大人のための残酷童話 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1998年8月1日発売)
3.22
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本棚登録 : 1245
感想 : 120
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  • 本 ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113166

感想・レビュー・書評

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  • 噂には聞いていたエログロ童話集
    1984年の作品
    全26作品
    一作10ページほどの短編
    それでも各作品何を元としているか明確
    そこにより残酷で非現実的なストーリーに仕上げている、あくまで大人の為の童話
    各作品のラストにそのストーリーからくる教訓で締めくくるが、そちらもブラック
    倉橋さんは、何かを教示るとかではなく、大人の読者が楽しめれば良いという事に徹したのかなと思う

    衝撃的だった作品

    〈人魚の涙〉
    上半身が魚で下半身が人の人魚が王子に恋をする
    人は下半身に恋をしない

    〈一寸法師の恋〉
    一寸法師のお姫様の大人のおもちゃ化
    鬼退治の後、小槌で身体を大きくしてめでたしのはずが、一寸法師のままのところがあってだね…

    世の中、厳しいんだよと再確認できる童話集


    • おびのりさん
      なんかね、三人並んでるの読んだら
      ダチョウ倶楽部思い出した
      なんかね、三人並んでるの読んだら
      ダチョウ倶楽部思い出した
      2024/06/28
    • 1Q84O1さん
      ヤーーー!!
      ヤーーー!!
      2024/06/28
    • Manideさん
      オモシロイデス(^^)

      最後のヨンジャッタで、
      どっと、笑っちゃいました。
      オモシロイデス(^^)

      最後のヨンジャッタで、
      どっと、笑っちゃいました。
      2024/06/28
  • 童話にエログロとか毒や悪意を盛り込んで作り替えたもの。

    本書とは関係ないが、小さい頃に何も考えずに歌っていた、本当は怖い歌をいろいろと思い出した。
    てるてるぼうず、赤い靴、花いちもんめ、かごめかごめ、通りゃんせ、など。
    大人になって冷静に歌詞を読むと、どんな世の中だったのかと思う。

    童謡はさておいて、この「残酷童話」は人の醜い心が満ち溢れている。
    食欲、性欲、物欲、支配欲、何をとっても意地汚く、自尊他卑でどの話にも光明が見られない。
    加えて支離滅裂・目茶苦茶・下品・復讐心・無秩序・不合理・理不尽といった言葉しか浮かんでこないストーリー。

    どの物語にも最後に"教訓"が添えられている。
    2つだけネタバレするとこんな感じ。

    ・鏡を見た王女(原作:谷崎潤一郎「春琴抄」)
     【教訓】鏡は己の醜さを見るためにある

    ・飯食わぬ女異聞(原作:日本昔話「飯食わぬ女」)
     【教訓】女を食わせぬ男は女に食われます

    現実の中にひっそりと存在する残酷さが見え隠れする、現実離れした世界を描いた作品集でした。
    私が苦手な悪趣味な話ばかりなのに、嫌悪感が湧いてこなかったのが不思議。

  • おびのりさんの本棚でお見かけして妙にきになりました所、昼休みに読めるとの事で隙間時間用に。
    これが驚きの読みやすさで、隙間時間に読んでいただけなのに現在進行中の2作より先に読み終えてしまいました。

    おびのりさんのレビューにもあるように、基本的な古より伝わる童話、神話に作者様の創作が入りエログロの大人向け童話となっております。
    エロさは『魔獣狩り』を読んでいる私にとっては最早可愛いものですが、おびのりさんとは衝撃を受けた話が違いましたので、中でもなんだってぇ?!となった作品を4つだけご紹介したいと思います。
    作品ごとに教訓が一行書いてあります。ネタバレになるかも知れませんがこれ有りきなのでいくつかだけ書かせて頂きます。

    『猿蟹戦争』
    猿が蟹に意地悪をして仕返しをするという有名なアレです。
    本作ではこの仕返しのレベルが異常値。
    以前に同じく猿に酷い目に合わされたムカデやナメクジなどが大集合。俺もあいつを許せないのだぜ!!と寄って集って蟹の元に集まり猿を懲らしめる。

