大人のための残酷童話 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101113166

感想・レビュー・書評

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  • 知ってる話、知らない話。
    読んでみたら、知らない話だった。

  • 再読。

    単行本にあった旧仮名遣ひと「教訓」がなくなったのが残念。
    うろ覚えだが
    「人は下半身には恋をしないものです」
    「真の愛とは醜いものを愛すること、つまり不可能」
    「愚か者が幸福になることはありません」
    「坊やに恋をする資格はないのです」
    「自分のルーツを調べるものではありません」
    「厄介者をどうにかするのは家族の責任」
    「神様とはつまりお化けなのです」
    「人は自分を愛してくれる人を愛するとは限りません」
    …読みたかった。

    単行本のあとがきに「救いのない話」とあったような気もするが、愚かな者は酷い目に遭い、凡庸な者にも「お前は中途半端に賢く、妙に物分かりがよさそうで、責任を取らず、決断せず、判断はいつも少しずつ狂う。そういうお前の愚行の積み重ねが今日の結果を生んだのだ」と容赦がない。

    指輪の話で王様の「大胆な説だが根拠がない」が少しツボった。

  • 童話が持つ残酷さ、不条理さを前面に押し出したリライト。
    人間の醜さ、愚かさがつきつけられる。
    ただ、不思議なことにそれがどこか清々しい。
    露悪趣味に溺れているような感じはないからか。

    性愛の問題を扱うことが多いのだが、どこか筆致が冷めている。
    が、話に精彩が出てくるのだ。
    不思議な感覚だった。

    童話のリライトというと、太宰治の「お伽草子」。
    あるいは最近(?)では三浦しおんの「むかしのはなし」。
    特に太宰の「カチカチ山」と倉橋版のそれを読み比べてみると、作家の個性が歴然として面白い。

  • 74冊目『大人のための残酷童話』(倉橋由美子 著、1998年8月、新潮社)
    「人魚姫」や「白雪姫」「浦島太郎」「竹取物語」といった有名な童話や昔話を、倉橋由美子流に味付け。
    原作本来の毒気やエロティシズムを増幅し、それらを前面に押し出すことでブラックユーモアな世界観を作り出している。
    全26作品が収録されているが、1作品はだいたい10頁程度。明瞭な物語が大半で、文章も非常に読みやすい。
    文庫本でありながらカバー裏まで装丁が凝っており、なかなか洒落ている。

    「でも肝腎のところが一寸法師のままですもの」

  • 毒が凄い。今のグリム童話や日本昔話も元々の毒がマイルドになっていますが、原作より悪意と婬靡さがありました。
    倉橋由美子さんはこうでなくちゃ!みたいなのがあるので楽しく読みました。各話終わりの教訓一文も好き。「愚かな人間が幸福になることはありません」。
    原作には日本昔話やグリム童話、アンデルセン童話などの童話も、ギリシャ神話も。
    でもこれは童話では無くあれでは…と思ってたら、谷崎潤一郎「春琴抄」やカフカ「変身」、中島敦「名人伝」もありました。この辺りは既読だったのでわかりましたが、森鷗外「父と妹」や今昔物語集まで。幅広いです。
    「子供たちが豚殺しを真似した話」、存在を知ってからグリム童話で一番ウッ…となるお話です。どうやってもマイルドにならない。何故グリム童話になっているのか謎です。

  • 短編集だがどれも皮肉と毒がたっぷりで味わい深い。「鬼女の島」、「異説かちかち山」がお気に入り。

  • 毒気を抜かれたというか、当てられたというか。すごい。
    山本文緒さんの短編が近いのかな。同じ毒でもこちらは現代、したがって整合性があるような。

    倉橋さんのは昔話からもじったストレートパンチ。つじつまもあったものではないのにいやに現実味をおび、しかもエロチック。

    子供のころに知ったおとぎ話はこんな風にインパクトがあったよな~との思い。

    例えば、「養老の滝」(居酒屋さんじゃありませんよ)親孝行の息子が働けど食べさせるのに精一杯で、老親に満足するほど好きなお酒を飲ませくつろがせてあげられない。(なんで貧乏なのに酒のみたいなどほざくのかこの親、とも思うけど)ある日息子は香り高いお酒の湧き水を見つけ、思う存分孝行できましたとさ、孝行息子に神様のご褒美、というのがオリジナル。

    ところが倉橋さんは、その後親子共々、その泉でおぼれるように酒に浸り廃人になってしまったのだとか、あげくの果てはうわさを聞いた人々が駆けつけ、争って群がり酔死多々、悪臭を放つ泉になり酷いことになったしまったと終わる。

    「教訓 ただ酒は人を堕落させる」と結ぶ。

    大人になった私はこのパターン、いろいろ応用きくよと思うのであった。

    こんなお話が26編。おもしろうござった。

  • 映像だと受け付けないような描写がいくつかありました。怖い!!!

