ポポイ (新潮文庫)

  • 新潮社 (1991年4月1日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784101113142

感想・レビュー・書評

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  • 「数日前、雨が降った。茸を取りに山に行かなければならない。でも行かれない。首が来るので家で待たなければならない」
    生首を預かる舞と、生首の日々。
    なんとも言えない生首との生活と、様々な感情
    倉橋さんらしいと思われる艶めかしさもある
    ただ、肝心の事件の解決をも求めてしまう自分がいますが‥
     倉橋さんの小説ははじめて読みましたが、季節や、風景の表現がなんだか素敵すぎて何度も読んでしまいました。

  • 「桂子さん」シリーズの一冊で、時系列上の第五弾にあたる作品です。

    テロリストの少年が元総理の入江のもとに現われ、彼の前で自殺を遂げます。少年は医師の佐伯によって首だけのすがたで命をつなげられ、入江の孫の舞のもとに預けられます。彼女は少年の首に「ポポイ」という名前をあたえ、やがて舌を用いて文章を打つことのできるワープロを利用して、彼と会話することに成功します。

    他方、襲撃を受けたあと脳の機能に損傷を受けた入江は、やはり佐伯たちの協力を得て、ワープロによる意思疎通が可能になります。こうした状態になってもなお、彼は隠然と勢力をもちつづけるだろうという新聞記者たちの予想に反して、入江は鋭い人間観察を語るものの、生臭い政局についての記憶は薄れていき、首だけとなったポポイも当初は深い思索を示していたものの、しだいに形骸化したことばのみを語るようになります。やがて舞は、急速に老化が進むポポイとの生活に終止符を打つことを決意します。

    首だけのすがたになった美少年を飼う少女という、エグさをたっぷりふくんだ幻想的な着想をかたちにした作品で、著者ならではの世界観に身をひたすことができる内容です。

  • もともとサロメとか、ユディットとか、女子による首取り物語?が好きなこともあり、大変好みで興奮。ポポイ可愛い!しかも元テロリストで切腹後、介錯された首なんて最高!舞さんが羨ましい。
    三島の事件を想起するが、当然、小説内でもその事に触れている。
    三島の小説を「文章のヴィルトゥオーゾ」だと絶賛する舞さんの友人であり、桂子さんの孫娘の名は聡子。春の雪のヒロインの名と同じなのもくすぐられる。
    さて、こちらでの桂子さんは、桂子お祖母様と呼ばれ、元総理大臣の愛人という立場になっていた!

    舞さんがポポイのために飾る絵はクラナッハの「ユディット」!悪趣味だな〜。
    それから、二人?の接吻シーンにドキドキ。生きている生首って素晴らしい。だって、普通なら切り離されてしまった顔は目尻や口角がだら〜んと下がってしまうはず。
    サロメはそういうの気にならなかったのかな

  • お気に入り。俗世間を忘れられるので、時々読み返す。

  • ベースになっているのは別の短編集に収録されている「アポロンの首」。あちらは首っぽく見えても実際には植物でしたが、今回は本物の生首。三島よろしく切腹して介錯された美少年テロリストの首(近未来の医学で生かされている)を預かることになった政治家の孫娘がヒロイン(登場人物がつながっているので桂子さんシリーズでもあるけれど本筋とは関係ないのであまり気にせず)。

    生首を愛でる姫君のイメージはサロメか桜の森かという耽美さですが、最初は無反応に生かされているだけだった首が、だんだん意思表示できるようになっていくにつれて、逆にグロテスクな印象を受けるのが不思議。美少年の首も植物だったら満更でもないけど、さすがに本物の生首は欲しくないや(笑)。

  • 20世紀最後の宰相の孫娘、栗栖舞が生首を預かった。
    首はまだ生きていて大変な美少年である。
    彼女はその首に、悲嘆をあらわすギリシア語の感嘆詞「ポポイ」と名付けた。
    ひとときのおもちゃ代わりに時にペットを扱うように、時に女としてポポイと交流する。