    教訓「※※を支援する会」事始め

    ブラックすぎる。
    被害者の会のような趣ですがここまでやると復讐の連鎖は何処まで続くのだろうか、的な深い話になりそう。

    『かぐや姫』
    ほぼ、そのまんま竹取物語です。かぐや姫は宇宙人説はよくある話だと思いますが、問題なのはこのかぐや姫の住んでいた星の政治的問題。
    なんだかえらいことになってますけど?と思っていたら、最終的にえらいことになったのはかぐや姫本人でした。
    高畑勲もびっくりです。

    教訓「かぐや姫は宇宙人だった。そして宇宙人は醜い」

    言い切った、言い切ったよ!!
    今でこそ美しい宇宙人という設定が多くありますが、当時(昭和59年)はグレイマンのようなイメージしか無かったのですかね。
    まあでも、宇宙人が醜くかろうがなんだろうが、結局1番怖い面を持っているのは人間なんだろうな、と何とも言えない気持ちになった一作でした。

    『異説カチカチ山』
    お婆さんを殺した狸に、お爺さんの代わりに兎が復讐するという、原作も中々にヘビーな話なのですが。
    本作はカニバリズムを含む内容なのもあってより一層、物騒な事になっています。
    お爺さんとお婆さんの性格が改変されていて、この本は人間の嫌な面を知らしめる作品なのか?!と震えましたが、1番震えたのは狸の憎悪に対してです。
    お婆さん、何度も騙されるなよ、DHAが足りないんじゃないの?!と冷や冷やしましたが、待っているのは最悪な結末でした。

    教訓「狸だって復讐します」

    そんな、誰でもやるよね?みたいなライトな感じで書かれても…。
    これは『猿蟹戦争』と少し通ずるものがありますね。
    だから復讐の連鎖が何処までも…
    駄目だ、もうマザーテレサかモハメド・アリになるしか解決法がない!

    『魔法の豆の木』
    駄目だ、これは本当に駄目!
    罪のないお子様にそんな事したら駄目だぁー!!
    ジャックと豆の木です。
    天国に行ってしまったお母さんと会う為に、怪しい豆を植えて天まで伸びた木に登ってしまう男の子。
    父親も正座させて小一時間ほど説教したいのですがまだ可愛いもんです。
    お母さんは、元の姿で待っているのか…?!

    教訓「子供を棄てた母親は鬼になるのです」

    もう何も言えない。
    また小田和正さんが流れてくる。
    けれど今回は嬉しくて♪とはなりません。ただただ言葉に出来ない。
    もう木ごと全部燃やしたろかい。

    このように、中々に衝撃な話が続きます。
    恐らく殆どは皆さんがご存知のお話がベースですが、一応巻末に元になった本のタイトルが全て表記されてあります。
    ちょこちょこ知らないのもありましたね。
    おびのりさんのレビューにも書かれてある通り、10数ページに満たない作品もありますのでさくっと読めてしまいます。
    よくこんなに思い付くなあと感心しましたが、一寸法師のアレだけ一寸のままの話は最後がもう滅茶苦茶で唯一笑った作品でした。
    小さくたって、良いじゃないか!!傷つくよ!!
    (最近下の話が多いなあ…)

    • yukimisakeさん
      シンさまの忖度、怖っっ!!笑
      そして必要だったのでしょうか?!笑
      シンさまの忖度、怖っっ!!笑
      そして必要だったのでしょうか?!笑
      2024/06/14
    • yukimisakeさん
      1Qさん、呼んじゃいました!
      やはりムキムキになる為には大人の教養が必要かとᕙ(`・ω・´)ᕗ
      1Qさん、呼んじゃいました!
      やはりムキムキになる為には大人の教養が必要かとᕙ(`・ω・´)ᕗ
      2024/06/14
    • yukimisakeさん
      1Qさんを呼んだみたいになってる笑
      1Qさんを呼んだみたいになってる笑
      2024/06/14
  • 74冊目『大人のための残酷童話』(倉橋由美子 著、1998年8月、新潮社)
    「人魚姫」や「白雪姫」「浦島太郎」「竹取物語」といった有名な童話や昔話を、倉橋由美子流に味付け。
    原作本来の毒気やエロティシズムを増幅し、それらを前面に押し出すことでブラックユーモアな世界観を作り出している。
    全26作品が収録されているが、1作品はだいたい10頁程度。明瞭な物語が大半で、文章も非常に読みやすい。
    文庫本でありながらカバー裏まで装丁が凝っており、なかなか洒落ている。

