子バンクに幽閉されている者や、アウトローの世界をのぞけば、「ラオタン」と呼ばれる去勢された者だけが存在を許されていました。
アマノン国に到着した彼は、ブッダ教の老尼僧であるムイン師のもとにいるヒメコという少女の賢明さと美しさに魅かれ、彼女を秘書にします。アマノン国で暮らすうちに、やがてPはこの国の人びとの多くが宗教をたんなる慰安の手段としてのみ認めていることに気づきます。彼は、アマノン国の人びとにモノカミの信仰を説くことよりも、モノカミ教の儀式としてこの国を支配する女性たちとセックスをおこなって、男性の復権を実現する「オッス革命」をもくろむようになります。
政府の協力をとりつけたPは、テレビ番組「モノパラ」で世間の注目を集め、ついにアマノン国随一の権力者であるエイコスとの格闘技イヴェントで勝利します。しかしその後、アマノン国は崩壊に見舞われ、Pはヒメコをはじめ仲間たちとともにこの国を脱出します。
「エピローグ」には、本編が出産の寓話となっていることを示すような後日談があります。安易なオチという見かたもあるのかもしれませんが、性についての異様な慣習を批評するまなざしがそれまでとは反転してモノカミ教の側へ向けられる仕掛けとなっているように感じます。 -
めちゃくちゃな話。
男がほとんどいなく、精子バンクで精子を買って子供を産む世界。
そこに行く男、P。
エロと少しのグロが交差する不思議な話。 -
第15回(1987年) 泉鏡花文学賞受賞
内容(「BOOK」データベースより)
モノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリヤの突破に成功した唯一の宣教師Pを持っていたのは、一切の思想や観念を受け容れない女性国だった。男を排除し生殖は人工受精によって行われるこの国に〈男〉と〈女〉を復活させるべく,Pは「オッス革命」の遂行に奮闘するが…。究極の女性化社会で繰り広げられる、性と宗教と革命の大冒険。 -
大真面目に悪ふざけが展開するSF……
と言ってしまっていいだろうか。
女が支配する国と化して久しいアマノンを
本来あるべき形に戻そうと、
元々そういうつもりで乗り込んだワケじゃなかったのに、
図らずも奮闘する羽目になってしまったモノカミ教団の宣教師P。
しかし、布教と称して実際に行うのは――うーむむむ(苦笑)。 -
異国や異文化というものは芥川の「河童」のように奇異に映るものだ。しかし、それこそが「異」を差別する原動力となり、自国を過剰尊重する要因となる。他者を知ることこそが人間の許容というものであろうし、そうしなければ発達はあり得ない。もともと日本なんて他国のまねごとをずっとしてきた国だからこそこういう小説を読んで、もしくは書いていかなければならないんだと思う。
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いくつもの宗教が共存し、華やかで洗練されながらも、どこか子どもっぽい文化が花開き、男性の姿は、宦官以外はほとんど見ないという驚異の女性の国。それがアマノン。どこにあるか知らないけれど、どこかで見たことのあるような国。
種子島への鉄砲伝来や16世紀のキリスト教伝来を思わせる導入部から、ニヤニヤ笑いがとめられない。政治家や経済界のトップたちなど、いわゆるVIPが10代の美少女を秘書(≒愛人)にする風習や、ブッダ教の尼僧・ムイン師によるアマノン国の宗教事情の説明、それに、社会的地位が高いほど、言葉遣いが馴れ馴れしくぞんざいな感じになるところなど、どうにもおかしくて笑ってしまう。とくに忘れ去られていながらも、一応畏れられているらしいエンペラ(しかも女性国にあって男性)との謁見のくだりは秀逸。
この本が出版されたのは1989年だが、まるで現在のまま時間を重ねた場合の将来の姿を暗示しているような。おもしろおかしく茶化しながらも、手ごたえのあるジャブが繰り出されている感じ。最後がちょっと、尻すぼみな感じがするのが残念。 -
女性だから、というより倉橋さんだからこそ書けた小説。磨きぬかれた端整な文体と毒を含んだパロディ(結構露骨な)が見事に調和している。こんな面白いのに発禁とはもったいないねえ。
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大学1年、電車通学に片道1時間半かけていた頃に書店で装幀が気に入って購入。
澁澤龍彦『高丘親王航海記』の女人国の部分を長編にした感じの小説でした。
澁澤の親王にくらべると、いささか作家の社会に対する政治的な意志が表にでている気がしないでもない。
著者プロフィール
倉橋由美子の作品