    著者らしく全体的にノーブル感が漂い、生首のグロテスクさは感じさせない。
    『何事にもニュートラルで「非真面目」』な主人公は、静かな水の流れのようだ。
    しかし、その淡々さがポポイの戒名「タナトス」と絡みあって徐々に不気味さに襲われる。

    カバーがNO IMAGEなのが残念。

  • 世界観が独特すぎてついていけなかった。
    話自体はテロリストの首だけで生きている美少年とそれを淡々と観察する主人公で進んでいくが、あまりにも淡々とし過ぎていて少し怖かった。
    首だけの美少年がありのままの事実を受け入れているのも怖かったし、観察している主人公もまるで猫や犬を見てるのと同じ目で首を見てるのも違和感だらけだった。
    そしてそこに微妙な感じの恋愛話も加わり短い物語ながら色々と詰め込み過ぎて大筋が全く見えなかった。
    何を書きたかったのかそれがわからなかったため時間をおいてもう一度チャレンジしたい。

  • 桂子さんシリーズ。再読。
    入江晃さんがテロリストに会い、何かを話した。テロリストは自決し、入江さんは脳梗塞に。で、そのテロリストの首を婚約者から預かったのが、孫の来栖舞さん。首は装置につながれて生きている。首にポポイという名をつける。
    桂子さんは健在。聡子さんは明さんと結婚している。舞さんの恋人は従弟の翠くん。天才らしい。
    あいかわらずの倉橋ワールド。桂子さんシリーズもっと書いてほしかったなぁ・

  • 桂子さんシリーズ.
    多分,時代としては「シュンポシオン」の前,「交歓」のあと.

    桂子さんのパートナー元首相の入江さんの孫娘,舞と青年テロリストの生ける生首の交流を描く.乾いた書き方でおどろおどろしさはない.首のポポイくんは舌で操作するワープロで舞と話す.ここの部分,首はカタカナで,舞は通常のひらがなの文で会話が進む.単行本出版当時は旧仮名だったらしいから,ここは谷崎の「鍵」のような効果を狙ったのだろう.
    書かれた時点では近未来小説的なところもあったのだろうが,現代でもまったく違和感なく読めるし,十分楽しめる.

  • 【あらすじ】時は21世紀、なお権勢を誇る元元首の邸宅に、一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった……。
    首だけで生きているテロリストの青年の首を預けられた舞が、生まれた時からハイソな暮らししかしてこなかった女子の自分の世界目線で周囲を見る、と言うのが裕福が故の大らかさで逆に偏見がある様でない、と言う、あくまでも自分の興味中心なとことか。高い教養とか当たり前に自分にあるモノで、それを鼻にかけてもいないが隠してもいないとこがいい。でもまあ、個人的には舞が男子であった方がもっと面白かったろうな、とは思う(笑)。ポポイの切腹を介錯してから自害した青年との関係がホモセクシャル的と噂されてる真相が出ると、実は…な気がしていたが、結局何故青年がテロ行為を行ったのかは明かされずに終わってしまったが、とても不思議な感触で読み終えた。
    ポポイが何故元首相宅へ乗り込み、声明を述べてから切腹・介錯されたのか…美形なのに印象の残らない大人しい少年時代を送った裕福じゃない家で育った少年が、何故テロリストまがいの行動を起こしたのか、全く謎は解明されないんだけど、解明されない、と言う下りも文中にあるが、関連作はないのか…昨日、色々ぐぐってて首だけの犬を…と言う実験映像(真相はやぶの中だが)見ただけに、テロ行為をして自害して、切って落ちた首に装置を繋いだら頭だけで生きてたからやってみた、ではやっぱやるせない。舞の下した判断は慈悲や人間の非道な行いに対する憤怒などではなく、ポポイが老化し始め美しくなくなっていくからだろうしなぁ。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉橋由美子の作品

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