    「でも肝腎のところが一寸法師のままですもの」

  • 人間生きてりゃ打算やごまかし、忖度や妬みといわゆる醜い感情はある。童話の中でも現代でも、変化が無いのが感情か。
    まあ、色々思うところはあるが、教訓は今一理解できないものもおおい。
    解説のほうが面白い。

  • 比較的有名な童話や神話、おとぎ話を、ブラック・ユーモアに満ちた物語へと変貌させたパロディ作品集です。

    子どもたちが親しんでいるグリムやイソップの童話、あるいは日本の民話が、もともとふくまれていたはずの「毒」を薄めて「児童文学」に仕立て上げられたものだということはよく知られていますが、本書はそうした「毒」を童話に再賦活することをもくろんだ作品ということもできるように思います。

    ただしそうしたもくろみ自体が、現代の文学が陥っている状況に対する批評性を帯びてしまうことも、指摘することが可能かもしれません。著者は「あとがき」で、「近頃の小説は面白くない」というチェスタトンの意見を紹介し、その一方でいわゆる「児童文学」は「現代風のつまらない小説の児童版」にすぎないとこき下ろします。そうした文学シーンに対する批判として本書に収められている作品がつくられたのであり、その意味で本書は、著者の批判する現代の小説とは異なる意味であるにせよ、著者自身の手でていねいに構築された作品として鑑賞されるべきものだと考えます。

    なおわたくし自身は、こうしたねらいに沿って作品を生み出す著者の手腕は、優れたものだと感じていることも、付言しておきます。

  • 毒が凄い。今のグリム童話や日本昔話も元々の毒がマイルドになっていますが、原作より悪意と婬靡さがありました。
    倉橋由美子さんはこうでなくちゃ!みたいなのがあるので楽しく読みました。各話終わりの教訓一文も好き。「愚かな人間が幸福になることはありません」。
    原作には日本昔話やグリム童話、アンデルセン童話などの童話も、ギリシャ神話も。
    でもこれは童話では無くあれでは…と思ってたら、谷崎潤一郎「春琴抄」やカフカ「変身」、中島敦「名人伝」もありました。この辺りは既読だったのでわかりましたが、森鷗外「父と妹」や今昔物語集まで。幅広いです。
    「子供たちが豚殺しを真似した話」、存在を知ってからグリム童話で一番ウッ…となるお話です。どうやってもマイルドにならない。何故グリム童話になっているのか謎です。

  • 毒気を抜かれたというか、当てられたというか。すごい。
    山本文緒さんの短編が近いのかな。同じ毒でもこちらは現代、したがって整合性があるような。

    倉橋さんのは昔話からもじったストレートパンチ。つじつまもあったものではないのにいやに現実味をおび、しかもエロチック。

    子供のころに知ったおとぎ話はこんな風にインパクトがあったよな~との思い。

    例えば、「養老の滝」(居酒屋さんじゃありませんよ)親孝行の息子が働けど食べさせるのに精一杯で、老親に満足するほど好きなお酒を飲ませくつろがせてあげられない。(なんで貧乏なのに酒のみたいなどほざくのかこの親、とも思うけど)ある日息子は香り高いお酒の湧き水を見つけ、思う存分孝行できましたとさ、孝行息子に神様のご褒美、というのがオリジナル。

    ところが倉橋さんは、その後親子共々、その泉でおぼれるように酒に浸り廃人になってしまったのだとか、あげくの果てはうわさを聞いた人々が駆けつけ、争って群がり酔死多々、悪臭を放つ泉になり酷いことになったしまったと終わる。

    「教訓 ただ酒は人を堕落させる」と結ぶ。

    大人になった私はこのパターン、いろいろ応用きくよと思うのであった。

    こんなお話が26編。おもしろうござった。

  • 想像していたのとは違いました。
    始めの方の話は、全部シモの話に持っていくのでそういう意味の大人?と思いました。
    カチカチ山だけ面白かったです。
    あとがきと解説の方が読めました。

  •  エロ展開する話がちょこちょこあるのだが、性を表現する語彙が豊富で感心する。もちろんエロ話以外における語彙や表現も豊富で勉強になる。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉橋由美子の作品

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