  • 大人のための残酷童話

    倉橋由美子著
    新潮社
    1984年4月20日発行

    当時、大ベストセラーになった本だそうです。

    全26編、倉橋由美子が書いた短い童話が入っていますが、
    ほとんどが、有名な童話や昔話をパロディにしているような作品。
    例えば、「一寸法師の恋」という話は、「一寸法師」を元にした大人のための童話。あらすじは、こんな感じ。

    「一寸法師の恋」
    子供のいないおじいさんが、指にも足りぬ大きさでいいから子供がほしいと神様に願うと、おばあさんが一寸法師を生んだが、大きくならなかった。2人は一寸法師を追い出した。一寸法師も喜んでお椀で川を下り、殿様の邸宅に行って家来にしてくれと頼む。殿様は姫の慰めものにと了承。姫は美人だったが男嫌いで結婚をしていない。
    一寸法師は姫に恋をし、一緒に眠るようになったが、体に入り込んで小さな体で姫の体のあちこちを刺激、姫は快感で喜んだ。
    ある日、出かけると姫は鬼に襲われた。一寸法師は姫の下半身に入り込んで隠れた。やがてそこに赤い肉が入り込んできたので針で刺す。鬼は、とげがあると逃げた。
    鬼の残していった打出の小槌で一寸法師は大きな体にしてもらったので、殿が2人の結婚を許した。しかし、2人はうまくいかない。姫がいうには、体は大きくなったが肝腎なところは一寸法師のままだからと言う。
    そこで2人は打出の小槌を振り合い、お互いを小さくしていった。虫より、埃より小さくなり、どこへ行ったのか分からなくなった。
    教訓:「スモール」は「ビューティフル」ならず

    最後に、出版社からの要望で、教訓をつけたそうです。
    あとがきで、筆者は、
    「これが童話であつて小説でないのは、描写を通じて情に訴へるといふ要素をすつかり棄てて、論理によつて想像力を作動させることを狙つてゐることとも関係があります」と語っています。

    倉橋作品、これまで読んだ記憶があまりありません。
    「聖少女」って読んだかな・・・・
    同世代の作家は、石原慎太郎、開高健、大江健三郎・・・あまり読んでいないなあ。

  • 人間生きてりゃ打算やごまかし、忖度や妬みといわゆる醜い感情はある。童話の中でも現代でも、変化が無いのが感情か。
    まあ、色々思うところはあるが、教訓は今一理解できないものもおおい。
    解説のほうが面白い。

  • 元々童話とかおとぎ話が好きだったので、
    題名に惹かれて手に取りました。

    26編ものお話が、ブラックジョークさながらの皮肉を加えて、ぎゅぎゅっと詰め込まれていました。
    子どもの頃に読んでもらったおとぎ話が沢山入っている本を思い出しました。

    20年以上前に発行された作品なのに、今読んでも面白いのはすごいなぁと、純粋に驚きました!

    島田雅彦さんが書いてらっしゃる、あとがきの一部に「そして、いつの間にか、世界と敵対していた自我は、現実の残酷と退屈に加担しているのである。」とあり、全編を読んだ後のこの一言に、凄くはっとさせられました。

  • 想像していたのとは違いました。
    始めの方の話は、全部シモの話に持っていくのでそういう意味の大人?と思いました。
    カチカチ山だけ面白かったです。
    あとがきと解説の方が読めました。

  • 挿絵が素晴らしい。
    挿絵バージョンを古本でゲットしてください。

  •  エロ展開する話がちょこちょこあるのだが、性を表現する語彙が豊富で感心する。もちろんエロ話以外における語彙や表現も豊富で勉強になる。

  • 2019.4.17-212

  • 2018年12月30日読了

  • 往来堂書店『昭和の作家再発見 女流編』の中から買った一冊。
    ギリシア神話、白雪姫、人魚姫から、浦島太郎、一寸法師まで古今東西の名作童話を
    "換骨奪胎したり煮詰めたりして作った"という一冊は、ときにエロく、ときにグロく、
    名作童話をこんな目に合わせていいのか、と思ってしまうほど見事に書き換えている。
    かなり強い毒性があって、だからこそ中毒性も高い。ハマる人はかなりハマるハズ。
    ワタシとしては、酒席のシモネタという使い方をしてみたい。

  • 楽しい読書でした。
    すべては倉橋由美子のあとがきと島田雅彦の解説にあります。

  • 各章の最後についている教訓が意味深げでおもしろかった。
    なんというか、むなしさや切なさを感じさせてくれる。

  • 有名な童話を元にした大人向けにパロディ。「人魚の涙」「白雪姫」「血で染めたドレス」「かぐや姫」がお気に入り。特に「血で染めたドレス」は、元ネタのナイチンゲールを唖の少女とすることで、より残酷に、恋心の虚しさが伝わるようになっている。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉橋由美子の作品

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